シムシティのゲームクリエイターが明かす開発秘話とは?
「シムシティ」を代表とするシミュレーションゲーム「シムシリーズ」の開発者であるウィル・ライト氏が、1989年の発売以降ゲーム史に名を刻み続けるシムシティの誕生25周年を記念したインタビューに答え、当時の開発秘話やシムシティにかける思いを「Medium」に明かしました。
SimCity That I Used to Know — re:form — Medium
https://medium.com/re-form/simcity-that-i-used-to-know-d5d8c49e3e1d
シムシティは、ライト氏が設立した企業「マクシス」から1989年に発売されたPC向けのシュミレーションゲーム。シムシティは1989年の発売後、シリーズ化されるほどの人気を得て、2013年にはシリーズ6作目で初のオンライン作品となった「シムシティ(2013)」が発売され、シミュレーションゲームでは不動の地位を確立しています。
「ゲーム内の町を発展させて住民の数を増やしていく」というのがシムシティの基本的なゲームシステムになりますが、R(住居)・C(商業)・I(工業)という3つの要素から成り立つ需要インジケータのバランスを考えて都市を構築したり、電力・交通関連のインフラを整備したり、細かなマネージメントをできるのがシムシティの特徴です。
ゲームシステムを開発したライト氏は「どうやって都市を構築するという複雑な作業を、ユーザーの本能や直感的な部分に合わせられるか、という点にフォーカスして開発に取り組んだ」と語っています。ただ都市を開発するだけではなく、「自動車が道路を実際に走行している」「商業施設を住居地区付近に設置したら人の動きが活発になる」というプレイヤーが現実とリンクしやすいゲーム要素を取り込み、複雑な作業とプレイヤーをうまくすりあわせたそうです。
シムシティの「ゲームとプレイヤーをリンクする」というコンセプトは、ゲーム内での財政管理パートにも生かされています。「限られた予算で利益を上げ都市を拡大していく」というゲーム要素は、都市開発と比べると小規模になるものの、プレイヤーがゲームと現実の世界をリンクさせられるように緻密に考えられたとのこと。
ライト氏は「ゲームをしながらプレイヤーはシムシティを理解していくと同時に、本能や直感でゲームをプレイする、つまり直感的なマネジメント能力を身につけていくのです。こういった側面は経済学の本を読んでも決して得られないことです」と語っており、プレイヤーとゲームをつなげるために現実的要素を付与することが、シムシティの開発現場でいかに重要視されていたかがよくわかります。
プレイヤーのシムシティの楽しみ方について、ライト氏は「プレイヤーはシムシティにおける『Possibility Space』を探索している」と表現しました。ライト氏の言う「Possibility Space」とは、プレイヤーが自由に選択することで広がるゲームの潜在的な魅力のこと。プレイヤーの一挙手一投足で都市の未来が決まるシムシティでは、Possibility Spaceが無限に広がっています。Possibility Spaceは現代のゲーム開発においてとても重要なファクターで、例えば、「グランド・セフト・オートシリーズ」はPossibility Spaceを活用してプレイヤーに自由度を与え、世界中で大きな人気を得ました。
シムシティの楽しみ方は、景観が素晴らしい都市を作ったり、わざと景観をムチャクチャにしようとしてみたり、プレイヤーによって異なります。目指す都市の形をプレイヤーに選択してもらうことで、プレイヤーはPossibility Spaceに自己価値や感性を反映できるそうです。
また、ライト氏は「我々の脳は娯楽を消費して楽しむように作られていると思います。なぜなら、娯楽は本質的な部分で教育につながっているからです。例えば、子どもが何かに一生懸命打ち込んでいる時、子どもは楽しくてしかたがありません。言い換えると、子どもが娯楽を消費しているということ。ただし、子どもは遊ぶことを通して学習しており、娯楽の本質の楽しむという部分は、教育において最も効果的な要素だと言えます。しかしながら、実際は娯楽と教育の間には大きな壁があります。シムシティは、その壁を取り除くためのツールの1つだと私は思います」と、シムシティに娯楽だけではなく、教育への思いを込めたことを明かしました。
シムシティはゲームと現実世界をうまくリンクさせてプレイヤーに実際に都市を開発しているような仮想体験を与え、さらにゲームを通して学習できるという、ゲーム開発者のただならぬこだわりが込められた作品。マインクラフトを学校の必修科目に加えるなど、実社会でゲームを教育に取り入れる動きも昨今になって出てきており、ライト氏がシムシティに込めた「娯楽とゲームの間の壁を取り除く」という思いが継承されているように見えます。
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