音楽ストリーミング「Spotify」はどうやって音楽業界に貢献しているのか?

By Lourenço Fabrino

CDやレコードという物理メディアの販売数は年々減少し、インターネットを通じた音源の入手が一般的になりつつあります。しかし、無料の海賊版を入手する人々も存在するため、音楽業界へ渡るロイヤルティが少なくなり、曲を作ってもアーティストにお金が入らないといった問題も生じています。そんな中、「音楽業界に正しい対価を還元する」という理念を持つ、音楽ストリーミングサービスの「Spotify」が、どのように音楽業界に貢献しているかを説明するウェブサイト「Spotify Explained」をオープンしました。

How is Spotify contributing to the music business?
http://www.spotifyartists.com/spotify-explained/

この数十年の間に、「ラジオで流れたお気に入りの曲を求めてレコード屋へ行って購入」といった音楽の入手方法は激減し、「YouTubeで聞いた音源をiTunesのダウンロードで購入」や、「無料で海賊版を入手」と、物理メディアからデジタルメディアの時代へ移り変わっています。しかし、これらの大部分は、アーティストのためのお金をほとんど作り出していません。


そんな音楽業界の不協和を打破するべく、Spotifyは音楽ファンが合法的にアーティストへのロイヤルティを提供できる有料音楽サービス作りを行っており、これまでにユーザーが支払った金額はアメリカの一般音楽消費層のユーザーが1年間に支払う平均額の2倍以上。


Spotifyのプランは、「Free(無料)」、「Unlimited(4.99ドル/月、パソコンから無制限視聴可能)」、「Premium(9.99ドル/月、全てのデバイスから無制限視聴可能)」の3つ。まず、FreeユーザーとしてSpotifyに誘致することで、海賊版ユーザーやマネタイズされたプラットフォームから遠ざけた上で、無料でも広告収益によって元海賊版ユーザーから、以前よりはるかに大きなロイヤルティを生み出すという仕組み。


FreeユーザーとPremiumユーザーの数は急激に増加。Spotifyのゴールは、「音楽ファンに『アーティストに対価を支払うこと』の意味を実感させて、音楽業界を再成長させる」ことであるとのこと。


2013年、Spotifyは10億ドル(約1000億円)以上の収益をあげており、その中から、アーティストへのロイヤルティとして5億ドル(約513億円)を支払っています。


アメリカの一般音楽消費層が1年間で支払う平均金額が25ドル(約2500円)であるのに対して、無料ユーザーの広告収益と、Premiumユーザーの課金額の合計平均は41ドル(約4200円)。


Spotifyは今のところ、世界32カ国で利用できますが、まだ展開されていない新市場への進出も始められています。


Spotifyがあげる収益の中から、アーティストに渡る分配はなんと全収益の70%。この分配割合からも、Spotifyが音楽業界を再建しようとする姿勢が感じられます。


ロイヤルティの詳細は、「Spotifyの1月の収入」×「アーティストの再生回数をSpotify全体のストリーミング再生回数で割った数」×「レーベルと権利保持者に対する70%の分配」×「アーティストのロイヤリティ割合」=「アーティストへの支払い分」と制定されており、国ごとの法律によって内訳が変わりますが、レーベルとの契約と分割してロイヤルティを算出しているため、アーティストは、レーベルとSpotify双方からのロイヤルティを受け取れる仕組みになっています。


2013年7月に、実際にアーティストに支払われたアルバムごとのロイヤルティは以下。アーティスト名はジャンル名に置換されています。Spotifyは有料ユーザーが増加すると、アーティストへのロイヤルティも増加する仕組みであるため、現在月に3300ドル(約33万円)を受け取っているマイナーアーティストの「Niche Indie Album」でも、有料ユーザーが4000万人超えた場合、ロイヤリティは1万7000ドル(約174万円)になります。


以下は、ほかのストリーミングサービスや、ラジオと比較した100万回再生ごとのロイヤルティの割合を表したもので、Spotifyが最も多くアーティストへ還元される仕組みであることがわかります。現在、Spotifyのユーザーは2400万人で、YouTubeの10億人、iTunesの5億7500万人と比べると、まだ小さなサービスですが、今後の成長により音楽業界への還元はさらに大きくなります。


Spotifyは徹頭徹尾、海賊版の撲滅を掲げており、海賊版より優れたサービスを構築することで、不法なファイル共有にストップをかけた上で合法的に音楽業界へ還元できるように設計されています。Freeアカウントを設けることで海賊版と競合し、無料ユーザーがPremiumアカウントを購入することで音楽業界にとって非常に有益な転換をもたらすことが可能。年齢が若いほど違法な海賊版を使用する傾向がありますが、Spotifyは発足してから5年間で海賊版を使用するユーザーを著しく減少させることができました。


国ごとの、Spotifyを含む有料ストリーミングサービスがもたらした違法ダウンロードや海賊版の減少についての報告書もまとめられています。

スウェーデンの2011年第2半期の音楽ファイルシェア&ダウンロード報告書によると、海賊版の使用は2年間で25%減少。


デンマークのIFPIの研究結果によると、ストリーミングサービスは「海賊キラー」と呼ばれ、ストリーミングサービスのユーザーの48%が、過去に違法ダウンロードの経験を持っていましたが、その内81%は使用をストップしたとのこと。


ノルウェーのIPSOSの報告書によると、2008年には12億の曲が違法コピーされましたが、2012年には2億1000万曲と、ちょうど5分の1に急降下。


Sandvineによるアメリカのグローバルインターネット現象報告書には、P2Pファイルシェアソフトのアカウントからの北アメリカのインターネット・トラフィックは毎日10%以下まで激減しており、その理由としてSpotifyのようなリーズナブルなリアルタイムサービスの豊富な内容が挙げられています。


イギリスのオンライン著作権侵害の報告書によると、デジタル音楽消費者層の4分の3が合法的なサービスを利用しているとのこと。


オランダで行われたSpotifyの「オランダでの冒険」という研究結果によると、海賊行為を行う人口の減少が見られました。


Spotifyに対してはロックバンドのメタリカがSpotifyに楽曲を提供してからセールスが落ち込んだという話や、トム・ヨークが「このビジネス・モデルでは新人アーティストはロクな報酬を貰えない」と指摘したという話も出ていますが、海賊版の減少に一役買っているのは確か。日本ではまだ知名度が低いSpotifyですが、日本向けのウェブサイトも現在準備中で、サービスが提供される日も近いと考えられています。

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in ネットサービス,  メモ, Posted by darkhorse_log