高コレステロールで体重の半分が脂肪という状態でもホッキョクグマが生きていられるのはなぜか

By Amanda Graham

北極圏に生息するホッキョクグマ(シロクマ)はヒグマと共通の祖先を持つ熊の一種ですが、寒冷地で生息するために進化しており、保温性の高い毛皮と体重の50%もの割合を占める分厚い脂肪を蓄えています。人間の場合は脂肪を蓄えすぎると肥満・高コレステロール状態になり、心臓病などのリスクが高まりますが、なぜホッキョクグマはこんなに脂肪を蓄えても心臓病にならずにいられるのか、その答えらしきものが研究で明らかになってきました。

Population Genomics Reveal Recent Speciation and Rapid Evolutionary Adaptation in Polar Bears: Cell
http://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(14)00488-7


Polar bear evolved to survive being a heart attack waiting to happen | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2014/05/polar-bear-evolved-to-survive-being-a-heart-attack-waiting-to-happen/

ホッキョクグマはヒグマやパンダと共通の祖先を持つ種ですが、脂肪を大量に蓄えることは心臓への負荷が強烈なため、ホッキョクグマにはできても近縁種のヒグマやパンダにはできません。これはホッキョクグマが寒冷地に適応するために進化した結果として得た力の1つです。

2010年にペンシルベニア大学の研究チームが「ホッキョクグマとヒグマが分岐したのは約15万年前」という論文を発表、2012年には分岐は60万年前だったとする論文が発表されて、さらに一部の痕跡から分岐したのはさらに古い100万年前だったという見方も存在していますが、今回の研究では、ホッキョクグマとヒグマの分岐は34万3000年前から47万9000年前の範囲だと推測しています。


ホッキョクグマの祖先は50万年前、Waalianと呼ばれている間氷期に南グリーンランドの森林地帯に生息していたと考えられています。47万年前ごろにギュンツ氷期が訪れて氷河が再び成長をはじめ、一部のグループが北極圏に取り残されてしまいます。


このグループは、約11万年前までに、氷点下に順応するために海洋食を始め、太陽光を遮らない白い毛皮、水泳のための広い足、細長い頭の形という、現在のホッキョクグマの特徴を獲得し、急速な進化を遂げています。

By Valerie

獲得した特徴の中でも特にヒグマなどと異なっている点は、コレステロール代謝に関する遺伝子にあります。同一の祖先を持つにもかかわらず、ヒグマやパンダはコレステロール代謝に関する遺伝子には変化が起きませんでした。しかし、ホッキョクグマだけは遺伝子に強い正の選択が働きました。

遺伝子に強い選択が働いた証拠は悪玉コレステロールとも呼ばれるLDLを変換(エンコード)するApoB遺伝子に見られます。選択が働いた16の遺伝子のうち、9つは心臓の血管の成長や維持に関するものでした。研究者は、当時のホッキョクグマの世代交代はだいたい11年サイクルと仮定して、これらの進化が2万世代未満に行われたと見ており、大型ほ乳類の進化としては極めて短時間に行われたものだといえるそうです。

論文では、アザラシなどを中心とした高脂肪食を摂ることで人間よりも高コレステロール状態にあるホッキョクグマが、体重の大半が脂肪という状態になっても心臓病になることなく長生きしている理由について、ApoB遺伝子の機能的な変化によって説明することが可能かもしれないと締めくくっています。さらなる研究により、心臓病や高コレステロール血症への対策に役立つ知見が得られることを期待したいところです。

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in サイエンス,  生き物, Posted by darkhorse_log