デング熱を根絶やしにする蚊が登場
東京の代々木公園で感染が発見されてから、全国で感染が拡大しているデング熱は、2014年現在で有効な予防ワクチンが存在しないのが実情です。そんなデング熱は日本以外でも拡大傾向にありますが、デング熱感染者が世界で最も多いと言われるブラジルで、デング熱を持つ蚊を根絶させるだけでなく、デング熱感染者の症状を抑えられる蚊の放出が始まりました。
BBC News - Brazil releases 'good' mosquitoes to fight Dengue fever
http://www.bbc.com/news/world-latin-america-29356232
ブラジルのFiocruz研究所は、拡大を続けるデング熱の除去について研究しており、デング熱をブロックする働きを持つバクテリアに感染させた1万匹の蚊を放ちました。毎月1度ずつ、4か月間にわたってリオデジャネイロ北部で蚊の放出が予定されており、この蚊が繁殖して増加することで、デング熱発症の防止効果の増大が期待されています。今後はオーストラリア、ベトナムおよびインドネシアでも同プログラムが実施されているとのこと。
デング熱を抑える作用を持つバクテリアはボルバキアと呼ばれる共生細菌の1種で、昆虫の60%から発見されるとのこと。ボルバキアに感染した蚊に刺されると、人間の体内のデングウイルスの増殖を抑える効果があります。さらに、ボルバキアの細菌としての作用は、デング熱ウイルスを持つ蚊を減少させるワクチンのように働きます。
By Ayacop
ボルバキアに感染していないメスの蚊が感染済みのオスの蚊と繁殖を行っても、卵が幼虫に成長することはありません。これがボルバキアが持つ性質によるもので、オス・メス、またはメスのみがボルバキアに感染している場合は、次世代の蚊にボルバキアが受け継がれるため、継続してボルバキアに感染させた蚊を放ち続けることで、将来的にはデング熱ウイルスを持つ蚊を根絶させることが可能と見られています。すでにオーストラリア各地で行われたプログラムでは、デング熱を持つ蚊に対して、ボルバキアを持つ蚊が優勢になるまで平均して10週間ほどだったとのこと。
By Salvatore D'Oro
ブラジルでは20年以上のブランクがあったものの1981年にデング熱が再発見され、その後30年間で700万以上の発症が確認されました。感染者数は世界でもトップレベルとなり、2009年~2014年間の発症数は320万、うち800人が死亡しています。 今後は、リオデジャネイロの他に3カ所でも同プロジェクトが実施される予定で、2016年には大規模な計画も予定されています。
・関連記事
人間を最も多く殺している生き物は何か? - GIGAZINE
28人に1人が事故に遭う、保険の統計で見る海外旅行トラブルの傾向と対策 - GIGAZINE
地球温暖化によって広がる可能性のある5つの病気 - GIGAZINE
アリが大気中の二酸化炭素を減少させていることが25年がかりの研究で判明 - GIGAZINE
動物たちはいったいどこからきたのか? - GIGAZINE
・関連コンテンツ