取材

「毎日20組に写真撮影を頼まれる」などバングラデシュでのスターな日々まとめ



マイナーな国に行けば外国人として珍しがられることはよくありますが、バングラデシュ人のフレンドリーさは驚くべきレベルでした。約600組と写真撮影をした怒濤の29日間をまとめてみました。

こんにちは!世界新聞特命記者の植竹智裕(うえたけともひろ)です。世界一周中の僕は現在、11ヶ国目インドにいます。(赤線は空路、青線は陸路で移動)


僕は7月30日から8月27日までの約1か月間バングラデシュを旅しました。


訪れた理由はただ一つ。何があるか知らなかったからです。そんな無知な僕を待ち受けていたのは、予想もしないほどフレンドリーなバングラデシュ人でした。


◆バングラデシュとは
Wikipediaのバングラデシュの記事によると「南アジアにあるイスラム教徒主体の国で、首都はダッカ。インドの東側に位置し、インド洋に面する。南東部のごく一部をミャンマーと接するほかは、インドと国境を接している。隣接するインドの西ベンガル州とともにベンガル語圏に属す。第三次印パ戦争がインドの勝利で終わった結果、1971年にバングラデシュの独立が確定した」ということで、インドから独立してだいたい40年ちょっとが経過しています。


◆バングラデシュ人はとてもフレンドリー
バングラデシュに到着したのは夜でしたが、この日はラマダン(断食)明けのお祭りの真っ最中で夜でも、街中で小さな観覧車が回り、人で賑わっていました。


そして、少し歩いただけで次から次へと声をかけられ、写真撮影や握手を求められましたが……


この時はお祭りのせいで人がここまでフレンドリーなのだとばかり思っていました。


◆外国人はスター扱い
異変に気付いたのは到着翌日、街中を散策している時でした。少し歩くだけでも子ども・大人問わず、呼び止められたり、手を振られたり……


挨拶として握手を求められたり……なんだかスターになったみたい!?そしてその後、まるで本当にスターになったかのような怒涛の日々が始まったのでした。


バングラデシュの休日は金曜日と土曜日です。休日に観光スポットが混むのは万国共通。そんな場所に行こうものなら……


次から次へと声をかけられ、握手や写真撮影、「何処から来たんだ?」などインタビューへの対応などに追われる事になります。


それを見ていた別のグループにも次から次へと声をかけられます。今までの旅では、たまにしかなかった現地人との写真もここでは毎日撮る機会に恵まれ、その数は多い日で20組以上。写真を撮らずに話かけてくる人も含めると、バングラデシュ人と接する機会は一日に30回を超えます。


人力車で商店街を通り抜ける時は、まるで貴族の成婚パレードのように両側の商店から手を振ってくれたり声をかけてくれます。こちらもスターかどこかの国の皇太子にでもなったかのような気分で手を振り返します。


◆大人もみんなフレンドリー
この国で印象的だったのが大人も気さくに話しかけてくるという事です。


今まで旅した国では、大人は警戒心が強く、こちらが微笑んでようやく微笑んでくれるような印象でした。写真撮影もこちらが恐る恐る頼むような、ちょっと気を遣う行為でしたが、この国ではみんな笑顔で接してくれて、こちらから頼まなくても向こうから写真撮影を申し込んできてくれます。これは願ったり叶ったりです。


◆旅人がCM効果を生む
さて、もてはやされるだけがスターではありません。彼らは何かしらの商業効果も生み出しているからこそスターなのです。一方の僕は一介の旅人に過ぎないので、商業効果など生み出せないと思っていましたが……ある時、屋台に腰かけてチャー(日本ではチャイという名で知られていますが、バングラデシュではチャーと呼ばれています)を飲んでいたら……


それまで閑古鳥が鳴いていた屋台に人が集まって来ました。やはり彼らも写真を撮ったり、質問を投げかけてきます。そのついでにチャーも……と言った具合にどんどんチャーが売れて行きます。同様の現象が街の食堂でも度々起こりました。どうやらこの国では旅人にもCM効果があるようです。


◆バングラデシュ人はとにかく写真大好き
上記のように写真撮影を頼まれる事が多くありましたが、面白い事に、写真を撮ると言っても一緒に写真を撮るだけではなく、僕だけを撮る場合もあり、逆に撮ってくれと頼まれる場合もありました。


