ジョギングやサイクリングは遺伝子レベルで筋肉の代謝機能に影響を与える
By Jeff Drongowski
医学系の研究機関としては世界最大で、ノーベル賞の生理学医学部門の選考委員会があるスウェーデンのカロリンスカ研究所が行った実験により、長期間にわたって行うジョギングやサイクリングといった耐久トレーニングが遺伝子レベルで筋肉の新陳代謝機能に影響を与えることが判明しました。
An integrative analysis reveals coordinated reprogramming of the ep... - PubMed - NCBI
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25484259
Long-term endurance training impacts muscle epigenetics - Karolinska Institutet
http://news.cision.com/karolinska-institutet/r/long-term-endurance-training-impacts-muscle-epigenetics,c9693593
Long-term endurance training impacts muscle epigenetics | News | News | Karolinska Institutet
http://ki.se/en/news/long-term-endurance-training-impacts-muscle-epigenetics
適度な運動が健康に恩恵をもたらすことは、以前からの研究で明らかになっていて、人々の健康管理や運動に対する興味が高まり、近年ではAppleやGoogleといったIT企業までもが健康に関するデバイスやアプリをリリースするほどです。しかしながら、運動により体が受ける健康的影響がどのように引き起こされるのか、そのメカニズムについては明らかにされていませんでした。
By Jason Lengstorf
運動が体に与える影響に関するメカニズムを遺伝子レベルで明らかにしたのがカロリンスカ研究所の研究チームです。実施された研究では長期間行う耐久トレーニングが、筋肉の一部である骨格筋のエピジェネティクスの発生レベルを変化させていたことが判明しました。
エピジェネティクスとは、人間を構成する遺伝子情報内でさまざまな環境によって引き起こされる生化学的変化を意味し、簡単に言うと遺伝子が細胞のハードウェアなら、エピジェネティクスは細胞のソフトウェアといったところ。そのエピジェネティクスの1つにDNAメチル化というものがあります。DNAメチル化とは、オリジナルのDNA塩基配列に影響することなくメチル基がDNA分子に付加されたり、取り除かれたりする化学反応です。
By Matthew Forsythe
研究チームが行った実験では、23人の健康な男女に片足だけで行うサイクリングを1週間に4回、3カ月間こなしてもらい、サイクリング前後の「骨格筋の新陳代謝」「ゲノム内の4万8000部位におけるDNAメチル化の発生状態」「2万個以上の遺伝子の活動状態」を測定。実験の結果、「DNAメチル化」と「4000個の遺伝子の活動変化」に強い関連性が確認されました。
研究チームによると、DNAメチル化の発生レベルが上昇していたゲノム内の領域に関する遺伝子が、骨格筋の代謝機能に関係していることが判明したとのことです。
つまり、運動によって骨格筋の代謝機能が上昇する反応がDNAレベルで発生していることがわかったというわけ。実験を率いたJohan Sundberg博士は「実験結果からジョギングやサイクリングなどの耐久トレーニングが、筋肉の機能や健康を改善するのに関連する遺伝子に大きな影響を与えていることが分かりました。今回の発見は糖尿病や心疾患に対する理解を深め、治療方法を確立する可能性を秘めています。また、筋肉の健康状態をどうやって維持するか、その方法が明らかになるかもしれません」と話しており、今後の研究にさらなる期待がかかります。
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