スパイウェア入りの「Tor Browser」がなぜ今でもApp Storeからインストール可能なのか？

Tor関連アプリでランキングの上位に入ってくる「Tor Browser」は、アドウェアやスパイウェアの混入した悪質なアプリであるにも関わらず、リリースされてから4か月以上が経過した現在も、App Storeからインストール可能となっています。

Fake Tor browser for iOS laced with adware, spyware, members warn | Ars Technica
http://arstechnica.com/security/2014/03/fake-tor-browser-for-ios-laced-with-adware-spyware-members-warn/

Tor Browserがアドウェアやスパイウェアを含んだ悪意のあるアプリだと判明したのは約3か月前のことで、「AppleのApp StoreにあるTor Browserは偽物です」というタイトルの報告がTor公式サイトに寄せられたことで発覚しました。この報告を行ったのは、これまで多くのTor関連サービスの発展に貢献してきた「phobos」というユーザーで、12月26日にAppleにこのアプリの存在を報告しています。

しかし、通知から3か月以上が経過した現在もTor BrowserはApp Storeから削除されておらず、インストール可能なままです。

iTunes の App Store で配信中の iPhone、iPod touch、iPad 用 Tor Browser
https://itunes.apple.com/jp/app/tor-browser/id712805884

この事態を報じているArs Technicaは、「Tor Browserに何らかのマルウェアが混在しているのかどうかを確かめる術はなかったが、この出来事はAppleのアプリ審査基準の不透明さを強調することになっている」と記述しています。

Tor Browserが悪質なアプリであることを発見したphobosさんは、2013年12月26日にTor Browserの削除依頼を出してから、これまで数回の削除依頼メールを送信しているそうです。さらに他のユーザーはAppleでセキュリティーマネージャーを務めるWindow Snyder氏と、コンピュータセキュリティの専門家でBlackphoneの共同創業者でもあるJon Callas氏宛に、このTor Browserについて記した郵便を送って直訴したそうです。

しかし、現在もApp StoreからTor Browserをインストールすることは可能。

App Storeにて「tor 」と入力すれば1番上にTor Browserが表示されます。

AppleはこれまでApp Storeに並ぶアプリの審査方法について詳細を明かしたことはありませんが、App StoreはGoogle Playと比較すると欠陥アプリなどの報告数は圧倒的に少なく、審査方法はGoogleのものよりもはるかに厳しいであろうことがうかがい知れます。このことからAppleファンや批評家たちから「walled garden」と呼ばれるようになったわけですが、いくら審査方法が厳しかろうとも「削除要請の届いたアプリ」を3か月以上も放置し、これについての説明は一切ないというのは不信感の募る対応です。

しかし、幸運にもTor Browserのダウンロード数はそれほど多くないようで、インストールしたユーザーの中で深刻な被害に遭っている、というユーザーもいないようです。