特にお店を開いている人に「仕事している姿を撮ってくれ」と言われる事が多かったです。


市場を歩いていたら若者に声をかけられて、近くでお米を売っていたお店の人達を片っ端から写真撮影させられた事も……。若者とお米屋さんの関係は不明ですが、お米屋さんのおじさん達もまんざらではなさそうにポーズを決めてくれます。


◆観光地でまさかの撮影会
ミャンマーに近く、仏教寺院が多い東部のモヘシュカリ島を訪れた時の事。


僕は電動の三輪タクシーで島を巡りました。


その時に出会った運転手さんも写真撮影が大好き。


運転手が観光案内やカメラマンを務めてくれる事は珍しくありませんが、ここまで厳しく顔の向きやポーズを指示されたのは初めてです。


まるで写真集でも作って頂いているかのような気分ですが、なぜ仏教寺院でこのようなポーズをとらされたのかは分かりません。


◆なぜスター扱いなのか
ではなぜ彼らはこんなにもフレンドリーなのでしょうか?僕が日本人だからでしょうか?確かに、バングラデシュ独立時に日本が他の先進国に先駆けて独立承認を行なった他、現在まで経済協力を行ってきた経緯もあり、とりわけ日本に対するイメージは良いようです。実際に会った人々の中にはこのような、二国間のエピソードを踏まえて「日本が大好き」と言ってくれた人もいました。

しかし、どうやらこの国では外国人、特に南アジア以外の出身者は誰でもスターになれるようです。ある時、スペイン人2人とサイクリングに行った時は彼らが注目・声援の的になっていました。僕にとってはライバル出現の瞬間でもあり、束の間の休息でもありました。


◆外国人が珍しい
また、実際に僕が滞在した29日間で見かけた外国人は日本人が5人、西洋人が6人と他の国に比べても格段と少ない人数です。バングラデシュには世界遺産(写真はアンコールワットの建築様式にも影響を与えたといわれるパハルプールの仏教寺院遺跡群)や……


古くから残る街並み……


125kmに及ぶ世界一長い砂浜があるコックスバザールなど、観光スポットもありながら、国際的な観光地を持たないバングラデシュでは外国人という存在自体が自体が珍しいのです。


中にはホテルの従業員ですら、僕を見て「フランス人だっけ?」と声をかけてきた事がありました(僕の知る限り、先祖は皆日本人です)。それだけ外国人を見る事が少ないのでしょう。

◆彼らの興味
彼らに声をかけられ質問される主な項目は以下の通り。

1:出身国
名前よりも先にまず聞かれるのが何処から来たかです。最初は中国人と思われる事が多く、ジャパンと言っても「ジャーマン?」と聞き返されることが多かったです。日本出身と言ったら「じゃあシドニーから来たの?」と言われた事もあります(シドニーはオーストラリアの都市です)。

2:名前
なぜか「マイネーム?」と聞かれる事が非常に多いです。「あ、名前聞かれてるんだ」と気付くまでには時間がかかりました……。

3:職業と収入
「Service(仕事) or Visit(旅行)?」と聞かれる事が多かったです。そして、収入を聞かれて答えると、(賃金が高いから)日本へ行くのが憧れだと言われた事もありました。

4:既婚か未婚か
5:(未婚と答えた場合)恋人はいるか
6:なぜ一人で旅をしているのか
僕は未婚なので毎回のようにこの一連の質問を投げかけられ、憐れまれる事も多々ありました……。

7:家族構成と名前
家族全員の名前を聞かれる事もありましたが、とりわけ父親の名前を聞かれる事が多かったです。知ってどうするのでしょうか……。

◆ちょっと困ったスター扱い
子どもから大人まで気さくで好奇心旺盛な彼らですが、ちょっと困ってしまった一面もありました。こちらが何処で何をしていようと構わずに話しかけてくる事です。以下に幾つか困ってしまったエピソードをご紹介します。

1:早朝にドアをノック
宿で寝ていると早朝に物凄い勢いでドアをノックされ、出てみると、宿の従業員が「昨日○○で見かけたよ!」と握手して笑顔で去って行きました。どうしてもすぐに伝えたかったんでしょうね……。

