睡眠の質・活力の低下など、健康に悪影響を与える窓なしオフィスでの勤務

By Paul Mayne

所在が地下だったり構造上の問題があったりして窓が一切ないというオフィスで働いている人と、窓があるオフィスで働いている人の行動パターンや健康を、様々な角度から調べた調査結果が発表されました。調査結果は窓なしのオフィスがいかに社員の健康を害しているか、わかる内容になっています。

Impact of windows and daylight exposure on ... [J Clin Sleep Med. 2014] - PubMed - NCBI
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24932139

Workers In Windowless Offices Lose 46 Minutes Of Sleep A Night | Co.Design | business + design
http://www.fastcodesign.com/3033998/evidence/workers-in-windowless-offices-lose-46-minutes-of-sleep-a-night

イリノイ大学建築学部のMohamed Boubekri准教授が率いた研究チームは、窓なし、もしくは窓の数が十分でないオフィスで働く27人と窓ありのオフィスで働く21人の職員に対して、身体機能・日常役割機能(身体)・体の痛み・全体的健康感・活力・社会生活機能・日常役割機能(精神)・心の健康という8つの健康概念を質問形式で測定できるSF-36を実施した他、睡眠の質を21点満点で算出するPittsburgh Sleep Quality Index(PSQI)を用いて調査を行いました。

SF-36では、「窓なしオフィスの人」の総合スコアが「窓ありオフィスの人」よりも低く、特に活力のスコアに顕著な差が見られました。また、PSQIの結果、窓なしオフィスの人のほうが質の低い睡眠をとっていることが判明。

By Richard Elzey

研究チームは前述の調査とは別に、実験向けに開発された時計を被験者に装着してもらい、「1日のうち、どれだけの時間太陽光を浴びているのか」と行動パターンを計測する実験も実施。この結果、窓なしオフィスの人は、窓ありオフィスの人よりも平日に太陽光を浴びる時間や行動が短く、平均睡眠時間も約46分短いことが明らかになりました。

特に研究者たちが注目したのは、勤務中以外(勤務時間外と休日)にどれだけ太陽光の光を浴びているのかという点の調査結果で、窓なしオフィスの人は窓ありオフィスの人よりも圧倒的に浴びる時間が短いことが判明。この結果について、研究者たちは「説明するのはかなり難しい」と前置きした上で、「窓のあるオフィスで働いている人たちは、勤務以外の時間にも多く太陽光を浴びて、外出するための気力を蓄えているのかもしれない」と予想しています。

By Debbs.

調査と実験から「窓のあるオフィスで働く人のほうが健康的である」という結果が得られたことを踏まえて、Boubekri助教授は「窓をたくさん備えて太陽光を多く取り入れるビルや部屋を建設するのは、さほど難しいことではありません。窓を増やして太陽光を取り入れることは、従業員に活力を与えるだけではなく消費電力の節約にもなります。窓ありのオフィスを増やすことは、エネルギー不足が問題となる昨今で、取り組まれるべき課題ではないでしょうか」と提案していました。

日本の場合、労働安全衛生法における事務所衛生基準規則の第三条で「事業者は、室においては、窓その他の開口部の直接外気に向つて開放することができる部分の面積が、常時床面積の二十分の一以上になるようにしなければならない。ただし、換気が十分に行なわれる性能を有する設備を設けたときは、この限りでない」と定められています。

また、同規則の第十条では「事業者は、室の作業面の照度を、次の表の上欄に掲げる作業の区分に応じて、同表の下欄に掲げる基準に適合させなければならない。ただし、感光材料の取扱い等特殊な作業を行なう室については、この限りでない」と記されていて、条文内の下記同表では、「普通の作業の場合150ルクス以上」という基準が設けられています。

ルクスとは照度を表わす単位で、大阪市立科学館が公開している資料によると、大体の目安として夜のアーケードの明るさが150～200ルクスとのこと。つまり、窓なしのオフィスが夜のアーケードよりも暗く、換気も十分でない場合、事業者は改善する義務があります。ただし、窓がなくても事務所衛生基準規則の基準を達成することは可能なので、「窓なしのオフィスに窓を付けて欲しい」と思っても、なかなか難しそうです。