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半年間無名だったのに突然爆発的大ヒットで1日500万円を得たが消滅した「Flappy Bird」とは?そして人気絶頂でアプリを削除した作者へのインタビュー


by Desiree Catani

2013年末からヒットし始め、2014年の1月には1日5500件以上ものレビューが投稿されるようになった人気モバイルゲーム「Flappy Bird」は、2月8日に開発者が「これ以上もう堪えられない」とTwitter上に投稿し、22時間後にApp StoreとGoogle Playからアプリが削除されるに至りました。リリースから半年間、まったく見向きもされなかったアプリが爆発的にヒットした理由とは何か?そしてなぜアプリは削除されるに至ったのか?ということについて、2月11日に公開されたForbesの独占インタビューも含め、まとめました。

Exclusive: Flappy Bird Creator Dong Nguyen Says App 'Gone Forever' Because It Was 'An Addictive Product' - Forbes
http://www.forbes.com/sites/lananhnguyen/2014/02/11/exclusive-flappy-bird-creator-dong-nguyen-says-app-gone-forever-because-it-was-an-addictive-product/

Flappy Birdアプリのプレイ画面は以下のような感じ。どことなく懐かしい雰囲気です。


Flappy Birdは画面に登場する鳥をタップして障害物である土管をくぐっていくという非常にシンプルなゲーム。宙に鳥が浮いた状態からゲームがスタートするのですが、タップをしないと鳥はあっという間に地面に墜落してゲームオーバーとなり、鳥がちょっとでも土管にぶつかってもゲームオーバーで、土管を1つくぐり抜ける度に1ポイントが加算されていくのですが、10点にさえ到達できない人が多発するという簡単そうに見えて難易度が超絶に高いゲームでした。

アプリのプレイ動画もYouTube上にアップロードされており、どんな感じのゲームなのかがよく分かります。

海外で大人気の無料アプリ!激ムズ鳥ゲー「フラッピーバード」やってみた! / Flappy Birds - YouTube


Flappy Birdは2013年の5月にリリースされ、iOS 7に合わせて9月にアップデート。しばらくは無名の状態が続いたのですが、2013年の10月末に徐々にプレイされ始め、2014年の2月5日にはアプリのダウンロード回数が5000万回を突破し、App Storeには4万7000件以上ものレビューが投稿されました。


一カ月近くApp StoreとGoogle Playのトップに君臨したFlappy Birdを開発したのはベトナム在住のDong Nguyenさん。TechCrunchの伝えるところによるとFlappy Birdのプログラミングに要した時間は2~3日程度で、プログラミング以外の要素は他のプロダクトで利用したものを再利用したとのこと。またNguyenさんはThe Vergeのインタビューに対し、アプリの広告料で平均1日5万ドル(約510万円)の収入があったと語っています。

Nguyenさんはアプリがヒットした理由について「幸運だった」としつつも、2月5日の時点で「Flappy Birdが人気の理由は今日のゲームとは違い、人と競いあうための非常にいいゲームだったこと」だと語っており、「Flappy Birdはシンプルなのですが、高いスコアをたたき出すためには腕を上げる必要があり、子どもたちがクラスメイトたちと競いやすい」ということも人気に関係していると考えていました。一方で、子どもたちが競いあうだけでここまでアプリの人気が爆発するのか、という点で疑問の声も上がっていました。

特別なプロモーションを行っていないゲームが突如として大ヒットするという珍しい事態に、「なぜFlappy Birdはこんなに人気なのか?」という分析があちこちで行われ、「余りに難しすぎて人に教えたくなる」ということや「Flappy Birdのレビューを書くのがブームになっている」ということも指摘されています。


この点に関して、Flappy Bird人気の経緯を数字で分析をする人も出てきました。

Flappy Bird by the Numbers
http://zachwill.com/flappy-bird/

分析を行ったzachwillさんによると、Flappy Birdは全く人気のなかった6カ月間を過ごした後、12月末から突然、日に20件ほどのレビューを得るようになります。そして1月9日、1日に90件ものレビューが投稿されるという出来事が起こり、同時にアプリは何千回もダウンロードされるようになったのです。Flappy Birdの勢いはその後も留まらず、1月12日にはその2倍、17日にはさらにレビューの投稿数が倍増し、18日には日に600件以上、19日には680件以上ものレビューが投稿されました。


20日を過ぎると勢いはいったん落ち着き始めますが、それでも日に600件以上ものレビューが投稿されていました。そして1月22日になるとレビューの数は「1時間」に100件を初めて突破し、1日トータルは800件以上。ここからもどんどんレビュー数は増え、24日のトータルレビュー数は1100件超えで、1月31日には1日5500件、1時間に630件ものレビュー数をたたき出します。

そしてリリースから半年以上誰からも見向きもされなかったアプリは、約1カ月の間に爆発的な人気を得て、2月1日、日に6500件ものレビュー数を得ることになったのです。

そもそもzachwillさんが6万8000件ものFlappy Birdのレビュー・データをダウンロード&分析しようと思ったのは、そこにボットが関わった証拠があるだろうと考えていたのですが、フタを開けて見るとレビューの中にはFlappy Birdの成功に関係するものは殆どなかったとのこと。12月末に突如として20件のレビューが行われていたことには疑問があるものの、その他は1月9日を皮切りとして、小さな雪玉が雪だるまになるようにして評判が広がっていったという事実があるだけでした。

しかし、2月8日、NguyenさんはTwitter上で「『Flappy Bird』は私のゲームの中で最も成功したものですが、私のシンプルな生活をめちゃくちゃにしました。だから私はこのゲームが嫌いです」と発言。