2:食事をとろうとしたその時
食堂にて、イスラム圏で広く食べられるビリヤニを……


今まさに口に放り込もうとした瞬間でも彼らは容赦なく質問を投げかけてきます(ちなみに彼らは全員、食堂の従業員です)。


食事くらいゆっくり食べさせて欲しい……けれどこの笑顔を見たら何も言えません。


油断をしていたら写真を撮られていた事も……。


それでもこの笑顔を見たら憎めません。


3:駅では大抵囲まれる
鉄道の駅には列車を待つ人や商人など多くの人がいます。


そんな場所に行こうものなら、四方を物珍しそうな顔をしたバングラデシュ人に囲まれ、誰かが口火を切ったら最後、根掘り葉掘り質問攻めに遭います。聞かれるのは大体同じ事なので、駅の放送で国籍や名前、既婚か未婚か、一人にしてほしい旨など、予め会見を開きたかったくらいです。


警備員が出動して木の棒で群衆を追い払ってくれ、僕は線路上に一度逃れましたが、振り向くと……ホームに沿ってこちらを見る人々。


はじめは人だかりを解消しようと努めていた警備員も観客の一人になりました……。


その様子を見た鉄道職員が関係者以外立ち入り禁止の管制室に入れてくれて……


列車が来るまで休ませてくれた事もありました(もちろん彼にも質問攻めに遭いましたが……)。


4:列車の中でも
電車から見える農村の風景。熱心に写真やムービーに収めていると……


視線に気付きました。写真を撮って欲しい気配が伝わってきます。


ある時は、話しかけられる事にストレスを感じてしまい、音楽を聴いたり、狸寝入りしてみたりしましたが、話しかけられる前に膝を叩かれ、イヤフォンをいちいち外さなければいけないというストレスが増えただけでした……。


5:日本の就労ビザの取りやすさは?
時々質問されて困ったのが、日本の就労ビザの取りやすさと、日本に行ったら助けてくれるかという質問でした。日本国籍の僕は日本の就労ビザを取る必要はありませんし、知る由もありません。逆に彼らに「バングラデシュの就労ビザは簡単に取れるのか」と尋ねたところ、答えられる人は一人もいませんでした……。そういうものなのです。

6:すぐに連絡先を聞かれる
名前も聞かずに二言目には「フェイスブック?フォンナンバー?」と聞いてくるせっかちな人にも沢山会いました。一緒に写真を撮った場合は共有手段として連絡先を教えていましたが、それ以降、毎朝のように「やぁ」「おはよう」と膨大な量のメッセージが届くようになり困ってしまいました。仲良くなって電話番号を交換した人もいますが、中には英語が分からずひたすらベンガル語で話してくる人もいて会話が成立せず、電話を切ろうとしてもそれすら伝わらず困ってしまいました。それでも果敢に再びコンタクトを取ろうとしてくる彼らの勢いには脱帽です。

7:言葉の違いなどお構いなし
ある時、田舎の小道を歩いていると子どもや大人に囲まれて、身に着けている物を触られたり、ベンガル語で次から次へと何かを質問されました。「バングラ・バシャ・ブジナイ(ベンガル語が分からない)」と言っても一向に勢いは衰えません。文化の違いはあっても、何を言われているか分からない上に触られるのはあまり気持ちのいいものではありません。この時は不機嫌な顔で立ち去ってしまいましたが、彼らの誰一人として悪意を持っていないのは分かっていたので、途中で思い直して彼らの元に引き返しました。やはりまた触られて、何を言っているのかもさっぱり分かりませんでしたが、言葉が通じなくても結局は沢山の笑顔に出会う事が出来ました。


◆スターって大変なんですね
率直な感想を言うと、何処へ行っても人気者で、初めの2週間くらいは悪い気がしなかった僕ですが、1ヶ月過ごしただけで物凄く疲れました……。何処へ行っても数分おきに違う人から同じ質問を繰り返されて、一人になれる時間と言えばホテルの部屋かトイレくらいです。


人気が続く限りこんな生活がずっと続くなんて……!スターの大変さが身に染みて分かりました。しかし、その反面、滞在期間を通して毎日子どもから大人まで幅広い年代の人達に笑ってもらえたのも事実です。


これはスターの仕事の遣り甲斐にも通じるのかも知れません。


観光するにはマイナーな国ではありますが、今この瞬間も、素敵な笑顔が新たな外国人との出会いを待っています。バングラデシュと日本を繋ぐ明日のスターはあなたかも?


文・取材:植竹智裕 https://twitter.com/hiro_uetaken

監修:世界新聞 sekaishinbun.net


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in 取材, Posted by logc_nt

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