アニメ「グリザイアの果実/迷宮/楽園」がいかにしてガチな内容に仕上がることになったのかが分かるスタッフトークイベントに潜入してきた

2014年10月からスタートしたアニメ「グリザイアの果実」の続編となる「グリザイアの迷宮」が60分スペシャルアニメとして放映され、さらにその続編シリーズに当たるシリーズ最終作「グリザイアの楽園」が2015年4月19日より放送中です。回を追うごとに徐々にさまざまな秘密が解き明かされていくグリザイアシリーズですが、そんなアニメ・グリザイアを支えるフロントウイングの山川竜一郎代表と、NBCユニバーサルの小倉充俊プロデューサーがマチ★アソビ vol.14に登場してアニメに関する裏話を盛りだくさん話してくれました。

「グリザイア」シリーズ - マチ★アソビ
http://www.machiasobi.com/events/grisaia.html

マチ★アソビ開始前の5月2日(土)25時30分から、一晩丸々使ってアニメ「グリザイアの果実」を一挙上映する「夜のグリザイア1」というイベントが行われ、翌日の5月3日(日)には21時から24時までの3時間で、続編の「グリザイアの迷宮」と現在放送中の「グリザイアの楽園」の1話から最新話となる3話までを一挙に上映してしまい、さらには製作に携わっているスタッフのトークを聞いてみようというイベント「夜のグリザイア2」が開催されたのでした。

イベント会場はufotable CINEMAで、会場は立ち見客まで出る満席状態。

そんなわけでさっそくゲストの3人が登場。徳島までやってきてグリザイアの裏話をしてくれるのは、左から司会進行を務めるNBCユニバーサルの永谷さん、アニメ「グリザイア」シリーズのプロデューサーを務めるNBCユニバーサルの小倉充俊さん、フロントウイング代表の山川竜一郎さん、そしてサプライズゲストとして入巣蒔菜役のたみやすともえさんです。

今回でマチ★アソビには既に8回も来ているというフロントウイングの山川代表。蒔菜役のたみやすさんは今回で3回目の参戦とのことで、前回は嵐、今回は雨と天気に恵まれないことを嘆きます。そして小倉プロデューサーはマチ★アソビ参加どころか徳島県に来たのも初めてとのことで、今回の機会を心待ちにしていたようです。

2日に行われた一夜丸ごとグリザイアの果実を上映する「夜のグリザイア1」に参加した人がどれくらいいるのか尋ねたところ、なんと会場の半数以上が参加していた様子。みんないつ寝ているのか心配になるレベル。なお、2日に上映されたグリザイアの果実は湯気ナシのものであったそうです。

そんなグリザイアシリーズは、画面のアスペクト比が1：2.35となるシネマスコープで全編を作成したという初のTVアニメ。上映会場となるufotable CINEMAはシネマスコープ対応劇場なので、「グリザイアの本領発揮！」と、山川代表と小倉プロデューサーは大喜び。なぜこんなにシネマスコープに食いつくのかは、このあとのお話で少しずつ明らかになっていきます。

シネマスコープは、通常は普通の原画紙に黒色のテープなんかを貼りつけることでシネマスコープサイズの原画として作成するそうで、これだとどうしても絵のサイズが小さくなって画質が落ちてしまいます。しかし、グリザイアシリーズでアニメ製作を担当したエイトビットがシネマスコープ用の原画紙や絵コンテ紙を作成してくれたそうで、画質を落とさずに横長な映像を作ることが可能になったそうです。ただし、この影響で現場では通常よりも横に長い紙を取り扱う必要が出て、直すのは大変で、封筒に入らないので持ち運びには不便と、現場からはたくさん文句を言われる羽目になった、とのこと。「現場は原画の紙のサイズを覚えているのでシネマスコープだと作業が長くなる」と、グリザイアシリーズのキャラクター原案・キャラクターデザイン・総作画監督を担当している渡辺明夫さんがつぶやいていた、と山川代表。

シネマスコープは通常TVシリーズではほとんど使われない手法で、アニメのオープニングやエンディングで稀に使用されていたり、アクションシーンで使用されたりと、使われるとしても一部分だけといういうのがほとんどです。しかし、グリザイアシリーズの監督を務める天衝さんは、「全編やるんだ！」とシネマスコープ案を譲らなかったそうで、なんだかんだしている内にエイトビットから専用の紙もあがってしまい、「やるんだ……」と納得する流れになった模様。

そんなわけで、ここからは質問コーナーがスタート。

最初の質問は「アニメ化の経緯を教えてください」というもの。

アニメ化が決まってからは、果実から楽園まで続ける想定で考えられていたそうで、スタッフ内では「グリザイアは最後までやらないと意味がないよ」という共通のワードまで出ていたそうです。迷宮や楽園を見たあとにもう一度果実を見返すと「これがこうなってたのか～！」という部分が多々あるそうで、果実の段階で後々まで想定していたことがよく分かるような仕上がりになっているそう。また、業界内でもそういった声をよくかけてもらう、と小倉プロデューサー。

ゲームが出た当時からフロントウイングの山川代表はTwitter上で「アニメ化したいー」とつぶやいていたそうで、たみやすさんは「アニメ化企画が進行中なのかな？」と前々から思っていたそう。しかし、この頃は特にアニメ化に関する話が進んでいたわけではないそうで、「このせいでアニメ化の企画を持って行きにくくなってしまった」と山川代表。

