取材

サンドラ・ブロックが孤独に耐えて主役を演じきった映画「ゼロ・グラビティ」の来日記者会見レポート


高度60万メートルで繰り広げられる緊迫のドラマと、その中で必死にもがく人間の姿を描いた映画「ゼロ・グラビティ」の公開が12月13日に迫りました。全米では公開されてすぐにNo.1の成績を挙げ、興行収入は6億ドル(約600億円)を突破しています。12月14日に主役のライアン・ストーン博士を演じたサンドラ・ブロックさんと、監督のアルフォンソ・キュアロンさん、プロデューサーのデイビッド・ヘイマンさんが来日して記者会見を行いました。

映画『ゼロ・グラビティ』オフィシャルサイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/gravity/

都内に設けられた会見会場


登壇者は3名、左からプロデューサーのデイビッド・ヘイマンさん、主演のサンドラ・ブロックさん、アルフォンソ・キュアロン監督。


デイビッド・ヘイマン(以下、ヘイマン):
映画「ゼロ・グラビティ」の製作を担当したデイビッド・ヘイマンです。アルフォンソ・キュアロン監督とともにコ・プロデューサーを担当しました。日本は好きな国の1つで、この映画を持って数年ぶりに戻ってこられたことをうれしく思います。「ゼロ・グラビティ」を抱えて長い旅をしてきましたが、いよいよここが最後の地です。世界中でヒットしているこの作品は、日本の観客の皆さんも思いを共有して感動する作品になっていると思います。


アルフォンソ・キュアロン(以下、監督):
この場にいられること自体が素晴らしいことです。ただただ、「ありがとう」と言いたいです。


サンドラ・ブロック(以下、サンドラ):
言いたいことは2人にみんな言われてしまいました。「ゼロ・グラビティ」を持っての長い旅、最後に日本に来られて、すばらしい最終章になったと思います。私は「ゼロ・グラビティ」のことを愛していて、誇りに思っています。これを携えて日本に来られたことがうれしく、作品への思い入れが強いので、日本のみなさんにもメッセージが伝わればと思っています。作品では、忍耐強く困難に立ち向かう人間の姿が美しく描かれていて、ストーリーは自慢できるものです。ぜひ、みなさんに楽しんでいただきたいです。


フジテレビ 遠藤:
サンドラ・ブロックさんに質問です。作中で、主人公は90分間にわたって孤独な戦いをしていましたが、撮影中のサンドラさん自身はどうでしたか?また、本作でアカデミー主演女優賞を再びという声もありますが、作品に込めた思いは?

サンドラ:
孤独だったかと聞かれると「イエス」です。隣に座っている2人のクレイジーな人たちによって、そういう状態になるよう計らわれていました(笑) でも、それはこの映画を撮るには最適で、理想的な状況でもありました。この2人をはじめとするマッド・サイエンティストたちが特殊な装置を作り出したので、ぶら下げられたり、ロープに繋がれたり、箱の中に入れられたりして、あたかも宇宙にいるかのような状態で撮影することができました。孤独ではありましたが、それだけのものができたと思います。

(小声になって)アカデミー賞はないと思うけど……でも、とても言葉では言い表せないような、一生に一度のものができました。作品は、キュアロン監督の頭の中にあったこれまでにはないようなお話をヘイマンプロデューサーが「作ろう」と決断してできたものです。結果として、とても美しいものになりました。この機会を与えられたことだけでも、賞をもらったような気持ちです。


Q:
IMAXと3Dで見ましたが、いずれも素晴らしかったです。作品はデベロップメント・ヘル(制作地獄=企画がいつまでも進まない)の状態に陥り、ヘイマンプロデューサーは「ハリー・ポッター」シリーズ以降では初の作品となりますが、この作品にそこまでこだわった理由というのは何なのでしょうか、なぜこんなにもこの映画に引きつけられるのでしょうか。ランダムシミュレーターも使われていますが、そのあたりの話があれば。

