1万時間勉強するより効果的な学習方法とは?

By Hartwig HKD

1つの物事を学習・習得するには、一心に同じ内容を反復することでしっかりと覚えられると考えられていますが、同じことを1万時間勉強するような一点集中型の学習方法よりも、さらに短時間でしっかりと覚えられる効果的な学習方法が、研究によって明らかになりました。

Ditch the 10,000 hour rule! Why Malcolm Gladwell’s famous advice falls short - Salon.com
http://www.salon.com/2014/04/20/ditch_the_10000_hour_rule_why_malcolm_gladwells_famous_advice_falls_short/


◆集中型学習

By Svein Halvor Halvorsen

ほとんどの人は反復に次ぐ反復が有効な学習手段であると信頼を置いており、学校の教師・スポーツ選手・企業トレーナーから生徒に至るまで浸透しています。ピーター・ブラウン氏らの研究をまとめた研究著書によると、こういった「集中型学習」に対する認識には間違いがあり、素早く効果的に知識を獲得するには、間隔をおいて学習を行う「間隔型学習」が効果的であるとのこと。

一夜漬けに代表されるように、集中型学習は古くから使われている学習方法ですが、学習内容を忘れるスピードが速いことはあまり知られていません。間隔型学習は異なる種類の練習を一定間隔で行うことで、集中型学習より優れた効果を生み、練習量も少なくて済むという利点を持ちます。

◆間隔型学習

By Marc Lagneau

間隔型学習の効果を実証するため、研究者たちは38人の外科研修医の協力を得て実験を実施。研修医たちは、切れた小血管をつなぎ合わせる顕微手術に関する4つのレッスンを受けました。研修医の半分は1日で4つのレッスンを受け、残り半分は1週間で4つのレッスンを間隔を空けて受けています。1か月後、全員が生きたネズミの鼓動している大動脈をつなぎ合わせる実技セッションを実施。前者のグループは全ての手順において低い成績だったばかりか、16%が血管をつなぎ合わせることに失敗しましたが、後者のグループは手順・経過速度・成功数のどれをとっても優れた技量を発揮しました。

間隔型学習が効果的な理由は、新しい知識の意味を学習し、予備知識に接続する、というプロセスを数時間・数日の間隔を置いて行うことで、長期記憶の中に知識が埋め込まれ、記憶痕跡が強化されるため。少し忘れた後に脳内で知識を検索し直すことで、記憶を統合・強化する効果があるとのことです。

◆交互的学習

By Mark Longair

研究によると、メインのスキルを習得するため、別の練習を2つ以上組み合わせて交互に学習する「交互的学習」も、集中型学習より効果的な学習方法とのこと。実例として、2つの大学生グループに、「くさび形・回転楕円面・球状円錐・円錐の半分」のといった幾何学的な個体の容積を求める方法を教えました。1つのグループは個体の形ごとにまとめて練習問題を行わせ、もう一方には同じ練習問題をバラバラに混同して出題。その後すぐ、練習結果を確かめるテストを行ったところ、まとめて教わったグループの平均正解率は89%に達しますが、混同して教わったグループの正解率は60%。しかし、1週間後に同じ学生を集めて最終テストを受けてもらったところ、前者のグループの正解率は20%に落ち込みましたが、後者のグループは63%とほぼ同程度を維持していたとのこと。

10のプロセスを覚えるため、「1を覚えるまで反復して2に移り、段階的に10まで至る……」というのが従来の集中型学習。一方で、「1を数回練習して4に移り、7を数回練習して3に移る……」と、一見すると混乱を起こしそうな交互的学習ですが、長期記憶の保持に効果的であることを示しています。

◆多様型学習

By Marjon Kruik

新しい学習方法の研究のため、8歳の子どもたちに体育館でビーンバッグ(お手玉)をバケツに投げ入れる練習を実施しました。子どもたちをA・Bと半分ずつのグループに分割し、Aグループは3フィート(約91cm)先に置いたバケツで練習を行い、Bグループの子どもたちには、2フィート(約61cm)と4フィート(約1.2m)と異なる位置にバケツで練習を行ってもらいました。3か月後、全ての子どもたちに3フィート先のバケツにビーンバッグを投げ入れるテストを実施してみると、最も成績が良かったのは3フィートのバケツで練習していない、Bグループの子どもたちだったという結果が出たとのこと。

この実験結果は、さまざまな練習によって運動神経が熟達したためと考えられましたが、研究を進めるにつれて、異なる条件の練習を複数行うことで1つの状況を成功させるという「多様型学習」は、認識学習にも当てはまることを示しています。異なる条件による練習が脳の幅広い領域を活性化していることは、神経画像検査の研究でも判明しているとのこと。多用型学習は、異なる角度からの学習を取り入れることにより、学習がコード化されて知力が増加し、さまざまな状況に適応できる柔軟な表現力を獲得できるため、と研究チームは推察しています。

◆フットボールチームが実践している新学習方法


スキルを習得するには、がむしゃらに同じことを繰り返すよりも、間隔を空けてさまざまな練習を組み合わせて行うことが効果的、ということが上記の研究によって判明しています。そんな複雑に見える学習モデルを、ジョージア大学のフットボールチーム「ブルドッグ・フットボール」を率いるコーチのヴィンス・ドゥーリ氏が古くから実践しているとのこと。その練習方法は、フィールド上で個々に割り当てられたポジションの動きを正確に繰り返させることから始まり、全体が規則正しく動けるまで繰り返します。その間、選手たちは自分の役割をプレイしながらも、ブロッキング・タックル・ボールキャッチなどの基礎的スキルを最高レベルで維持する必要があります。

基礎練習の後はポジションごとに小さなグループに分かれて練習が行われ、同じことの反復に退屈しないために、キッキングゲームの練習を織り交ぜたり、同じ練習でも相手が行うことを変えさせたりと工夫しています。試合形式の練習は毎週木曜日に1度しか行わず、さまざまなプレイを練習します。この時、普段の練習が精神的・肉体的リハーサルとなって全速力のパフォーマンスを発揮できるとのこと。

このように新たに明らかになった効果的な学習方法が、ドゥーリ氏によって実戦的に取り入れられたジョージア大学のチームは、1964年~1988年の間で201勝77敗10引き分けという好成績を獲得。6度のタイトルと1度のナショナル・チャンピオンシップ優勝を勝ち取っています。

つまり、普段の勉強や学習に効果を感じられない時は、「間隔を空ける」「いろいろな分野を組み合わせて学習する」ということを念頭におけば効率的にスキルを習得できるというわけです。なお、これらの研究をまとめたピーター・ブラウン氏らの研究著書「Make It Stick: The Science of Successful Learning」はAmazon.co.jpでも購入可能。記事執筆時点の価格は2621円です。

Amazon.co.jp: Make It Stick: The Science of Successful Learning: Peter C. Brown, Henry L. Roediger III, Mark A. McDaniel: 洋書

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in サイエンス,  メモ, Posted by logw_ny