一休寺の虎丘庵など初公開文化財もある「第50回記念 京都非公開文化財特別公開」を巡ってきた
京都には数多くの寺社仏閣があって貴重な文化財が保管されています。このうち、普段は非公開の文化財を一般に公開する「京都非公開文化財特別公開」というイベントが年に2回、春と秋に開催されています。今年は特別公開の開始(昭和40年/1965年)から50年目という節目で、かつ、世界遺産「古都京都の文化財」登録20周年でもあるということで、世界遺産7か所を含む全17か所が公開されたので、初公開のところを中心に見てきました。
公益財団法人 京都古文化 保存協会
http://www.kobunka.com/
公開されている全17か所は建物自体が重要文化財だったり、中に重要文化財が保存・展示されていたりして、また場所もかなり広く散っているため1日で回りきることはまず不可能。そこで、今回は初公開のものや世界遺産を中心として、「清浄華院」→「知恩院」→「西本願寺」→「教王護国寺(東寺)」→「黄檗山萬福寺」→「酬恩庵(一休寺)」と1日で回ってみることにしました。
◆京都着
朝8時過ぎに京都に到着。
京都駅の北側のバスターミナルが今回の出発の場です。
今回は計画を立てた時点で6回バスに乗ることがわかっていたので市バス・京都バス1日乗車券(500円)を購入。バスは1回大人230円なので、3回以上乗る場合には1日乗車券がお得。地下鉄も使うという人向けには京都観光一日乗車券・京都観光二日乗車券もあります。
バスにはカードリーダーがついているので、初回下車時にここに通すと……
このように日付が印字されます。2度目以降の下車時はこの裏面を運転手さんに見せればOK。
バス内でこの特別公開の広告を発見。期間は11月9日(日)まで。
◆清浄華院
最初の目的地である浄土宗大本山 清浄華院(しょうじょうけいん)は、京都駅からだと4系統・17系統・205系統の「府立医大病院前」が最寄り。バスターミナルA2乗り場から向かえばOK。
今回は時間に少し余裕があったので、裏門側に着く「府立医大病院前」で降りるのでは無く、1つ手前の「荒神口」で降りて表側へ回ることにしました。荒神口バス停で、乗ってきたバスを見送ります。
通りを西に歩いて行くと、バス停の名前の由来である「清三宝大荒神」があります。さらに進むと御所に突き当たるので右折。
北へ北へと清浄華院を目指します。途中にある廬山寺でも秋季特別展「皇室と廬山寺」をやっていたりして面白そうでしたが、今回はパス。
だいたいバス停から10分弱で清浄華院の正面に到着。先ほどバスが走っていた河原町通に比べると細い道に面したこちら側が正面なのは、御所があるため。
京都非公開文化財特別公開を行っているところには必ずこの看板が立っていて目印になっています。拝観料はいずれの場所でも大人800円、中高生400円。拝観料は文化財の維持管理に用いられるとのこと。なお、一般展示のものも見たいという場合は別途通常の拝観料が必要です。
清浄華院の場合、受付は境内に置かれていました。
特別拝観料を支払うと、細長い拝観券が渡されます。この券は中で見せることがあるので、取り出しやすいポケットに入れておくとよいです。「拝観の手引き」は今回特別公開されている各所の展示物や所在地・行き方などがまとめられていて300円。
清浄華院の御影堂。正面には法然上人像、左手側には不動明王像が安置されています。法然上人像は、浄土宗を開いた43歳以降のものではなく、42歳の時の姿のもの。42歳といえば厄年なので、かつては「厄除けの法然」として親しまれたとか。
境内入って右手側にあるのは大方丈。阿弥陀三尊像が安置されています。
中には案内の方がいて文化財の説明をしてくれるのですが、万年筆・ボールペン・サインペンの使用や模写は禁止なので、メモっておきたい人は鉛筆を持参しましょう。また、携帯電話の使用や写真撮影・飲食・喫煙も禁止。特別拝観の中で一部撮影がOKなところもありますが、そこは説明があります。
◆知恩院
清浄華院を後にして、総本山知恩院に向かいます。清浄華院から北に10分ほど歩いた今出川通に河原町今出川のバス停があります。
知恩院の最寄りである「知恩院前」までは201系統なら乗換なし。203系統も乗換なしですが、銀閣寺の方まで大回りするので少し時間がかかります。
バスは鴨川を越えてから南へ向かい、「祇園」エリアへ。
「知恩院前」のバス停から北へ向かって最初の信号を右折すると、徒歩1分で「知恩院古門」があります。この門の向こうには京都華頂大学・華頂短大などの学校がずらっと並んでいます。
古門からまっすぐ進めば知恩院黒門に到着。
右折すると三門がありますが、今回は黒門からまっすぐ上っていきました。
現在、知恩院では御影堂の大修理中。竣工予定は2019年だそうです。
