メモ

プルトニウム型原子爆弾の構造を解説する「The Visible Atomic Bomb」


強大なエネルギーにより一瞬で多くの人命を奪い去ることができる核兵器は、人類が生みだした最も恐るべき兵器の1つ。遅々とではあるものの、核廃絶に向けた取り組みは少しずつ進んでいるとも言えますが、核兵器の廃絶方法に新たな手法を提言する書籍「Unmaking the Bomb」のサイトでは、そんな核兵器のなかでも長崎に投下された原子爆弾「ファットマン」の内部構造が解説されています。

The Visible Atomic Bomb
http://unmakingthebomb.com/visible-bomb/


このページで解説されているのは、核分裂反応を起こす物質としてプルトニウムを用いるタイプの原子爆弾。1945年8月9日に長崎市に投下された「ファットマン」をもとに解説をおこなっています。


◆プルトニウムによるコア
爆弾の中心「(コア)」にはプルトニウム239を用いた核反応物質が配置されています。通常爆弾の「爆薬」に相当する部分であり、重量6.2kgのプルトニウムが核分裂反応を連鎖的に起こすことで、通常爆薬でおよそ2万トンに相当する威力の爆発を引き起こします。コアの中心部には、核分裂反応の「火種」となる最初の中性子を発生させる「中性子点火器」が置かれています。


◆タンパー
コアの周囲は、劣化ウランやタングステンなどの重金属でできた「タンパー」によって取り囲まれます。タンパーはコアの核分裂反応によって飛び出した中性子を内側へ跳ね返し、さらに核分裂反応を加速させて1ナノ秒の間に80回という連鎖反応を繰り返させる「中性子反射体」としての役割を与えられています。


◆プッシャー
タンパーはさらにアルミニウムでできた球形の「プッシャー」に収められています。プッシャーは、さらに外側に配置されている爆薬が内側に向かって炸裂する「爆縮」によって生じた圧力をタンパー、そしてコアに伝える役割を果たします。


◆爆縮レンズ
プッシャーはおよそ2.5トンのTNT火薬によって取り囲まれており、この爆薬が同時に爆発することで、核分裂反応に必要な強い圧力をコアの中心部へと導く仕組みになっています。これは爆縮レンズと呼ばれる技術であり、原子爆弾を爆発させるための基本的な技術の1つとなっています。高圧力を生みだすためには極めて正確な火薬の燃焼タイミングが必要とされており、爆縮レンズには燃焼速度の異なる2種類の火薬を巧みに配置することで、カメラのレンズのように圧力を1点に集中させる技術が用いられています。


なお、長崎で実際に使用された後に進められた開発により爆縮レンズをはじめとする構造は大きく小型化され、最終的にはおよそ直径30cmに収まるほどコンパクトな大きさに集約されています。

◆起爆装置
爆縮レンズの周囲には、最初にTNT火薬を爆発させる起爆装置が置かれています。爆縮レンズは32個に分割されており、核反応を開始させるためにはそれぞれがコンマ1秒以下の精密さで正しく起爆される必要がありました。


◆前後外殻と姿勢安定用尾翼
ファットマンの特徴的な外見をとなる太い胴体は前後2分割の外殻によって構成され、素材にはスチールが用いられていました。また、尾部には投下時に姿勢を安定させるためのアルミ製尾翼が取り付けられています。前部外殻から飛び出しているアンテナは地面との距離を測定する対地距離測定アンテナが配置されており、長崎・浦上地区の上空550メートルに達した時点で起爆装置に信号が送られました。


ファットマンの爆発により長崎では6~7万人の市民が犠牲になり、今でもその後遺症に悩み続けている人がいるほど。広島に投下され、人類初の核爆弾による被害を与えたウラン型原子爆弾「リトルボーイ」は全く異なった構造になっているのですが、その違いや核兵器開発の経緯についてはこのサイトココにも詳しく載っているので参考にしてみてもいいかも。

なお、このような核兵器の削減に向けた手法について、物理学者や核安全保障の専門家など4名の著者が従来とは異なるという論点で提言した書籍「Unmaking the Bomb」も出版されています。

Unmaking the Bomb
http://unmakingthebomb.com/

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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