慢性的な睡眠不足が脳の神経にダメージを与えていることが明らかに
By Daniel Guimarães
多忙で十分に睡眠時間がとれていない生活を送っていて、休日にたっぷりと眠ることで睡眠不足を解消する、という人は多く存在します。Penn Medicineの研究によると、慢性的な睡眠不足は、「寝だめ」で解消できないだけではなく、脳細胞に不可逆の損傷を与えているということが判明しました。
Penn Medicine Researchers Show How Lost Sleep Leads to Lost Neurons
http://www.uphs.upenn.edu/news/News_Releases/2014/03/veasey/
多くの人々は睡眠不足が集中力や認識能力の低下を招くことを知っていますが、勤務形態によってはどうしても睡眠不足は避けられないもの。シフト勤務で睡眠不足になりやすい人たちが共通して行う解決策は、週末にまとめて「寝だめ」をすること。しかしThe Journal of Neuroscienceで公表されたPenn Medicineの研究によると、慢性的な睡眠不足は以前考えられていたよりも深刻な問題を含んでおり、脳細胞に対して元に戻らないダメージを与えることが明らかになりました。
「一般的に睡眠不足によって認識力が低下しても、週末などにたっぷりと睡眠をとることで全快すると考えられていますが、複数の研究によると、睡眠不足によって傷ついた脳は、3日間の代替睡眠をとっても集中力や認識力が標準レベルまで回復することがありません」と論文の著者であるシグリット・ビージー博士は語っています。マウスを使った睡眠不足の実験によって、覚醒状態が長時間続くことでニューロンが損傷・損失することが証明されており、認識能力に影響を与えていることが証明されています。
By Life Mental Health
シフト勤務者の通常・短い睡眠不足・慢性的睡眠不足のパターンをモデル化した状態をハツカネズミで再現して観察したところ、青斑核がミトコンドリアのエネルギー生産や酸化還元反応、代謝からニューロンを保護するのに重要な働きをするSirT3を調節することが判明。短期睡眠不足においてSirT3は同化作用の恒常性を維持するのに不可欠ですが、慢性的な睡眠不足ではSirT3の応答が見られないとのこと。
シフト勤務者の数日間の睡眠パターンを観察したところ、ハツカネズミの中の青斑核はSirT3の縮小を示し始め、細胞死の割合は25%まで増加。ビージー博士は「これは睡眠不足によってニューロンが損傷することが判明した初めての研究結果です」と話します。今後、人間でも同様の減少が現われるかどうかを検証し、SirT3に焦点を当てて実験を行っていくとのこと。「もしニューロンを不眠による損傷から保護することができれば、何百万人というシフト勤務労働者に対する治療方針を打ち立てることができます」と語るビージー博士。
By Sherman Geronimo-Tan
また、マウスの実験によって睡眠不足が青斑核に影響を与えるだけでなく、アルツハイマー病・パーキンソン病のような神経変性疾患を潜在的に加速していることも証明されているとのこと。現段階ではどちらもマウスの反応であるため、研究所では神経変性病に影響を与えているという点を証明するために亡くなったシフト勤務労働者を検死することを計画しています。
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