致死率50%超えのエボラ出血熱の感染拡大を図でまとめるとこうなる

By NIAID

西アフリカで猛威をふるうエボラ出血熱に効果があると期待されている未承認薬の「ZMapp(ジーマップ)」を投与された医療従事者3人のうち、2人のアメリカ人は回復し命をとりとめましたが、リベリア人医師は死亡しました。いまだ特効薬がなく、感染拡大の危険があるエボラ出血熱のこれまでの状況を図でまとめるとこうなります。

BBC News - Ebola: Mapping the outbreak
http://www.bbc.com/news/world-africa-28755033

Ebola outbreak: Why Liberia's quarantine in West Point slum will fail - World - CBC News
http://www.cbc.ca/news/world/ebola-outbreak-why-liberia-s-quarantine-in-west-point-slum-will-fail-1.2744292

世界保健機関(WHO)の報告によると、2014年8月18日までにエボラ出血熱によって死亡した人の数は1350人。そのうちリベリアで576人、ギニアで396人、シエラレオネで374人、ナイジェリアで4人の死亡が確認されています。


エボラ出血熱による犠牲者を出した4国は、すべて西アフリカに位置しています。New England Journal of Medicineの研究者によると、2013年12月6日にギニアの2歳の男の子が発症したのが今回の大流行の始まりと考えられています。


エボラ出血熱が襲ったギニアのゲケドゥ(Gueckedou)は西アフリカ有数の交易地で、2014年3月末までにエボラウイルスは国境を越えリベリア、シエラレオネに広がっていきました。2014年6月には国境なき医師団が「エボラ出血熱の流行はコントロール不能」と表明。このころからエボラ出血熱感染者の死亡者数がうなぎ登りに増えています。


これはエボラ出血熱の感染者数と死亡者数を棒グラフにした図。1979年から1994年のようにまったく感染者が発生しないこともありますが、一度流行すると数百人単位で感染者が増え多くの人が死亡する場合があることが分かります。しかし、過去40年近い期間の感染者数を見渡せば、2014年の流行は例年にないほどの規模であることは明らか。


特に、1976年から2013年までのエボラ出血熱発生地(赤色)の大半が中央アフリカ一帯に限定されていたのに対して、2014年の大流行はこれまでエボラ出血熱が発生していなかった西アフリカ地域で発生したこと(緑色)が一目瞭然です。


エボラ出血熱が大流行した原因については、まず第一に衛生面でのインフラが未整備であることが挙げられています。エボラウイルスは空気感染せず、またウイルス自体もアルコールや石けんでの消毒が可能なためエボラ出血熱に感染した人・野生動物の体液や排泄物に触れなければ感染を防げると考えられているところ、西アフリカの国々では公衆衛生環境が整っていないため感染拡大を食い止めることに失敗しているというわけです。なお、アフリカ有数の産油国であるナイジェリアは1億7000万人を超える人口にもかかわらず、エボラ出血熱の犠牲者が4人にとどまっているのは公衆衛生環境が比較的整っているからだとの指摘があります。

By European Commission DG ECHO

また、エボラウイルスの感染拡大を食い止められなかった理由として感染の疑いのある患者を隔離することに失敗した事実も挙げられます。リベリア政府はエボラ出血熱に感染した疑いのある患者が多かった貧困地域を隔離したところ、政府の隔離措置に反発した住民が隔離施設を襲撃して患者の血液の付着したシーツを盗んだ後逃走するなどのトラブルが発生し、結果として感染拡大の制御に失敗したことが指摘されています。

また、西アフリカ諸国では、長年の内戦状態が原因で、政府に対して疑心を持つ人が多くいる国もあり、政府の隔離指示に従わなかったり、エボラ出血熱感染について届け出なかったりする人も多いとされ、エボラ出血熱が猛威をふるうリベリアのように「医者の数より兵士の数の方が多い」という国もある通り、全体的な医療リソースの不足も感染拡大の大きな原因となっています。

By European Commission DG ECHO

エボラ出血熱感染地では、「塩水を飲めば感染が予防できる」や「玉ネギでエボラウイルスを殺せる」などの眉唾の「治療法」が登場するなど混乱に拍車をかけています。なお、健康食品を販売するアメリカのオンラインサイトでも「耐エボラウイルス性」をうたうパウダーが登場したり、「Ebola Virus Protection Kit」なるエボラウイルスにはとうてい太刀打ちできないお粗末な商品が登場したりとエボラ出血熱感染拡大の混乱に乗じた詐欺的行為も横行しています。


また、いまだエボラ出血熱の特効薬が開発されていない背景にはワクチン開発自体の難しさだけでなく、エボラ出血熱の高い致死率から対照実験でプラセボ(偽薬)を与えられた患者が高い確率で死ぬことに対する倫理的な問題があることも指摘されています。

さらに、エボラ出血熱の発生地域がアフリカの貧しい国に限られること、そしてエボラ出血熱の発生数が世界規模で見れば少ないためたとえ特効薬の開発に成功したとしても「見返り」が少ないことから製薬会社が開発に乗り気でないという事実も指摘されています。

2014年8月24日には大流行中の西アフリカとは別に中央アフリカのコンゴでも新たにエボラ出血熱感染による死者が出るなど、エボラ出血熱の感染拡大は予断を許さない状況となっています。

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