「ストラディヴァリ」などの貴重なバイオリンはなぜ美しい音を奏でるのか?
By Takeshi Kuboki
17~18世紀の楽器製作者「アマティ」「ストラディヴァリ」「グァルネリ」らが作ったバイオリンはイタリア・クレモナが生んだ世界3大バイオリンといわれ、現代では数億円もの価値を持っています。このような特別なバイオリンの音響効果を確かめるため、マサチューセッツ工科大学(MIT)の音響技師・流体力学者チームが、バイオリン黄金時代にクレモナで生まれた何百本ものバイオリンを測定した結果、名バイオリン特有の形状や材質の厚みがあることがわかりました。
Power efficiency in the violin | MIT News
https://newsoffice.mit.edu/2015/violin-acoustic-power-0210
研究チームはストラディヴァリなどの製作者が生み出したデザインの音響効果を調査するため、博物館や収集家から17世紀~18世紀に製作されたクレモナのバイオリンや図面などの資料を集めました。それぞれの楽器でX線・CTスキャン検査、音響共鳴測定、各バイオリンの寸法比較を実施した結果、バイオリンの形状、および「f字孔」の長さと形が、バイオリンが奏でる音の「鍵」になっていることがわかったとのこと。
f字孔は空気の通り穴である響孔の一種で、長細い形状が多いのには、バイオリンの形状でスペースを取り過ぎないという意味があります。また、このデザインはバイオリンの元となった楽器であるフィドル・リュラー(リラ)・レベックにあるような「丸型の響孔」よりも、効率的に音を生み出せることがわかっています。
By freemanphoto
また、バイオリンの裏板は音響出力に関係しており、バイオリンが音を出している時に本体が反応して、材質が空気振動で微細に膨張すると考えられています。そのため、研究者は厚い裏板の方がバイオリンの音質を高めることに気づいたとのこと。世界3大バイオリンは古い方から順にアマティ・ストラディヴァリ・グァルネリらが製作していますが、これらのバイオリンは後作になるにつれてf字孔が長く伸びていき、裏板が厚くなっているとのこと。
研究に携わったMITのニコラス・マクリス教授は、響孔を正確に再現しようとしても2%ほどの誤差が出てくるという結果から、f字孔の進化は合理的な変化ではあるものの、計算した設計ではなく、偶然の産物だったと考えています。つまり、当時のバイオリン制作者は驚くほどにいい耳を持っていたため、偶然生まれた変化を聞き逃すことがなく、よりよい音が出るf字孔のデザインを選択していくので、前述のような進化を遂げたのではないかということです。
その結果が、現代に「数億円の価値がある」と認められているバイオリンとして残っている、というわけです。
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