そして翌日、「もうこれ以上は堪えられない」として22時間以内にFlappy Birdを取り下げる決意をしました。


ゲームの取り下げは何か法律上の問題が起こったわけではなく「ただ、もうこのゲームを巡る騒ぎに対応できなくなった」とのこと。


Flappy Birdは既存の作品からグラフィックスを盗んでいると指摘されたり、土管でつぶして​Flappy Birdのキャラクターである鳥を殺そうというゲームまで作られており、ゲームの反響が大きい分、批判も見られていました。

​Take Out Your Anger At Flappy Bird By Murdering It
http://kotaku.com/take-out-your-anger-at-flappy-bird-by-murdering-it-1516766863



TwitterのフォロワーからPR会社にゲームを売ってはどうか?という提案もされていましたが、「PR会社にゲームを売ってしまえば、私はインディーズのゲームメーカーではなくなってしまう」と売却はしない考えを明らかにしていました。

これに対し、「ツイートはダウンロードをさらに増やすための策略であり、Nguyenさんはツイートによってダウンロードが急増した後、『土壇場の心変り』をしてさらにナンバー1の座を安泰にしようとしている」というコメントも多く見られましたが、22時間後、本当にゲームはApp StoreとGoogle Playから削除され、NguyenさんのTwitterタイムラインには「それでも私はゲームを作り続ける」という旨の投稿だけが残されました。


しかし、Flappy Birdの影響はアプリが削除されただけでは収まりませんでした。というのも、Flappy Birdが各ゲームストアから姿を消した後にiOS App Storeのランキングトップに君臨したのがFlappy BirdsにそっくりなIronpantsというゲームだったのです。

Ironpants on the App Store on iTunes
https://itunes.apple.com/us/app/ironpants/id801727538



2つのゲームのプレイ画面を比較すると以下のような感じ。プレイ方法はほぼ同じで、鳥のキャラクターがスーパーヒーローとなり、土管が木の箱に変化したのが大きな相違点。またTechCrunchによると、Flappy Birdよりも「広告がずっと目障り」とのこと。


そして、Nguyenさん以外の誰かの手によってFlappy BirdのHTML5があちこちで作られます。これによってアプリがなくともブラウザ上でFlappy Birdをプレイすることが可能になりました。

Flappy Bird HTML5 Game #flappybird
http://uralozden.com/flappy/



Flappy Bird
http://freeflappybird.org/



オープンソース版まであります。

Clumsy Bird
http://ellisonleao.github.io/clumsy-bird/



ソースコードはGitHubで公開されています。

Clumsy Bird
http://ellisonleao.github.io/clumsy-bird/

さらに、Flappy BirdがインストールされたiPhoneがネットオークションサイトのeBayに次々と出品され、数万円から高額のものでは約1000万円という冗談のような値がつけられているものもありましたが、eBayのポリシーに違反するとして結局は出品が取り下げられていました。

Thousands flock to eBay to sell iPhones with Flappy Bird installed [updated] | Ars Technica
http://arstechnica.com/gaming/2014/02/thousands-flock-to-ebay-to-sell-iphones-with-flappy-bird-installed/



一連の騒動で一気に世界中から注目を集めることとなったゲーム開発者のNguyenさんは、あまりメディアに顔を出さなかったのですが、11日、Forbesのインタビューに次のように答えています。

Exclusive: Flappy Bird Creator Dong Nguyen Says App 'Gone Forever' Because It Was 'An Addictive Product' - Forbes
http://www.forbes.com/sites/lananhnguyen/2014/02/11/exclusive-flappy-bird-creator-dong-nguyen-says-app-gone-forever-because-it-was-an-addictive-product/


Nguyenさんによると、Flappy Birdはほんの数分、ユーザーがリラックスしている時に遊べるゲームとして開発されたものだったのですが、予想外に依存性のあるゲームとなってしまったため問題が起こり、問題を解決するための最善の方法はゲームを取り下げるしかなかったとのこと。The Vergeが1日に約510万円もの広告料を得ていると報道したことに関しては「正確な数字は分かりませんが、とにかく高額だった」と答えています。

29歳の短髪の青年はForbesのインタビューに約45分間答え、何本かタバコを消費しながら、時折紙にサルの落書きをしていたとのこと。

スーパーマリオブラザーズにゲームが似ている、ということに対しては「偶然の一致」と返答し、任天堂がNguyenさんに警告を送ったことがアプリを削除した理由である、というウワサについても否定しました。

NguyenさんはFlappy Birdの他にもゲームを開発しており、これはFlappy Birdのヒットと共にランキングのトップ10入りを果たしたのですが、これらのゲームに関しては削除の予定はないとのことです。

Flappy Birdの取り下げを決める際には「以前のように居心地のよい生活が送れなくなってしまった」ということが決め手になったとNguyenさんは言います。眠れない日々が続いていたため、この数日インターネットから解放され、ようやく眠りにつけたそうです。

「Flappy Birdが失敗だったとは思いません。通過点でした」と語ったNguyenさんは、その後「Flappy Birdの成功を受けて自信が持てたし、今はやりたいことを何でもできる自由がある」と続けました。また数々のコピーゲームに対してNguyenさんが法的な措置を取る予定はなく、Ironpantsに対して「プレイしてみたけど、いいゲームだったよ」と語りました。

そしてFlappy Birdが取り下げられて残念に思っているユーザーに対して伝えたいことはあるか?と尋ねられると「私のゲームで遊んでくれて本当に感謝しています」と簡潔な答えを返したのでした。

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in ソフトウェア,   動画,   ゲーム, Posted by darkhorse_log

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