なぜ映画にはオレンジとブルーが多用されているのか?
1990年頃から映画業界のトレンドとなっているのがカラースキームにオレンジとブルーを多用することです。時には映画評論家から批判されることもある色使いのトレンドですが、一体いつからどんな理由でオレンジとブルーを多用するようになったのか、その詳細をPriceonomicsが公開しています。
Why Every Movie Looks Sort of Orange and Blue
http://priceonomics.com/why-every-movie-looks-sort-of-orange-and-blue/
2015年3月に日本で公開された「イントゥ・ザ・ウッズ」の1シーン。薄暗い場面ながらも、全体に青みがかかっているのがわかります。
2013年に公開された「ウルフ・オブ・ウォールストリート」でもブルーの配色が目立ちます。
2015年6月20日公開予定の「マッドマックス」は少し黄色がかっているものの、ブルーとオレンジが使われていることは否定できません。
Priceonomicsが最もオレンジとブルーを多用する映画としてあげたのが「トランスフォーマー」シリーズ。トランスフォーマーはシリーズを通してブルーとオレンジを多用しているとのこと。
映画のポスターを見ると、ブルーとオレンジがあえて使われているのは明白。爆発物や光はオレンジで、空や影をブルーで表現するというのが昨今のトレンドのようです。
映画データベースのThe Numbersで公開されている映画の予告編を分析したところ、オレンジとブルーの配色が多く使われているのは明白。特にオレンジに関しては他の色を圧倒しているのがわかります。
しかしながら、1939年に公開された「オズの魔法使」の1シーンを見ると、昨今の映画とは色使いが全く異なります。どうして昔の映画と昨今の映画で色使いの差がでるのか非常に気になるところです。
実は、映画における色使いの違いが生まれた理由には、撮影方法が深く関わっています。1990年頃まで映画の撮影方法として主流だったのは、銀塩式フィルムを用いるフィルム撮影ですが、デジタルビデオを撮影に用いて磁気テープやハードディスクに保存するデジタル撮影が1990年代に登場。2002年に公開された「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」では初めて全編がデジタル撮影され、2014年にパラマウントがフィルムでの映画配給を停止して完全デジタル配給へ移行するなど、2015年現在ではほとんどの映画がデジタル撮影で撮られています。
フィルムからデジタル撮影へ移行したことで影響を受けたのが、色味やトーンを整えて作品の世界観を作り上げていくカラー・グレーディングという作業です。デジタルへの移行により、ソフトウェアを使ってさまざまなシーンに「単色のカラースキーム」を適用させることが簡単にできるようになったとのこと。
単色のカラースキームの中でも多く使われることになったのがオレンジ。1本の映画で最も多く登場するのは俳優や女優といった人間、ということは肌の色が最も多く映画に登場する色になります。肌は淡い肌色のペールピーチや焦げ茶といった色が多く、こういった色はオレンジを構成する色に含まれているため、単色のカラースキームでオレンジが選ばれるようになったそうです。
色相環で見るとオレンジとブルーは正反対の位置に存在し、2つは「補色」の関係にあります。補色による配色はコントラストが最も強く出る組み合わせなので、オレンジとブルーを1つのシーンで使うとパキッとしたコントラストを表現できるということです。つまり、俳優や女優の肌の色をオレンジ系でカラーグレーディングし、その周囲にある空や光をブルー系にすれば、目を引く鮮やかな配色を実現できるというわけです。
ただしPriceonomicsは「デジタル撮影がオレンジとブルーの使用を促進させたというのは1つの理論に過ぎないが、オレンジとブルーが多用されているのは事実である」とも述べていて、デジタルへの移行だけがオレンジとブルーの多用を広めた唯一の理由というわけではなさそうです。
オレンジとブルーの使用は1990年以降に生まれたカラーグレーディングのトレンドという感じなので、今後に新しい色使いが流行する可能性もあります。映画を見るときにストーリーやキャストだけではなく、色使いにも目を向けると案外楽しそうです。
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