サイエンス

エボラ出血熱の感染拡大を手助けするものとは?

By European Commission DG ECHO

エボラ出血熱」は致死率50%以上の恐ろしい感染症で、ウイルスによっては致死率が80%を超えるものもあります。初めてエボラウイルスが発見されたのは1976年のことですが、それから30年以上経過した2014年の2月にギニアでエボラウイルスが流行して現在も拡大し続けているわけです。

しかし、エボラ出血熱について「名前は知っているけど詳しいことは何も知らない」「なんでこんなに大流行しているの?」という人も少なくないはず。今知っておくべき事は何なのか、まとめたムービーが以下のものです。

What You Need to Know About Ebola - YouTube


エボラ出血熱は「エボラウイルス病」とも呼ばれる感染症の一種。


これを引き起こすエボラウイルスには5種類のウイルスが存在します。


その中のひとつであるザイールエボラウイルス(ZEBOV)は、1976年に初めて発見されたエボラウイルスです。


ZEBOVは当時のザイール(現コンゴ民主共和国)にあるエボラ川で見つかったウイルスなので、ここから感染症の名前が「エボラ出血熱」と名付けられました。


現在までにエボラ出血熱に感染した患者の数は1323人、そのうち死亡したのは729人で致死率は約55%。


現在西アフリカを中心に流行しているエボラ出血熱ですが、これは主にギニア・シエラレオネ・リベリア・ナイジェリアの都市ラゴスにて拡大しているようです。


一番最初に見つかったエボラウイルスであるZEBOV。これに感染した場合の死亡率はなんと平均83%にものぼります。


エボラ出血熱の特徴はその名の通り重度の出血を伴うという点。


また、エボラウイルスに感染すると嘔吐と下痢が始まり、血圧が下がり感染者の全身の循環系が機能しなくなって……


内臓が機能不全を起こします。


エボラは空気感染するウイルスではないので、感染する経路としては「感染者の血液や分泌物、排泄物、吐瀉物などが飛び散ったときに触れてしまう」というのが主要なもの。


なので、エボラ出血熱の患者を看病するからといって感染するというわけではありません。


なお、最初にエボラウイルスを人間に感染させたのはコウモリと言われています。


エボラウイルスにはワクチンがありません。しかし、ワクチンのプロタイプはいろいろと開発中のようです。


現在開発中のエボラワクチンのひとつに、ボストン大学の生物学者が発明したアルカロイドを使ったものがあります。なお、アルカロイドというのはウイルスの増殖を防ぐ効果を持った有機化合物で、タバコのニコチンやお茶のカフェイン、ケシのモルヒネなどもアルカロイドであるそうです。


なお、「エボラ、エボラ!」と世界中で騒がれまくっていますが、アフリカでは毎年120万人がエイズで死んでおり……


マラリアでも毎年60万人が死亡しているとのこと。いくらエボラ出血熱の致死率が高いといえども、本当にアフリカの人々から恐れられている病は他のものだったりするのかもしれません。


エボラウイルスは空気感染の恐れがなく、感染者の体液などに触れたりしない限り感染することはないとのことですが、なぜここまで感染が拡大しているのでしょうか。比較的感染しづらいはずのエボラウイルスが流行している理由を、過度な報道により生じた「恐れとデマ」のせいである、とTIMEは分析しています。

Ebola: Rumor and Confusion Make It Harder To Stop The Outbreak - TIME
https://time.com/3092855/ebola-fear-rumors/


エボラウイルスの感染拡大を防ぐための唯一の方法は、感染した人物を明らかにし、隔離し、そして感染してから接触した疑いのある人物を調査する、というものです。しかし、現在の大流行ではこれがうまく進んでいない、とのこと。

「どこを見ても『治療法がない』だとか『治らない』といったことが書かれており、人々は『それならどうして病院に行かなければいけないの?』と感じている」と語るのは、International Medical Corpsのエボラ緊急対策チームでリーダーを務めるSean Casey氏。リベリアではエボラウイルスに関する過剰な報道により、無駄に大きな混乱が生み出されてしまっている、とCasey氏は言います。

さらに、こういった報道の影響でエボラウイルスに感染した人は名前を変えたりあの手この手を駆使し、自分が感染者であることを気づかれないようにしている、と国際支援団体の一員としてリベリアでエボラ出血熱患者を看護したIngrid Gercamaさんは現地の様子を語ります。こういった状況から、「NGOは現在よりポジティブなメッセージを広めようとしています。エボラが致命的な病であるだとか、治療法がないことを言うよりも、40%の感染者が生き残っていることを強調しようとしているんです」とGercamaさんはコメント。

By European Commission DG ECHO

エボラに対する「恐れ」は西アフリカで急速に広まっています。Telegraphのレポートによると、ギニアの首都コナクリでは路上で男性が倒れてから約5時間も病院が患者を放置していた事が明かされていますが、この患者がエボラウイルスの感染者であったかどうかは不明です。また、リベリアではニュースサイトのThe Liberian Observerが、「エボラウイルスに汚染された水を飲んで10人が死亡した」という未確認情報を報道しています。

また、リベリアのドゥアーラではエボラ患者をエクソシズムで治療しようとしていたり、医者がライムを体中にこすりつけるのが良いだとか、タマネギがエボラウイルスを倒してくれるといった民間療法を勧めていたりします。さらに、悪徳商人は存在しないはずの「エボラウイルスのワクチン」を不当な値段で売り歩いており、ナイジェリアでも同じようなデタラメな治療法が横行している、とのこと。

他にも「ある心の曲がった人は、あらゆる通信手段を使って『お湯に塩を混ぜればエボラウイルスに感染することを防げる』という噂を流しました」と、ナイジェリアの厚生相であるOnyebuchi Chukwu氏はコメントしています。その後Chukwu氏はこういった民間療法はすべてウソであると声明を出しましたが、ナイジェリアの新聞社によれば噂の影響で「塩分を摂取し過ぎて2人が死亡、20人が入院した」とのこと。

By DFID - UK Department for International Development

現在もリベリアでは国際支援団体とユニセフが協力してエボラ対策を講じているそうですが、路上には感染者の遺体が放置されたままになっており、人手不足は明らか。そんな中、国境なき医師団とLiberian Ministry of Healthのスタッフがエボラウイルスに感染し、援助団体の一部はアフリカからの撤退も決めているので、人手不足はより深刻化しそうです。

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in サイエンス,   動画, Posted by logu_ii

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