特別拝観の入り口はここ、武家門。修学旅行生も来ていました。
大方丈では知恩院の七不思議に数えられる鴬張りの廊下を体験したり、襖絵の抜け雀や三方正面真向の猫を見ることが可能。
そして、特別公開されている方丈庭園は撮影OKでした。
外から見た大方丈。
庭園はさすがに見事なもので、多くの人がカメラを向けていました。
こちらは小方丈。
これは「二十五菩薩の庭」といい、知恩院所有の国宝「阿弥陀如来二十五菩薩来迎図」をもとに作庭されたもの。石が阿弥陀如来と二十五菩薩を、植え込みが来迎雲を表しています。
御影堂の修理が終われば、どんなに壮観なことか……。
ということで知恩院を後にします。
◆西本願寺
次は龍谷山本願寺(西本願寺)へ。最寄りのバス停は「西本願寺前」か裏手の「島原口」で、知恩院前からは1本では行けないので、今回は46系統で四条堀川まで移動して乗り換えます。なお、四条堀川までは12・201・203系統でも行けます。
四条堀川からは9系統か28系統に乗れば数分で西本願寺前に到着。
西本願寺は敷地も門もなにもかもが巨大。
「堀川正面」交差点を渡って御影堂門をくぐると正面にあるのが御影堂。
その左手側が特別公開の受付。
飛雲閣と旧仏飯所です。
飛雲閣はこんな姿の建物です。障子が多く使われていて柱も細く、風が吹くと飛んでしまいそうなため「飛雲閣」という名前がつけられたそうです。建物は3層になっていて、層ごとにどんどん床面積が小さくなっていますが、これは「高貴な方の部屋の上に新しい部屋を作るなんてとんでもない」という考えによるもの。
外からも一部だけちらっと見ることが可能。
旧仏飯所は名前の通り、かつて阿弥陀堂と御影堂にお供えする仏飯を作っていた所。内部が狭いため行列ができていました。
外観の特徴は、軒先が凹型のように反り返る一方でてっぺんが凸型に膨らんだ屋根で、「照り起り(てりむくり)」と呼ばれる作り。
ちなみに、仏飯所の北にある書院・経蔵も別途特別公開の対象となっています。
◆東寺
西本願寺の次は東寺(真言宗総本山教王護国寺)に行くことにしたのですが、ここもバス1本では行けません。今回はいったん四条堀川に戻り、207系統で「東寺東門前」へ向かうことに。
東寺はJRよりも南側にあるので、JRを陸橋で越え新幹線をくぐります。ちなみに、JRを越える陸橋上にあるこのゲートっぽいものは、廃止された京都市電大宮線の架線柱。
そして東寺東門前に到着。これは新幹線からも見える東寺の五重塔。
塀の外側の補修工事が行われていました。
これが東寺の東門。
特別公開されている灌頂院(かんじょういん)は敷地内の南西にあり、東門からはぐるっと歩いて行く必要があります。
灌頂院の内部には真言八祖が描かれていて、「両界曼荼羅図元禄本」が展示されています。
曼荼羅がどういうものかはこの看板にも写真が載っていますが、実物は一辺が3mほどあって見上げるほどの大きさ。灌頂院は入口以外の扉・窓がすべて閉め切られ、内部は曼荼羅を照らすライト以外の灯りはないため、曼荼羅が闇の中に浮かび上がっているようで、その鮮やかさや神々しさが際立っていました。
もちろん曼荼羅の撮影はできないので、じっくり見たいという人は灌頂院の外のテントでポスターや下敷きを買うという手があります。これは下敷き、1枚300円。
裏側には曼荼羅のどこにいるのが何の仏様なのかが示されています。
「京都非公開文化財特別公開」の対象は灌頂院なのですが、五重塔もこれに合わせて初層を公開していたので見てみることに。
内部は「密教空間」となっていて、心柱が大日如来、その周りを如来と菩薩が囲み、四方の柱には金剛曼荼羅が、側注には八大竜王が、壁には真言八祖が描かれています。五重塔は何度か焼失していて、現在あるものは1644年に再建された5代目だそうですが、柱の極彩色は非常に印象的。
外から見るだけではなく、入る機会があるならぜひ行くべき。
◆萬福寺
続いては、少し離れた黄檗山萬福寺へ向かうために、まずは京都駅へ。「京都駅八条口アバンティ前」で降りると……
京都駅の東の端なので、JR京都線などに乗るにはちょっと遠いかもしれませんが、新幹線や奈良線に乗るならそれほど不便ではありません。
ここから奈良線で黄檗駅へ向かいます。
黄檗駅で降りると萬福寺までの案内地図が。
駅を出て……
駅の向かいにあるのが京都芸術高校。この右側にある細い路地を抜けていきます。
通り抜けてから振り返るとこんな感じで、人が歩いてきているところが路地。一瞬、道を間違えたかと思うようなところです。
路地を抜けると突き当たりを左折。
あとは道なりに進めば……
到着です
これが萬福寺の三門
外観はこれまでも見ることができましたが、今回は実際に三門に上がることが可能でした。かなりの急階段なので膝の悪い人にはちょっと辛いですが、上がるだけの価値はあります。
