奇抜な見た目を裏切る異次元の乗り心地の自転車サドル「Infinity Seat」試乗レビュー
人間工学にもとづき、どんなお尻にもフィットして科学的に快適であることが証明されているサドルが「Infinity Seat」です。クラウドファンディングサイトのKickstarterで出資を募っていたInfinity Seatですが、キャンペーン終了から約1年という長い期間を経て編集部に実際の製品が届いたので、どんな乗り心地になっているのか試してみることにしました。
Infinity Seat
http://www.infinitybikeseat.com/
実際に届いたInfinity Seatがコレ。まるで骨組みだけのような構造で、通常のタイプとは一線を画したフォルムがじつに個性的なサドルです。
回転台に載せてクルクルさせてみたらこんな感じ。立体的に作られた複雑な形状を持っていることがわかります。
「Infinity Seat」360度外観レビュー - YouTube
上から見てもじつに見慣れない形状。通常のサドルだとクッションパッドが敷き詰められている部分がぽっかりと口を開けています。
シート中央の後部から前方に向けてニョキッと台座のようなものが伸びており、この部分に仙骨を含めたお尻のくぼみ部分が乗るように設計されています。
台座の根元には、仙骨が直接シートに当たらないように設けられたくぼみがありました。
サドルを裏返してみました。この角度から見ると、骨組みだけでできている様子が良く伝わってきます。
一般的なロードバイク用のサドルと比較してみました。ロードバイク用としてはごく一般的な「フィジーク Pave CX Sport」と比べると、Infinity Seatの方が左右に広がっていることがよくわかります。
サドル上面がフラットなPave CX Sportに比べ、凹凸が激しいInfinity Seatの座面。後端が跳ね上がるような形状が、独特の包まれ感のある座り心地を生みだしているようです。
一般的なサドルと比較すると、まったく異なるコンセプトで設計されていることがわかります。
Infinity Seatは左右に広がるウィング部がじつに印象的。
重量は222グラムと、十分軽量と言えるレベルに仕上がっています。
一方のPave CX Sportは300グラムと、その差は78グラム。たった数グラム軽くするために惜しみなくお金をつぎ込むこともあるロードバイクの世界では、かなり大きな数値と言えます。
さっそくロードバイクに装着して試乗してみます。
装着していたPave CX Sportを外し……
Infinity Seatを取り付け完了。シート中央部分がゴッソリ口を開けているという、じつに不思議な光景です。
シートの水平を合わせるにも、どこを基準にすればよいのか一思案。とりあえず、前の膨らんでいる部分と、後端のへこみ部分に定規を当て、水平を確認することにしました。
水平を合わせたInfinity Seatがこんな感じ。見た目からするともう少し前下がりの方がよさそうにも思えますが、実際に乗ってみるとこのぐらいが一番収まりのよい角度でした。
ちなみにコレが一般的な光景。両者の違いは一目瞭然です。
見るからに軽量感あふれるルックス。
下から見上げると空が見えるサドルなど、そうお目にかかれるものではありません。
「さぁ、乗るか」と思ってサドルに目線をやると、こみ上げてくる不安感。「ここに体重を預けて大丈夫なんだろうか……」と文字どおり腰が引けましたが、結果的に心配は無用でした。
サドルに腰を下ろすと、今までに感じたことのない座り心地に「わっ!」と思わず声をあげてしまいました。まるでオーダーメイドしたソファーに座るように、というと少し大げさですが、人間工学的に丸みを帯びたサドルの表面がお尻の後ろから股の付け根の内側の会陰部にかけてソフトにフィットし、体重を見事に分散してくれる快適さはこれまで感じたことがないレベル。もちろん自分の体の重さは確実にお尻に感じるわけですが、一般的なサドルとの違いをイメージで説明すると、「点」で体重を支えていた従来型のサドルに対し、Infinity Seatは「線」または「面」で体重を分散してサポートするといった感じ。科学的な手法で快適さを追求したという狙いは、その座り心地から十分に感じることができました。
まずは平坦路でしばし走行。独特の「すっぽり感」を強く感じますが、ペダリングには全く支障をきたすことなく普段どおりの走行ができました。最初は素材の堅さを感じますが、これは慣れの範囲内で十分対応できるレベル。ライド中の快適性もほぼ問題なく、かなりのレベルに仕上がっている感触を受けました。
ただし、一定の違和感を感じ続けたのも事実で、足の上げ下げの際に太ももとサドルが当たる部分に、一般的なサドルにはない「こすれ感」を感じました。以下の写真で点線で示している部分がその該当部分。通常のサドルでも足と接触する部分は必ず存在していますが、Infinity Seatではその部分が鋭角になっているため、通常では感じなかった摩擦感を余計に感じたようです。
また、坂道を登る際のポジションにも不自由を感じることも。
シートに腰掛けたまま上り坂を登る際には、シートの後方に腰をずらしてより強い力を出す「後ろ乗り」という座り方が最も一般的といわれるのですが、Infinity Seatではこれが非常にやりにくい。無理に腰を後ろに引くと体全体が持ち上がってしまい、足が伸びきった状態になってペダリングに支障をきたしてしまいます。サドルの角度のセッティングである程度は回避できるかもしれませんが、これは構造的に避けられない課題の一つと言えそうです。
さらに、平地でスピードを出す時や、トライアスロン選手のような前傾姿勢でペダリングする際にはサドル前方に腰をずらす「前乗り」のポジションを取るのですが、サドル前方が盛り上がっているInfinity Seatではこのポジションも不向きな様子。会陰部に強い痛みを感じ、満足に乗り続けることができませんでした。
軽量さがどれほど活きるのか、立ちこぎで車体を左右に振る「ダンシング」で坂を登ってみましたが、このクラスの自転車ではそもそもの車重があるためにさほど違いを感じることはできませんでした。これはぜひ軽量クラスと呼ばれる車体で試してみたいところです。
Infinity Seatを装着して50kmほど走行した印象では、若干の気になる点はあるものの、特に平地部分を走る限りは従来には見られなかった快適性と漕ぎやすさを両立しているサドルと言えそう。上述のように若干のこすれ感などの問題は感じる部分もありますが、画期的なサドルと評するに十分な可能性を秘めていると感じました。実はKickstarterでのキャンペーンが終了後、実際の製品化までにはさまざまな問題が生じており、仕様変更や予定されていたモデルがいきなり廃止されてしまうなど、クラウドファンディング特有の問題があったInfinity Seatですが、これに続く第2弾の登場があるのか思わず期待してしまいそうな仕上がりとなっていました。
◆おまけ
「人間工学的な快適さを求めたのであれば、街乗りにも使えるのでは」ということで、編集部の足となっている自転車にInfinity Seatを取り付けてみました。サドル部分だけがやたらレーシーな雰囲気を放っている妙な車体。
実際に乗ってみると、これが意外に快適。もちろん、クッションが厚い通常のシートに比べると堅さは感じますが、お尻がスポッと収まる座り心地は街乗りにも申し分ないと言えそう。むしろ、前乗り・後ろ乗りの問題が起こらないシティバイクやママチャリの方が普及の可能性があるのではとすら思わされるレベルでした。
いつもは普通の自転車に乗る編集部員に感想を求めたところ、「サドルの形状に無駄がないのか、座りながらでも股がすれることなく軽快に漕ぐことができる」「お尻にしっかりフィットするので安定感はバツグンに良い」という感想が返ってきました。一方で、「クッション性がほとんどないためか、長時間座って漕ぐのは少々きついかも」「サドルの棒が突き抜けてお尻に刺さりそうで怖い」という答えも返ってきていました。
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