サイエンス

無料で配布される予定のエイズワクチン「Immunity」がいよいよ臨床試験に突入


データ解析技術を用いてAIDS(エイズ)ワクチンを開発するプロジェクト「Immunity」が、いよいよ臨床試験段階に到達し、2016年の完成を目指してクラウドファンディングによって資金を募集しています。

Immunity Project
https://pledge.immunityproject.org/the-free-hiv-aids-vaccine


HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、病原体から人体を守る働きをする免疫細胞に感染するウイルスで、HIVに感染した結果、免疫機能が低下する免疫不全症は「エイズ(後天性免疫不全症候群)」と呼ばれ、ワクチンの開発が困難な「不治の病」として有名です。

そんなエイズを克服するべく、コンピュータを用いた「データ解析技術」によってHIVワクチンを開発するプロジェクトが「Immunity」です。

Immunity Project Crowdfunding Video - YouTube


Immunityプロジェクトの代表を務めるスタンフォード大学のリード・ラブスマン医師。Immunityは、スタンフォード大学、ハーバード大学、MIT、サンフランシスコのベンチャー企業連合による共同プロジェクトです。


ラブスマン博士が手にしているのが開発中のHIVワクチン「Immunity」。


ラブスマン博士たちの研究チームが300人に1人の割合でHIVの抗体を持つ人たち(コントローラ)の存在に気づいたことからImmunityの開発がスタートしました。研究によって、コントローラはエイズを発症させないようにHIVを休眠状態にしていることが判明。そこで、ラブスマン博士の研究チームは、コントローラの免疫システムを調べることで、どのような仕組みでHIVを休眠状態にしているのかを分析し、これを模倣することでHIVワクチンを開発しようと試みました。


その際にラブスマン博士が用いたのは、マイクロソフトe-サイエンス研究所が開発したスパムフィルタリングソフトウェアのアルゴリズムでした。ラブスマン博士は、医師であるとともにコンピュータ科学者でもあったため、HIVの遺伝子データとコントローラの免疫システムに関する遺伝的データをコンピュータで分析し、その生体メカニズムをリバースエンジニアリングすることで、HIVワクチンを開発しようとしたのです。


なお、このデータ解析アルゴリズムをマイクロソフトと共同で開発したデービッド・ハッカーマン博士はラブスマン博士とはスタンフォード大学で働く数年来の研究仲間であり、Immunityプロジェクトにも参加しています。

データ解析技術を駆使して開発されたImmunityワクチンのプロトタイプは、すでにハツカネズミを使った動物実験でHIVを休眠させることに成功。その効果が実証されています。


Immunityプロジェクトは、HIV予防啓発活動で知られるUntil There's A Cureと共働し……


Yコンビネーターの支援を受けることにも成功。


2014年11月までにFDAの認可を受け、いよいよ2014年12月にフェーズIの臨床試験を開始する予定です。


世界には3500万人以上のHIV感染者がいて、その70%がアフリカのサハラ砂漠以南で暮らしています。毎日6300人が新たにHIVに感染し、毎日4000人以上の人がエイズで亡くなっています。


Immunityは、冷凍保存が必要ないため簡単にアフリカへ輸送できます。また、恒常的な治療を必要としないワクチンであるHIV治療のために日々の生活を犠牲にする必要はありません。

Immunityプロジェクトは、HIVワクチンを完成させ、これを世界中のHIV感染者に無料で配布する予定です。


2014年12月からいよいよ臨床試験がスタートするImmunityプロジェクトですが、完成までにはさらなる研究・治験・許認可の取得が必要で、それには48万2000ドル(約5億円)の資金が必要となります。


Immunityプロジェクトは、ワクチン開発費用をクラウドファンディング手法によって集める計画で、現在、公式サイトで出資を募集中です。出資は50ドル(約5100円)から可能で、100ドル(約1万円)の出資でImmunityプロジェクトの特設サイトへアクセスできるサポーター認証を与えられ、250ドル(約2万6000円)の出資でImmunityフェローの称号とTシャツがゲットできます。


さらに、1000ドル(約10万3000円)の出資でImmunityプロジェクトのチームメンバーとしての証明書を発行してもらえ、1万ドル(約103万円)の出資でImmunityプロジェクトの研究室へのツアーに招待してもらえ、5万ドル(約515万円)の出資でアメリカ国内に限られるものの、Immunityプロジェクト研究チームに講演を依頼できる権利が与えられ、10万ドル(約1030万円)の出資ではアフリカで行われるフェーズIの臨床試験への参加資格が与えられます。

Immunityプロジェクトの資金調達の期限は2014年3月31日までとなっています。

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in メモ,   サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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