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メールで感情は伝わらないのに人は「正しく伝えられている」と過信することが実験で証明される

By Choo Yut Shing

いつでもどこでもコストをかけずに送信できるEメール(メール)は非常に便利で、ビジネスにおいても重宝され、今やほとんど電話ではなくメールで済ませるという人もいるほどです。しかし、メールで自分の真意を正確に伝えることは想像よりもはるかに難しいことが明らかになっています。

Egocentrism Over E-Mail: Can We Communicate as Well as We Think?.pdf
(PDFファイル)http://faculty.chicagobooth.edu/nicholas.epley/krugeretal05.pdf

ニューヨーク大学のジャスティン・クルーガー教授らの研究チームは、メールでの情報伝達の難しさを明らかにするために、真剣な内容や皮肉めいた意味合いなど、さまざまな感情が込められた文章をメールで送信して、相手に正しく伝わるかどうかについて実験を行いました。

コーネル大学で心理学を学ぶ学生60人を被験者として、2人ずつペアにした30組に対して、それぞれを別々の部屋に分けて、食事・生活・天気など20項目のテーマから10項目を選んで、半分を真剣にもう半分を皮肉をこめてストーリーを作ってもらいペアの相手に伝達するという実験を行いました。ストーリーの伝達には「メール」で送信する方法とテープレコーダーに吹き込んだ「音声」を聞かせる方法の2種類を採用して、それぞれについて、相手に「真剣さ」「皮肉」というニュアンスが正確に伝わっているかについて事前に予想もさせています。

結果は、以下のグラフの通り、メール、音声ともに約78%は正確に伝わっているはずと被験者は予想していたところ、実際にはメール・音声ともに予想を下回る程度でしか正確には伝えられていないことが判明。特筆すべきことに、音声での伝達成功率は予想をわずかに下回る73.1%であったのに対して、メールでは予想を大きく下回る56%しか正しく伝わっていないという結果が出ました。つまり、正しく感情を伝達する能力(伝達力)についてメール・音声と伝達手段を問わず自信過剰になる傾向があること、さらに、メールでは想像以上に正しく感情を伝えられていないということが明らかになったというわけです。


次にメール・音声に加えて相手の顔を見て話す「対面」での伝達方法を追加して実験が行われました。3通りの伝達方法を試す実験は、イリノイ大学の学生154人を被験者として、2人ずつのペアを組ませるのは先ほどの実験と同様で、さらに、「顔見知りのペア」と「見ず知らずの者同士のペア」という2種類のペアを対象にしました。

実験結果は以下のグラフの示す通り。対面の場合が最も高い伝達成功率であることは研究者チームの予想通りでしたが、意外にも「対面」と「音声のみ」の結果に大差なし。その一方で、やはりメールでの場合は感情を正しく伝達しづらいという結果が出ました。なお、顔見知りペアと見ず知らずの者同士のペアで、実験結果に優位な差が見られないことから、感情を正しく伝達するのに「関係の親密さ」は影響を与えないことも明らかになっています。


真剣さ・皮肉に加えて「ユーモア」が伝わるかどうかについても実験されています。コーネル大学の学生58人を被験者として、ジャック・ハンディ氏のユーモラスな短文「Deep Thoughts」の10作品をメールで受信して読んでもらい、半分の被験者にはメールを読んだ後で同じ作品をサタデー・ナイト・ライブのビデオで見せ、残りの半分の被験者には何も見せない(メールだけ)という条件で実験が行われました。その後、被験者に、見せられたDeep Thoughtsの10作品のおもしろさ(ユーモラスさ)を最高11、最低1で点数をつけてもらったところ、ビデオを補完的に見た人の平均スコアが8.16なのに対してメールだけで作品を見た人の平均スコアは5.64と低い点数になりました。つまり、メールだけではユーモラスさが理解しにくいということです。


さらに、見た作品の中から5作品をメールを使って他の被験者に伝達してもらい、どれくらいの点数をつけてもらえるかについて予想してもらったところ、いずれの場合も予想より低い評価しか得られないという結果になり、やはりメールでユーモアさを伝えるのが難しいことが明らかになっています。


メールで感情がうまく伝えられなかった原因としては、顔の表情や声のアクセント・音量の変化など、対面で話す場合に使える「外部情報」をメールでは表現しにくいためコンテクストに関する情報が抜け落ちていることが考えられています。このため、メールを受け取った人はぽっかりと空白になったコンテクストを自分勝手に埋めてしまい誤解が生じ得るとのこと。

また、メールでは相手の表情などから理解度を読み取ることができないことも原因であると考えられます。なお、メール操作に不慣れであるからという技術的な問題は、被験者の学生がみなメールの送受信になれていることから除外されているとのこと。

今回の研究から、想像以上にメールで感情を正確に伝えることが難しいことが判明しました。さらに、「正確に伝えられているはず」と考えがちな自信過剰状態に陥りやすいことも明らかになっています。感情や真意を読み取りにくいメールという伝達手段では「あうんの呼吸」は期待できず、プライベート・ビジネスなど目的を問わずコミュニケーションをうまく取るためには注意が必要であると言えそうです。

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