サイエンス

HIVのmRNAワクチンで初の臨床試験がスタート、モデルナの新型コロナワクチン技術を使用


モデルナが提供する新型コロナウイルスワクチンは伝令RNA(mRNA)を利用したmRNAワクチンで、その技術は30年にわたって開発が行われてきたものの、ファイザー製のワクチンと並んで初めて実用化されたmRNAワクチンでもありました。そんなモデルナのmRNAワクチン技術を使ったヒト免疫不全ウイルス(HIV)ワクチンの臨床試験を開始したと、モデルナと国際エイズワクチンイニシアチブ(IAVI)が発表しました。

Moderna - IAVI and Moderna Launch Trial of HIV Vaccine Antigens Delivered Through mRNA Technology
https://investors.modernatx.com/news/news-details/2022/IAVI-and-Moderna-Launch-Trial-of-HIV-Vaccine-Antigens-Delivered-Through-mRNA-Technology/default.aspx

Moderna’s HIV Vaccine Has Officially Begun Human Trials | them.
https://www.them.us/story/hiv-aids-vaccine-human-trials-moderna

HIVは抗体を産生するB細胞を不活化し、免疫システムの要となるT細胞に感染して増殖します。そのため、HIVに感染すると免疫力が極端に弱まってしまい、普段であれば影響を受けないような病原体によってさまざまな感染症を発症する「後天性免疫不全症候群(AIDS、エイズ)」を引き起こします。HIVは免疫システムそのものを破壊するため、従来のワクチン技術の応用は難しいとされており、体内でのウイルスの複製を抑制する抗レトロウイルス療法(ART)が主流となっています。


また、HIV感染を予防する処置として、曝露前予防内服(PrEP)があり、2021年12月にはHIV感染リスクを減らす注射薬「カボテグラビル」がアメリカ食品医薬品局(FDA)によって承認されています。しかし、PrEPはあくまでも投薬療法であり、定期的に薬を飲む必要があります。

世界初の「HIV感染を予防する注射」をFDAが承認 - GIGAZINE


今回臨床試験が行われたワクチンは、新型コロナウイルスワクチンにも使われたモデルナのmRNAワクチン技術が応用されており、mRNAによってHIVの免疫原を高め、HIVによるB細胞の不活化の防止を目的としているとのこと。第I相臨床試験は2021年7月から準備が進められ、被験者は2021年8月に募集されました。そして、Microsoftの共同創設者であるビル・ゲイツ氏が創設したビル&メリンダ・ゲイツ財団による後援の下、2022年1月27日にジョージ・ワシントン大学医学部において、スクリプス研究所と共同で最初のHIVワクチン接種が行われました。

IAVI代表兼CEOであるマーク・ファインバーグ氏は「モデルナのmRNAワクチンプラットフォームを用いてHIVワクチンを設計するという新しい方向性で前進できることに非常に興奮しています。HIVワクチンの探索は長く険しい道でしたが、免疫原やmRNAワクチンプラットフォームといった新しいツールは、緊急に必要とされる効果的なHIVワクチンを迅速に実現できる鍵となるでしょう」とコメントしています。

モデルナのスティーブン・ホージ社長は「IAVIおよびビル&メリンダ・ゲイツ財団と提携して、当社のmRNAワクチン技術をHIVで応用できることを大変うれしく思います。IAVIとスクリプス研究所と共同でこのHIVワクチンプログラムを進めることは、人々の健康を改善するmRNAの可能性を実現するという私たちの使命にとって重要な一歩となると信じています」とコメントしました。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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