なぜニュースサイトの記者は記事へのアクセス数を知るべきではないのか?
By Blue Fountain Media
インターネットサイトではどのページにどれだけのアクセスがあったのかというデータを細かく調べることが可能です。そのため、オンラインニュースサイトの記事でも当たっている記事と当たっていない記事が一目瞭然なわけですが、記事を作る人間がこのページビュー(PV)のデータを見るべきでないという方針を採るサイトが少なからず存在するようです。
No Analytics for You: News Sites Grapple With Who Can See Data - AJR.org
http://ajr.org/2014/03/19/analytics-news-sites-grapple-can-see-data/
記事がヒットしているかどうかを示す指標としてPVは重要な要素です。PVと記事内容の善し悪しが完全に一致することはないとしても、PVの多い記事が人気のある記事という傾向にあることは疑いのないところです。であるならば、PVの「稼げる」記事を書くことは、ニュースサイトの記者が求められる重要な課題となるのですが、「記者・編集者がPVの情報を与えられるべきかどうか」については賛否両論があると言います。
例えばテクノロジーニュースサイトとして月間890万人のユニークユーザーを抱えるThe Vergeは「記者にPVのデータを知らせない」という方針を採っています。The Vergeで働く事になったラッセル・ブランダム記者は、前職のニュースサイトで働いていたときにはPVのデータを知ることは当たり前だったため、PVを尋ねても教えてもらえないThe Vergeの方針を知らされたときに非常に驚いたと話しています。
By Blue Fountain Media
The Vergeがなぜ記者・編集者にPVを知らせないかについて、ニレイ・パーテル編集長は、「The Vergeでは、記者に『流行なもの』だけでなく『大切だと感じること』について記事を作成して欲しいのです。そのため、詳細なPVについてあえて書き手に伝えないという方針を採っています」と話しています。パーテル編集長によると、Google Analyticsのダッシュボードにアクセスしてあらゆる統計データを見ることができるのは一部の上級編集部員に限られており、また、読者がどの記事をクリックしているのかについてのリアルタイムデータを提供するソフトChartbeatの利用は一般的に禁止されているとのこと。
The Vergeでは個別記事のPVを知ることはできず、明らかにされるのは月間のアクセス数の合計だけとのことで、「もし月間PVの記録を更新した場合には、記者全員が記録更新の栄誉を共有します」とパーテル編集長は述べています。なお、パーテル編集長によると、記者はPVをまったく知ることができない状況を最初は不快に感じ、中には独自に分析を試みる者もいるものの、時間が経つにつれて方針を受け入れられるようになるとのこと。ブランダム記者も「もしPVについての詳細なデータを知ることができたなら、解析結果を眺めることに多くの時間を費やしてしまうでしょう」と話しており、PVデータを知らされていないおかげで、自分が書く記事について考えるための時間を多く持つことができたそうです。
By Jacob Bøtter
記者にPVのデータを与えないというThe Vergeの方針は、PVのデータを与えることでかえってサイトへのアクセス数が減少すると考えているからだとのこと。つまり、記者がPVのデータを知らされることでより多くのPVが得られる記事ばかりを作成するといった目先の結果を追い求めるようになると記事の質が落ちてしまい、結果的にサイトへのアクセスが先細っていくはずだとThe Vergeは考えています。パーテル編集長は「The Vergeの読者は、記事が知的で格調高いため、質の高い記事があるために私たちのサイトを訪れたいと思うのです。『知的さ』をPVで測定できるとは思いません」と語っています。
「PVデータを記者は一切知るべきではない」というThe Vergeの方針は極端ですが、PVに頼り過ぎるのは良くないと考えるニュースメディアは他にもあります。Salonでは、記者がPVの解析データを閲覧することを基本的には認めていますが、データは1週間ごとのアクセス数のみでかつ求められた場合にしか開示しないという運用を採っています。Salonのデービッド・デーリー編集長は、「その瞬間、瞬間のアクセス数を追い求めることが素晴らしいことだとは思いません」と話しています。
By Search Engine People Blog
また、ロサンゼルスタイムズのオンラインサイトでは報道部の予算会議では前日のPVの分析を行っているそうで、サイト責任者のジミー・オア氏によると、「私たちは解析結果を受け入れる必要があります。アクセス数というデータは、読者について、読者が求めているものについて私たちに教えてくれるからです」とPVデータの重要性は認めつつも、「PVはゴールではないし、すべてでもない」とデータ偏重主義を否定しています。
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