季節によってはかなり美しい光景が見られるはず……。
また、三門の左手側にある松隠堂も公開されています。
京都市内ならバスが10分に1本ぐらい走っているのでゆったりと観光できますが、黄檗駅は京都方面・奈良方面とも1時間あたり4本なので、スケジュールをかっちり決めている人はダイヤに注意。
◆一休寺
この日、最後に回るのは酬恩庵(一休寺)。京田辺市にあるので、黄檗からはもちろん、京都市内からの移動もちょっと大変。まずは黄檗駅から普通電車に乗って移動。
新田駅で近鉄京都線に乗り換えます。
駅を降りて西向きの道に入ると、向こうの方に高架上の大久保駅が見えています。ただし、まっすぐに向かうことができないので、移動時間として足が早い人でも5分から10分は見ておいた方が安心。
大久保駅に到着、目的地の新田辺駅には急行が停車するので、来た列車に乗ればOK。
ということで新田辺駅。一休寺はここから西に1.6kmのところにあります。
駅の西口を出ると……
一休さんが待ち構えていました。
新田辺駅から京阪バスの66A・66B系統で「一休寺」までは約13分ですが、8時台から16時台まで1時間に1本です。1つ手前の「一休ヶ丘」からも歩ける距離なので79・80・81系統に乗るのもアリ。
ということで、バスを待って移動。
「一休ヶ丘」から坂をぐーっと下った先にあるのが「一休寺」のバス停。アップダウンがあるので、駅から徒歩というのはなかなかハードです。
バス停に到着、ここから一休寺までは5分弱です。
これが酬恩庵
手水場から緩い坂道を上っていくと受付があります。右側が一般拝観、左側が特別拝観。
この向こうが一休禅師の墓。
中門を過ぎると正面に見えるのが庫裏、右側に方丈が連なります。
今回、特別公開されているものの1つが方丈南庭の一段高いところにある虎丘庵(こきゅうあん)と虎丘庭園。虎丘庵は檜皮葺です。
ちょうど案内中でした。
「虎丘」の扁額の文字は一休によるもの。
内部はこんな感じ。この庵、もともと一休がいた大徳寺にあったそうですが、応仁の乱の戦禍を避けるため東山に移され、そこも危なくなったので京田辺の現在の位置に写ってきたものだとのこと。
茶室も設けられています。
掛け軸に書かれているのは「喫茶去」(きっさこ)。「お茶でもどうぞ」という言葉です。
その隣の窓から見えているのは……
先ほど表を通った墓所。一休は生前にこの墓を建てて、墓を見ながらお茶を飲んだりしていたのだそうです。
虎丘庵の前にあるのが虎丘庭園、枯山水様式の庭。
茶人の村田珠光が作ったものだと言われています。
特別拝観ではないものの、庫裏には「一休さん」のイメージといえば出てくるアイテムの1つである虎のついたてが置かれています。
先ほどの虎丘庵の裏手にあたる方丈庭園。
墓所と虎丘庵は隣接するようにして建っています。
庫裏では一服することもできます。
なお、一休寺だけにアニメ「一休さん」関連のものもあったりします。
境内にあった一休禅師像
その近くには、我々の「一休さん」イメージに近い少年一休の像も。みんなが一休さんにあやかろうとしたのか、頭がピカピカです。
「このはしわたるな」もあったりします。
特別公開の拝観時間は9時から16時なのでここでタイムアップ。バスに乗って帰ります。新田辺駅に戻るのではなく、松井山手駅から帰ることにしましたが、先ほど来たバスと同じ系統に乗ることになるので、本数は1時間に1本。16時44分のバスを逃すと帰れなくなります。
今回は時間に余裕を持っていたのでゆったりとバスを待って問題なく乗車。松井山手駅へ……。
学研都市線松井山手駅に到着。ここまで来れば大阪方面へは快速1本です。
◆まとめ
今回は6か所の特別公開を周り、東寺の五重塔拝観(500円)と酬恩庵の一般拝観(500円)もあったので、総拝観料は5800円。
交通費は京都市バスが500円、京都→黄檗が240円、黄檗→新田間が200円、大久保→新田辺が210円、近鉄新田辺駅→一休寺が160円、一休寺→松井山手駅が210円で、合計1520円。
この「京都非公開文化財特別公開」の期間は11月9日(日)までですが、たとえば「冷泉家」は公開日が11月4日(火)までだったり、京都国立博物館は休館日があったりするので、拝観予定の人は見たいものはどこにあるのか、何日までやっているのかを確認した上で、スケジュールもある程度考えた上で行ってみてください。たくさん見ることを目的にするのもいいですが、せっかくの文化財なのでそれぞれの場所でじっくりと説明を聞く時間を取っておいた方が満足度の高いものになるはずです。
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