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広告を消す拡張機能「Adblock」をネットユーザー全体の5%が利用している実態が明らかに


ウェブページ上に表示された広告を消してしまい、サイトのコンテンツのみを表示することができるブラウザ拡張機能「Adblock Plus」は、閲覧する側のユーザーにとっては目障りな広告を見なくてすむために便利なものと評価が高く、全世界規模で利用者数を大きく伸ばしています。しかし一方で、費用を支払って広告を掲載している広告主や広告会社にとってはその存続にも関わる大きな問題となりかねません。そんなAdblockの伸びにまつわる現状と問題点について、フレデリク・フィユー氏がブログで語っています。

The Rise of Adblock Reveals A Serious Problem in the Advertising Ecosystem | Monday Note
http://www.mondaynote.com/2014/12/08/the-rise-of-adblock-reveals-a-serious-problem-in-the-advertising-ecosystem/

ドイツの企業「Eyeo」が開発したブラウザ拡張機能のAdblock Plusは、Firefox・Google Chrome・Internet Explorerなど主要なブラウザに対応して利用者数は増加の一途をたどっています。しかし裏を返せば、広告主にとっては自社の営業活動を邪魔する「妨害活動」となることは明らかであり、その仕組みをめぐって「Adblockのビジネスモデルは違法」として広告会社に訴えられるというケースも発生しています。

「インターネットユーザーとコンテンツクリエイター間におけるフェアな関係を再構築して、インターネットの将来を守る」ことを目的とするPageFairAdobeが広告ブロックの利用状況についてまとめた報告書からは、広告ブロックの仕組みが今やネット上の主流になり始めているという実態が浮き彫りになっています。

(PDFファイル) Adblocking goes mainstream 2014 report


報告書では、2014年第2四半期の時点における全世界でのAdblockユーザー数が1億4400万ユーザーだったことを公表。これは全世界のネット人口のうち4.9%にあたる数となっています。また、グラフからは2013年ごろを境に伸び率が上昇している様子もうかがうことができます。


また、その成長の原動力となったのがGoogle Chromeだったことも明らかにされています。2013年第2四半期から2014年第2四半期にかけてのユーザー数の伸びは、Firefoxが21%だったのに対しGoogle Chromeは96%で、ユーザー数がほぼ倍増していたことが明らかになっています。


ユーザーにとっては邪魔な広告が表示されないばかりか、広告を表示するために消費されていたPCのマシンパワーが解放されるために利便性の高いAdblockですが、一方の広告主にとっては由々しき事態と言えるのは当然の流れ。広告の表示回数が減少することはインターネット広告業界全体のエコシステムが破壊されることにもつながるために反対意見が後を絶ちません。

フィユー氏はブログで「実際のところ、私もAdblockを使っている」と公表。その理由は単に邪魔だからというだけではなく、限りのあるマシンリソースを有効に使うためだとしています。あるケースでは、広告がたくさん掲載されたページを開くと、まずブラウザのプログラムが広告表示に使われるモジュールを呼び出し、それぞれの広告サーバー対して広告コンテンツをリクエストします。


多いときには15個にも達するリクエストで呼び出されるのは、目を引くために内容が詰め込まれたコンテンツで、中には作成者がファイル最適化を行っていないために巨大ファイルが読み込まれることもしばしば。この処理のためにマシンの力が使われ、ファンは激しく回って騒音を出し、他で行っている作業の処理能力が落ちる……というのがフィユー氏の考える問題点。これを避けるためにフィユー氏はAdblockを導入しており、実際、無駄遣いされていたマシンパワーを取り戻して、より高速で安定したネット環境を維持できている、と語っています。

このように利便性の向上に役立っているとも言えるAdblock Plusですが、一方で、Eyeoが認定する「容認できる広告(Acceptable Ads)」はブロックしないという機能もあって、ここに問題が存在しているとフィユー氏は指摘しています。

その「容認できる広告」の基準がサイトで公表されているのですが、その基準(マニフェスト)は以下のようなものとされています。

1:迷惑にならないもの
2:ページが本来持つコンテンツを邪魔したりゆがめたりするものではないこと
3:広告であることを隠さない透明性があるもの
4:やかましい音をたてないもの
5:表示されているサイトに対して適切な内容であるもの

一見すると至極まっとうな項目が並べられているわけですが、フィユー氏の指摘は、Eyeoがその具体的な基準を明らかにしていない上に、そのマニフェストに賛同する「複数の組織」から運営にまつわるコストをまかなうための資金を受け取り、Adblock Plusの広告ブロックをスルーさせるための「ホワイトリスト」に追加していることに問題がある、というもの。

By Brett Davies

Eyeoは、マニフェストに反するものはホワイトリスト化されないこと、また有償でホワイトリスト入りを「購入」する方法はないことを強調していますが、フィユー氏はEyeoが複数の組織から3000万ドル(約35億円)の資金を得ていることを明らかにし、解決されるべき問題の要点を以下のようにまとめています。

・単独の団体が「容認できる広告」の選定を行うことは不可能である。特に(Eyeoのように)その基準が不透明な場合はなおさら。
・インターネット広告業界に存在する「不完全さ」や「だらしなさ」の空白部分をEyeoのシステムが補完している点は認められるべきである。
・広告ブロックの利用者数の伸びは、「デジタル広告経済にまん延するデフレ感」と「アドエクスチェンジリアルタイム入札への高依存度」のように、いずれも広告による売上を下落させるトレンドによる結果である。

その上でフィユー氏は、本来あるべき広告の姿を実現するためにはパブリッシャー(広告配信者)側と広告主側が同じテーブルについて粗悪な広告を排除するための仕組みを作る必要があると指摘。しかし、「まだその役目を担う適役は見つかっていない」としています。

By yuichirock

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in メモ,   ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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