メモ

パロディ作品の著作権法における扱いが変化

by Kyle McDonald

ある著作物を揶揄や風刺する目的で模倣した作品である「パロディ」が原著作の著作権を侵害するのかしないのかという線引きは法的に微妙な問題であり、しばしば裁判で争われていました。諸外国におけるパロディ作品の法的扱いはさまざまで、イギリスではこれまで「元作品の作者の許可があれば著作権に反しない」とされてきましたが、新たに施行された法律によって、パロディ作品の扱いに変化が生じています。

The Copyright and Rights in Performances (Quotation and Parody) Regulations 2014
http://www.legislation.gov.uk/ukdsi/2014/9780111116029

BBC News - Parody copyright laws set to come into effect
http://www.bbc.com/news/entertainment-arts-29408121

これまでイギリスの法律では「作者が許可を与えた場合のみ」著作権に違反せずパロディ作品を作ることが可能で、テレビや映画から映像を切り取った作品であるマッシュアップなどは、著作権違反で訴えられる可能性がありました。しかし2014年10月1日から施行された法律によって、既存作品のパロディや漫画的誇張・模倣作が合法的に行えるようになるとのこと。

by Kevin Trotman

ではイギリスの新しい著作権において、どんなパロディ作品が作られても元作品の権利者は法的手段をとることができないのか、というとそうではなく、「パロディの唯一つの本質は、元作品を想起させつつも違いを明らかにして、ユーモアを表現することである」として、権利者はパロディ作品が「差別的なメッセージを伝えていた場合」に法に訴えることが可能になります。

ここで重要なのは、もしパロディ作品が訴えられ裁判で争うようになった場合、それが法律に違反しているかどうか、つまり「ユーモアを表現しているかどうか」の判断は裁判官に委ねられるということ。しかし、ある作品が「面白い」のか「面白くない」のかは個人の主観によるものが大きく、著作権法のコンサルタントとして働くエリオノーラ・ロザーティさんは「作品がどのくらい面白いのか、という判断を裁判官に委ねることについては議論があります。個人の主観によって判断が異なることに加え、これまでの作品は結果として『ユーモラスで風刺的』であることがありましたが、これからは『ユーモラスで風刺的』であることが必要になるためです」と語りました。

by Michael Russell

なお、ここで想定されている「パロディ」とは既存の映像を切り取り組み合わせたマッシュアップMADのようなものや、既存の作品をコメディタッチにアレンジしたもの。

例えば、歌手マイリー・サイラスさんの「Wrecking Ball」のミュージックビデオもパロディの対象となっていました。

Miley Cyrus - Wrecking Ball - YouTube


Bart Bakerさんが作った「Wrecking Ball」のパロディムービーはYouTubeで500万回以上も再生される人気っぷり。

Miley Cyrus - "Wrecking Ball" PARODY - YouTube


インターネットの出現によって作品の「シェア」が可能になり、人々の創造性は爆発。それに伴いパロディ作品も増えましたが、インターネット上で公開されたものは法律上の理由によって即座に取り下げられることもよくあります。


特にレコード会社はパロディムービーに厳しい姿勢を取っていました。R&B歌手アリシア・キーズさんとジェイ・Zさんの楽曲「エンパイア・ステイト・オブ・マインド」をウェールズなまりでパロディにしたムービーはYouTubeで大人気だったにも関わらず、レコード会社の申し立てによって削除され、ネット上でブーイングが発生。しかし、新たな法律によってこのようなクリエイターたちの作品が法律的に守られるようになったということです。

これまでの法律はパロディ作品を公開するにあたってクリアすべき点が多くあり、パロディ作品を作っているクリエイターの中には「自分たちの表現がまるで検閲対象になっているような気がする」と語る人も。

喜劇作家のグレハム・リネハンさんは「表現行為は我々の生活の一部ですが、これまでの法律のもとでは無邪気に作品作りを行うのが難しくありました。例え元作品の権利者がパロディを気に入る可能性があっても、これまでの法律の下では考慮されませんでした。アーティストを守る方法が必要なのです」と語りました。

by Amnesty International UK

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in メモ,   マンガ, Posted by darkhorse_log

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