アニメの製作は「結婚みたいに相性がある」とNBCユニバーサルの小倉プロデューサーは断言しており、ビジネスが先に立つような会社とではグリザイアのアニメを現在のようなものに仕上げることは不可能だったのでは、と常々感じているそうです。今回、グリザイアのアニメ化に際して「怒られたら謝ればいいんだよ」というスタンスで臨んでいるそうで、基本的にポジティブに挑んでいったことが効を奏した側面も多い、と明かしてくれました。

また、たみやすさんたち女性声優陣の演技は、「さすが役をわかってるよね」とスタッフ一同が関心するレベルと山川代表は女性声優陣を褒めちぎっています。そんな中、ゲーム時には声のなかった風見雄二に声をあてることになったのが櫻井孝宏さんなのですが、「グリザイアの果実」のEpisode：3にて飛び出した「睡眠の重要性」という台詞を普段とは全く異なるテンションの演技で華麗にこなし、たみやすさんたち女性声優陣を驚かせたそうです。

原作で声のないキャラクターに声をつけると、通常は何かしらの批判的な反応などがあったりするものですが、櫻井さん演じる雄二には何の文句も立っておらず、雄二の声を決める際も多くのスタッフが櫻井さんを推し、満場一致で決定したというエピソードも飛び出します。そういうわけで、声優陣や音響監督などアフレコに関わる人たちは、基本的に櫻井さんのスケジュールに合うかどうかの確認から始まったそうです。

続いての質問は「入巣蒔菜役を演じる時に心がけていることは？」

蒔菜は表情や動きが多く「ワッワッワッ」のような台詞をよくつぶやくキャラクターなので、ゲーム時代よりも喜怒哀楽を激しめに表現したことを明かすたみやすさん。時々真面目なことやさみしげな台詞も言うので、そういったギャップを楽しんでもらえれば、と蒔菜の良さを詳しく解説してくれました。

また、たみやすさんは台詞を覚えるさいのこだわりについても明かしています。台本内の台詞を変更する際は、元の文章を線で消して横に修正されたものを書くそうで、声優さんたちは修正済の台本をもらい台詞の練習をするそうです。たみやすさんはこの線で修正された文字が目に入ってくるとミスリードしてしまうので、それらを修正テープで消して、上から正しい台詞を書き直し、さらにページをまたぐような長い台詞は前のページに台詞を全て書き込んでしまい、ページをめくる必要がないように台本を改良してから読み込みをする、とのこと。

グリザイアでは「よくこれアニメになったな！」という台詞が何度も登場したりしますが、そういった台詞は協力的で一緒に戦ってくれる製作委員会の頑張りにより、無事アニメでも使えるようになっているそうです。もしも製作委員会の誰かが頑張っていなかったりすると、もっと攻めていない牙の抜けたアニメになっていたかもしれないと小倉プロデューサーは考えることがあるようで、ビジネス回りに理解のあるスタッフが多くいてくれ、みんなが頑張ってくれて本当に助かっている、と裏方のスタッフに対するねぎらいの言葉を漏らしていました。

「『迷宮』『楽園』の注目してほしいポイントは？」

たみやすさんの注目して欲しいポイントは、蒔菜が果実の際に雄二から学んだスキルが活躍するシーン。また、迷宮で登場する雄二の母親を演じているのもたみやすさんだそうで、これにも要チェックとのこと。

山川代表は、グリザイアを見た人の反応はとても良いので、視聴した人はどんどん周りの人に布教して欲しい、と自身の願望を明かします。作中、日下部麻子が雄二に対して「一人五衛(死ぬまでに5人を救え)」を義務づけるのですが、それになぞらえて「一人五伝」でひとり5人にグリザイアを伝えようキャンペーンをしたい、とさらに熱弁をふるう山川代表。

小倉プロデューサーは自分の担当しているアニメで久々に泣いたことを明かしており、さらに音響監督の明田川さんに泣いているところを見られ「泣いてんじゃない？」と言われたことを暴露。他のスタッフもストーリーに泣かされながら作業をしているそうで、唯一泣いてないのではと噂される監督の天衝さんも、製作中には「ヤバイヤバイ」と常々涙を我慢しているそうです。

また、スタジオのロビーではアフレコの音声が流れるそうですが、特典映像の音声を録音する際は内容がアレ過ぎて徐々に音量が小さくなっていく、というグリザイアならではのエピソードも飛び出しています。

そして最後はイベントに集まってくれたファンの中から質問を募集。

迷宮では幼少期の雄二が登場するのですが、その雄二の声を諏訪彩花さんが担当することになった経緯を聞かれ、全ては天衝監督による人選であることも判明。その他の原作準拠なキャスティングやBGMなども、全て監督による指示であったそうです。また、諏訪さんに関するエピソードとしては、同じ話の中で諏訪さんの雄二の声から櫻井さんの雄二の声に切り替わるシーンがあるのですが、これが全く違和感がないできに仕上がっており、このことで諏訪さんはたくさんの人からほめられたというエピソードも明かされています。

さらに、「果実から迷宮・楽園までのスパンが非常に短かったのは想定通りなのか？」という質問に対しては、元々このスパンでやることが決まっていたことが小倉プロデューサーの口から明かされます。グリザイアの楽園を楽しんでいた視聴者がそのまま楽しめるスパンと、スタッフのリソース的な部分を考えて、1クール空けての放送になったそうです。

なお、夜のグリザイア1を見た人たちには左のポスター、夜のグリザイア2を見た人たちは右のポスターをゲットできました。