ヘイマン:
なぜ作品に関わったかというと、キュアロン監督から脚本が送られてきたからで、こだわったのは「キュアロンだから」です。私はキュアロン監督が当代最高の監督であり、映画は監督のメディアだと思っています。プロデューサーとしては、最高の監督と組むことで、最高のものが作れると信じています。送られてきた脚本は、できあがった映画とかなり近いもので、キャストのサンドラやジョージはまだいなかったけれど、何を作りたいのかがすごく明確な脚本で、ワクワクするような、スリルあるものでした。「才能溢れる監督とこの作品を作れるんだ」という、特権的なものを感じました

監督:
シミュレーションというのは、おそらく無重力状態を体感してもらうために、一部で物理的な法則には則らず、宇宙空間でどうものが動くのかを演算しました。たとえば、爆発でデブリがどう生まれてどう散らばるのか、宇宙飛行士がつけている命綱は無重力下だとどう動くのか、といったことです。

Q:
サンドラさんが宇宙船の中で胎児のようなポーズをとったりしていましたが、あれは何かのメタファでしょうか。

監督:
今回の作品で、テクノロジーは、主人公のエモーショナルな旅を描くために使われました。自分たちにとって、重要なことは「旅」を真に迫った形に見せることです。すばらしい演技をしてもらっても、CGなどがぱっとしないと演技の足を引っ張ってしまいます。そのため、手をかけて作り込みました。映画的言語としては、ライアン博士のエモーショナルな旅がはっきりあって、そこに視覚的なメタファが散りばめられています。メタファは彼女の旅と相互に補完し合い、支え合うものだと考えて下さい。メタファはすべて、作品のテーマである逆境と不幸、そしてそこからどう再生するかという可能性を見せるために使われています。この件では、サンドラらと話し合いながら、旅路をどうクリアに見せるか、視覚的メタファを通して伝えられるか、セリフ数を減らせるかを考えていきました。メタファは美しいですが、それ以外の要素も必要な部分が出てきます。どうバランスを取るのかは、密に話し合って進めていきました。


日経ウーマンオンライン 清水:
宇宙空間でのドラマが描かれた驚くべき映画でしたが、中でも主人公が過去の辛い経験を持ちながら、宇宙でサバイバルする姿に感動しました。サンドラさんは、主人公の姿を、どう感じましたか?

サンドラ:
実際、ライアンのような過去を抱えていると考えただけでもあまりいい気分ではありません。でも、そういう悲劇を抱えている人はいっぱいいるので、キャラクターの内面があることで深みが出たと思います。自分のすべてだと思っていた生きがいを失って、喪失感を抱いたままこの人は生きていけるのか、どう戦っていくのか……物語としては、そういう人を描いたほうが興味深いと思いました。でも、撮影が終わると「ライアン」という頭を外して、サンドラの頭に戻ります。そうして、息子と遊べることを幸運だと感じます。美しい物語は喪失感や悲劇を伴い、一生懸命戦う姿が人々を引きつけます。俳優の仕事とは奇妙なものだなと思います。撮影のあいだ、よくない気分だったりもします。でも、このことがセラピーのような効果を生み、自分の中で問題を解決する効果もありました。

監督:
ライアンのバックストーリーはサンドラが出したアイデアで、後から加えたものなんです。

映画パーソナリティ ニシダ(?):
サンドラさんのドレス姿が美しくて圧倒されていますが、作中では宇宙服を身につけています。着用した感想はどうでしたか。また、映像としては目とセリフだけで恐怖を伝えるという制限された状態になりましたが、役者として、挑戦する部分はありましたか?

サンドラ:
この衣装はキュアロン監督が作ったもので、日本に来てまだ一睡もしていないから、みんなが私の顔ではなくドレスに注目するようにと赤を選びました。(会場笑)


監督:
次の機会には、ぼくらも赤にしよう。

サンドラ:
宇宙服はすごく着心地が悪く動きも取れない、本物に近いものでした。宇宙服の中に着る衣装を渡されたときは「これ、本気?下着じゃない?長袖・長パンツのほうがいいんじゃない?」と思ったけれど、今となってはあの衣装に感謝しています。

