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都市設計シミュレーション「シムシティ」は現実の都市設計に携わる人からどういう評価を受けているのか?

by m01229

1989年にMac OSとAmiga OS向けに発売された「シムシティ」は、何も建造物のない土地に住宅地や工業地区、鉄道などを設置して自分の好きなように都市を作ることができる人気シミュレーションゲームです。この「シムシティ」シリーズを遊んできたプレイヤーの中には現実でも都市設計に携わる仕事に就く人も登場しているとのことで、本業の人が「シムシティ」シリーズをどのように評価しているのかについてLos Angeles Timesがまとめています。

From video game to day job: How ‘SimCity’ inspired a generation of city planners - Los Angeles Times
https://www.latimes.com/business/technology/la-fi-tn-simcity-inspired-urban-planners-20190305-story.html


「シムシティ」は都市の地区設定、道路設計、インフラ整備、資金調達など、それまで一般的には注目されなかった「都市計画」という部分に多くのゲームプレイヤーの目を向けさせた作品です。現実の都市建設を忠実に再現したシミュレーションゲームではありませんが、実際にはもっと多くの細かな要素を考慮する必要のある都市建設が、「シムシティ」では遊びやすいように単純化されています。また、ゴジラのような怪獣やUFO、自身で自分の作った街を破壊することもできるなど、ゲームらしい非現実的な要素も含まれています。

by haljackey

非営利団体Silicon Valley Leadership Groupの交通・住宅部門のヴァイス・プレジデントを務めるJason Baker氏は、カリフォルニア大学デービス校で政治学を学んでいた頃に「シムシティ」と出会いました。Baker氏は「シムシティ」に熱中したことで、地方自治体の発展について興味を強く抱いたとのこと。

Baker氏はやがて大学で「3つの異なる都市モデルがどうやって発展するのか」について論文を書く代わりに、「シムシティ」で3つのシナリオを構築して、自分の仮想都市がどんな問題に直面したかを論文にまとめようと考えたそうです。「私は怪獣で街を壊して楽しむタイプのプレイヤーではなく、自分だけの街を上手に運営することを楽しんでいました。『シムシティ』をプレイしたことで、私は地方自治体の重要性を知ったのです」とBaker氏は語っています。


ニューヨーク市交通局の職員であるNicole Payne氏は幼い頃から架空の都市地図を描いていたそうで、その架空の地図を見た人から「シムシティ」を勧められたのがゲームとの出会いだったそうです。Payne氏は「『シムシティ』と出会っていなければ、私は今この場所にはいないでしょう」とコメントしています。

Baker氏やPayne氏のように、実際に都市運営に関わるとして活躍する「シムシティ」ファンの多くは、「1つの変更がやがて都市全体に影響を及ぼす」「交通アクセス・住みやすさ・経済が都市の発展にどのように関連するのかを観察できる」という点が「シムシティ」の素晴らしいところだと指摘しています。


ただし、「シムシティ」シリーズはゲームとして単純化を突き詰めていったため、大きな都市には必ず見られるような駐車場や自転車専用車線、1階に商業施設を抱えるような複合集合住宅は登場しません。2013年版「シムシティ」のデザイナーであるStone Librande氏は、The Atlanticの取材に対して「Google Mapで街を観察すると本当に駐車場が都市の中にたくさん存在することが判明しましたが、実際の都市をモデル化するために駐車場を再現すると、ゲームが地味で退屈なものになったので排除しています」と答えています。

公共交通機関のコンサルタントであるJarret Walker氏は、「シムシティ」は都市設計入門のゲームとしては面白いという評価を下しながらも、「交通網は運用よりも建設にコストがかかる」「住宅開発と商業開発は常に別々の区画で行わなければならない」という2つの古い都市設計思想がゲーム内にあることを問題視しています。

Walker氏は、「もちろん『シムシティ』はゲームなので、楽しくなるために単純化する必要はあるでしょう。問題は、『シムシティ』にある2つの誤解が20世紀後半にあった都市設計の抱えていた大きな誤解でもあるということです。『シムシティ』はただ都市設計を単純化しただけではなく、1980年代後半にニューアーバニズムによって否定された古い都市設計思想の方向に単純化しました。それによって、1960年代の都市設計思想が1990年代のゲーマー世代に植え付けられることになったのです」と批判しています。


南カリフォルニア大学建築学部准教授のJose Sanchez氏は、「ゲーム内の都市があくまでも2次元としての拡張しか見せない」という問題点に気づき、自身の開発したゲーム「Block’hood」では「自然をうまく組み込みながら、垂直方向に都市を拡大させていく」というゲーム性を軸にしたそうです。また、Sanchez氏が開発している続編の「Common'hood」は、ホームレスや薬物中毒など、現代の都市設計の上では避けて通れない「隣人問題」も考慮に入れた内容になっているとのことでした。

Commonhood Announcement Teaser - YouTube

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in 動画,   ゲーム, Posted by log1i_yk

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