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スウェーデンで国民の半数近くがクリスマス・イブにドナルドダックのアニメを見る理由


正月に初詣をして、お盆には実家に帰省するというのは日本人にとって当たり前の文化になっていますが、スウェーデンではクリスマス・イブである12月24日の15時からドナルド・ダックのアニメを見るという文化があります。なぜスウェーデンではクリスマス・イブにドナルド・ダックのアニメを見るのか、その理由は意外なところにありました。

Sweden's bizarre tradition of watching Donald Duck (Kalle Anka) cartoons on Christmas Eve.
http://www.slate.com/articles/arts/culturebox/2009/12/nordic_quack.html

平均視聴率が40~50%で最も低かった時でも36%あり、国民的番組としてスウェーデンでクリスマス・イブに見られているのはディズニーの「From All of Us to All of You」というアニメーション。From All of Us to All of Youが放送される15時になると、料理や仕事、食事でさえも中断してスウェーデン中の人がテレビにくぎ付けになります。

「From All of Us to All of You」は、スウェーデンで「Kalle Anka och hans vänner önskar God Jul(ドナルド・ダックと友人が祝うクリスマス)」という名前で知られていて、Kalle Anka(ドナルド・ダック)と言えばキャラクターではなくこのアニメを指します。スウェーデンの国営放送のチャンネルの1つであるSVT1で1959年に初めて放送が開始されたKalle Ankaは、スウェーデンの伝統的な国民のイベントの1つとして呼べるレベルで認知されていて、北方民族博物館の館長であるLena Kättström Höök氏が「12月24日の15時、スウェーデン人はKalle Ankaを見る以外何もしません。どうしてかと言うと、スウェーデンは文字通り『閉店』状態になるからです」と話すほど。

スウェーデンで爆発的な人気を誇るKalle Ankaの一部は以下のムービーから確認できます。

From All of Us to All of You: The Original Christmas Classic Part 1 - YouTube


なぜKalle Ankaが国民的イベントになるくらいの人気を得たのかは、スウェーデンのテレビの歴史を探るとよくわかります。Kalle Ankaの放送が始まった1959年は、スウェーデン国内でテレビが一般家庭に普及し始めた年。当時のスウェーデンのテレビ放送は国営放送による「TV1(現SVT1)」の1チャンネルしかなく、ディズニーのアニメを見られる唯一の日はTV1がディズニーのアニメを一挙に放送するクリスマス・イブだけでした。

TV1ではクリスマス・イブに多くのディズニーのアニメが放送されますが、その中でもクリスマスを題材にしたKalle Ankaに人気が集まり、毎年放送しているうちに「クリスマス・イブにはKalle Ankaを見る」のが定番になっていったそうです。また、当時は国民の多くが農村部に住んでいたため、テレビしかエンターテインメントがなかったこともKalle Ankaが人気を得た理由の1つです。

By Stefan Perneborg

1970年代には政治的な理由からKalle Ankaの放送を中止する話が出ましたが、中止予定であることが新聞に掲載された途端、テレビ局には苦情の手紙や電話が殺到し、やむなく中止を取りやめるという事態が発生しました。この他にもスウェーデン人のKalle Ankaに対する愛が常識レベルを超えているのを示す逸話があり、その中でもArne Weiseさんの話は外せません。

Weiseさんはスウェーデンの国民的スターで、Kalle Ankaを紹介するアニメ番組のプレゼンターを1972年から2002年まで務めました。Kalle Ankaを紹介するアニメ番組は生放送で行われているのですが、Weiseさんの「クリスマスにプライベートな時間が欲しい」という要望で、1992年は録画放送で対応する予定になっていました。しかしながら、毎年生放送であった番組が録画放送に切り替わることについて「プレゼンターは番組に生放送で出演するべきだ」と新聞に書き立てられて、結局録画放送の話はなくなってしまいます。

By Frankie Fouganthin

Weiseさんは「Kalle Ankaとスウェーデン人の頑固な気質のせいで、私は約30年間クリスマスを家族で過ごすことができませんでした。番組の開始前は憂鬱(ゆううつ)で、終了後はいつも疲れ果てていました。クリスマスに家族で過ごす良きパパにはなれませんでしたね」と後に明かしています。

ドナルド・ダックのアニメがこれほどまでにスウェーデンの国民に愛されるには、放送開始当時に一般家庭に普及し始めたテレビが国民にとって数すくない娯楽の1つだったことや、放送しているチャンネルが1つなので視聴者が集中したことなど、歴史的背景からくる理由があり、文化として根付いた後にその人気が衰えることはなさそう。

クリスマスではありませんが、日本には大みそかにNHK紅白歌合戦を見る風潮があり、毎年同じフォーマットで放送されていても「今年もあと少しだな」と思わず見てしまうもの。スウェーデンのKalle Ankaも日本のNHK紅白歌合戦と同じで、様式美を楽しみ季節を目で感じられる番組というわけです。

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