ワールドカップにまつわる「誕生日のパラドックス」とワールドカップ出場選手の誕生月に関するお話
By alobos Life
誕生日のパラドックスとは、「何人集まればその中に同じ誕生日の人がいる確率が50%を超えるのか?」という問題の結果が、一般的な直感とは大きく異なっているというもの。この問題の答えはなんとたったの「23人」で、1年は365日あるにも関わらずたったの23人が集まればその中に同じ誕生日の人がいる確率は50%を超えてしまう、とのことです。現在ブラジルで開催されている2014 FIFAワールドカップには、世界中から32チーム合計736人の選手たちが集まっているわけですが、このワールドカップ参加チームごとに「誕生日のパラドックス」を検証してみるといろいろと面白い要素が見られます。
BBC News - The birthday paradox at the World Cup
http://www.bbc.com/news/magazine-27835311
「誕生日のパラドックスは数学における最も大きな成功のひとつ」というのは、 数字と実生活がどのように作用し合っているのかを書いたAlex Through the Looking-Glassの著者であるAlex Bellos氏。Bellos氏は、誕生日のパラドックスは論理的な矛盾をはらんでいるわけではなく、単に予期せぬ結果が出る、というだけの非論理的なパラドックだと指摘します。
「30人しかいない学校のクラスで同じ誕生日の人がいる場合、大抵は驚くべき偶然だと考えます。しかし、実際には30人の中で同じ誕生日のペアが出てくる確率は70%もあります」とBellos氏。さらに、70人が集まれば、その中で同じ誕生日のペアができる確率は99.9%にまで上昇します。
以下のグラフは横軸に人数、縦軸に同じ誕生日のペアが出てくる確率を示したグラフ。
23人が集まると同じ誕生日の人がいる確率は50%を超えるわけですが、この「23」という数字は奇しくもワールドカップで各代表チームがチームに登録できる選手の人数と同じ数です。なので、「誕生日のパラドックス」が事実であるかどうかを確かめるのに、ワールドカップに出場している32チームを調べてみる、というのは至極まっとうなところ。
イギリスのBBCはワールドカップの参加チームで「誕生日のパラドックス」を検証するために、FIFAが公開している公式チームリストの生年月日情報(6月10日時点での)を使って同じ誕生日の組み合わせが何チームでできあがるかを調べています。
FIFAの公式ページ上で見られる情報はこんな感じで、選手ひとりひとりの詳細な情報が記載されたページが存在し、赤枠部分には生年月日も記されているわけです。
調査の結果、同じ誕生日の選手がいるチームは、スペイン・コロンビア・スイス・アメリカ・イラン・フランス・アルゼンチン・韓国・カメルーン・オーストラリア・ボスニアヘルツェゴビナ・ロシア・オランダ・ブラジル・ホンジュラス・ナイジェリアの16チームで、ちょうど全体の50%という出来過ぎな結果が出ました。なお、この中でスイス・イラン・フランス・アルゼンチン・韓国の5カ国には同じ誕生日の組み合わせが2つできた、とのこと。
開催国であり、ブラジルワールドカップの記念すべきファーストゲームを勝利で飾ったブラジル代表チームの中で同じ誕生日だったのは、日本のJリーグでプレーしたフッキ選手(左)と、ブラジルの中盤を支えるパウリーニョ選手(右)。2人の誕生日は7月25日。
アルゼンチン代表で同じ誕生日なのは、フェルナンド・ガゴ選手(左)とアウグスト・フェルナンデス選手。2人は1986年4月10日生まれと誕生年まで同じ。
韓国代表のカク・テヒ選手(左)とソン・フンミン選手(右)は大会開催中の7月8日に誕生日を迎えます。
ボスニアヘルツェゴビナ代表のアスミル・ベゴビッチ選手(左)とセアド・コラシナツ選手(右)は6月20日生まれで、ベゴビッチ選手は26歳、コラシナツ選手は21歳。
また、同チームではありませんが、ドイツ代表のベネディクト・ヘーヴェデス選手(左)とアルジェリア代表のサフィル・タイデル選手は2月29日の閏日生まれ。
スポーツにおいて、誕生日の日にちはとても重要な役割を担います。特に小さな頃は、早生まれか遅生まれかによって同じ学年でも身体的(フィジカル)な優劣が出やすいもので、良いパフォーマンスを発揮する子どもはより多くコーチなどから注目されることになるので、早生まれの子どもが有利といわれたりします。そして、FIFAは「国際試合の年齢基準は1月1日」というルールを設けており、年齢制限の設けられるアンダー世代の代表試合やオリンピックの試合ではこのルールを基に選手の参加可否が決められるので、サッカー選手における早生まれというのは年明けに生まれた人のことを、遅生まれというのは年末に生まれた人のことを指すこととなるわけです。
2006年には偏屈な経済学者として評判のSteven Levitt氏とStephen Dubner氏が、ワールドカップには早生まれの選手が多すぎると指摘していましたが、他の科学者が実際に2006年ワールドカップの参加選手を調査したところ、そのような結果は出ませんでした。しかし、2014年大会の参加者の誕生月別の内訳で、最も選手の数が多い月は、1月(71人)、2月(77人)、3月(68人)、5月(72人)の4つで、最も少ないのは8月(57人)、10月(46人)、11月(49人)、12月(51人)の4つとなっています。全参加選手の736人を12の月に平等に分ければひと月平均は61人であり、2010年のワールドカップでも2014年時と似たデータが出ているとのことなので、「ワールドカップには早生まれの選手が多い」という仮説はあながち間違いでもないのかもしれません。
なお、「誕生日のパラドックス」では23人が集まれば同じ誕生日の組み合わせが出てくるとのことですが、「自分と同じ誕生日の人が現れる確率が50%を超えるのには何人必要か」かということになると253人の人がいなければいけない計算になります。
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