作品ではロシアの宇宙服とアメリカの宇宙服が出てきますが、いずれも精巧によくできていて、ヘルメットもピッタリと合うんです。手作り・手縫いなので、芸術品といってもいいほどです。……でも、動けないんです。たとえばコメディであれば、体を動かしたり表情を変えたり、とにかく全身の筋肉を使って演技しますが、それがすべてできなくなるんです。マシンの中にいて動けないと、フラストレーションがたまっていきます。目だけの演技というのは、他の何にも頼ることができない状況で、自分が周囲のすべてを感じていなければできないことですよね。


涙を流すとき、目薬なんて使いたくないから、痛みや苦しみはどういうものかを感じとって涙を流し、「いまの撮った!?」って聞いたら、キュアロン監督に「サンディ、もう一度お願い」って言われてフラストレーションがたまることもありました(笑)

でも、監督とプロデューサーは、作品が世に出る前からここまで長い旅に挑み続けてきました。私は技術が追いつくのを待っていただけなので、自分としては永遠にも感じるものだったけれど、2人のものに比べれば大したことないものです。

監督:
でも、僕たちは釣られたりしてないからね(笑)

日本テレビ「ZIP!」ナカムラ:
サンドラさんに。何度も来日しているが、日本について改めて驚いたことはありますか。また、ハリウッドスターが宇宙に行く計画を立てていますが、行く予定はありますか?行ったら何をしたいですか?

サンドラ:
とにかく家に無事帰りたいですね(会場笑)

来日が5回目だと知って、自分でも驚いています。義理の弟が日本人で、彼を連れて家族で来たいと思っていたんですが、それは叶いませんでした。日本文化には感動します、みんな優しくて礼儀正しいので。こういった記者会見の場というと、いつもならオオカミの群れの中に放り込まれたみたいなものなのに、日本ではみんな優しくて敬意を払ってくれますから。……ここから一歩出ると実はみんな邪悪な人なのかもしれないけれど、それはわかりません(笑) 歴史や文化、町など見て回りたいけれど、仕事なので行くことができません。でも、仕事でこうして来られるということも名誉に思っています。

BOOKSTAND 映画部!:
ジョージ・クルーニーさんとは長年の友人で、今回、初めての共演でしたが、どうでしたか?

サンドラ:
もう最悪!(笑) こういうときは本当のことを言った方がいいですよね。「いい人」なんて全部ウソですよ、意地悪だし遅刻するし……っていうのがウソ。こういうことを言うと、ウソの部分だけが一人歩きしてしまって、あとでクルーニーから「何てことを言うんだ!」なんて電話が掛かってくるんですけれど。

ジョージ・クルーニーほど魅力的で輝かしく、そして24時間365日仕事をしている人はいません。休んでいる姿を見たことがありません、監督したり、脚本を書いたり、作品をプロデュースしたり、演技をしたり……しかも、作品作りの中ではいつも私たちを助けようとしてくれて、そのために自分の出番が減ったり、それこそカットされることになったとしても、「映画のために必要ならそれでも構わない」という気持ちで取り組んでくれます。こんな言葉ばっかり並べたくはないですけれど(笑)、みんなが「ジョージ・クルーニーはいい人だ」と思っている、そのイメージ以上に素晴らしい人物なんです。

質疑応答の最後は、この場にはいないもう1人のキャスト、ジョージ・クルーニーの話題で締めくくられました。続いてフォトセッションが行われました。


最初は3人揃ってでしたが、途中でヘイマンさんと監督がなにやら笑いだし……


サンドラ・ブロックさんもこの表情。


そして、ヘイマンさんと監督はそのまま退場。サンドラさんは「私一人なの?」とでも言いたげなアクション。


もちろんプロの女優らしく、きっちりとフォトセッションに応じていました。


アルフォンソ・キュアロン監督とデイビッド・ヘイマンさんへのインタビュー記事も掲載しているので、あわせて読んでみて下さい。

ロボット工学やLEDを映画撮影に取り入れたアルフォンソ・キュアロン監督に「ゼロ・グラビティ」についてインタビュー



「ハリー・ポッター」を支えたデイビッド・ヘイマン氏に「ゼロ・グラビティ」の詳細について聞いてみた


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in 取材,   映画, Posted by logc_nt

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