サイエンス

3人の親からDNAを受け継ぐ子どもを生み出す技術の問題点とは?

by Sergiu Bacioiu

アメリカ食品医薬品局(FDA)が今週に入って「3人の人間からDNAを受け継いだ子どもを生み出す処置」についての討議を始めています。賛成派の意見としては「3人の人間からDNAをもらうことで病気を継承するリスクが減る」という点が挙げられていますが、他方で、反対派からはデザイナーベビーの動きを加速化させるとして倫理上の問題点が指摘されています。

FDA Weighs Risks of 3-Person Embryo Fertilization - ABC News
http://abcnews.go.com/Health/wireStory/fda-weighs-risks-person-embryo-fertilization-22647525?singlePage=true

「3人の親を持つ子ども」については、両親ともう1匹のメスを使った動物実験がすでに行われており、3匹の親から生まれた子どもは視力が弱かったり内臓に欠陥がある、といった問題もなく今のところ至って健康です。しかし、全面的に実験が正しく評価されるためには長い月日が必要であるとして、研究者たちは生まれた子どもたちの経過を観察しています。ミシガン州立大学のKeith Latham博士によると、すべての実験が終わるのは数十年後になるとのこと。

FDAが今週に入って会議を開き専門家に意見を求めたところ、人体を使ったDNAの交換は技術的にも倫理的にも未知のもので、このまま放っておくとデザイナーベビーが作られる恐れがあることから、棄権者を除く半数以上が取り締まりを行うべきだと主張しました。

by Polygon Medical Animation

デザイナーベビーとは受精卵の段階で遺伝子操作を行うことによって、目の色や身長、知性などを親が望む形でカスタマイズして作られる子どもを言い、少し前まではフィクションの世界の話だと考えられていたのですが、今では現実の技術となりつつあります。

また倫理的な面からFDAに取り締まりを求める声の他に「ドイツやフランスを含む40カ国では将来の子どもに対して遺伝子操作をすることが禁止されており、薬や医療機器を管轄とするFDAが実験を認めるのはおかしい」と疑問視する声も上がりました。

会議には遺伝子組み換え実験を行うグループも参加しており、ポーランドにあるオレゴン健康科学大学の科学者Shoukhrat Mitalipovさん率いるチームもその一員。チームは独自の技術を使ってミトコンドリア内の欠陥があるDNAを置き換え健康なサルを生み出すという実験に成功しています。アメリカでは4000人もの子どもがミトコンドリアの変質を原因に親の病気を遺伝しており、実験が実用段階に入れば、より多くの子どもが病気を避けられると研究チームは考えています。

by Barts Cancer Institute

しかし「ミトコンドリアを原因とする病気にはさまざまな側面があり、まだ本当には理解されていない」とブラウン大学のKatharine Wenstrom博士。「我々は実験対象となっているサルやハツカネズミの生涯をしっかりと調査して、注意深く技術を発展させていかなければいけません」と言葉を続けました。

ロボットや宇宙旅行・空飛ぶ車など、これまでは物語の中だけだった技術が現実のものとなった事例はたくさんありますが、中国ではクローン豚を大量生産する世界最大の「クローン工場」が生まれるなど、必ずしもポジティブな側面ばかりがあるというわけではなく、倫理的・技術的に解決すべき問題も多く残されています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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