ドミノ・ピザはいかにして世界最大のピザチェーンになったのか?
製造工程のほとんどを自動化することで大幅な高効率化を実現し、世界で最も規模の大きいピザチェーン店へと成長したドミノ・ピザについて、Business Insiderがドミノ・ピザの工場で働く人たちの声も交えつつ紹介しています。
How Domino's Became The World's Biggest Pizza Chain | Big Business | Business Insider - YouTube
2019年後半から新型コロナウイルスのパンデミックが始まり、2021年初頭までに、アメリカの食品業界では120万人もの労働者が不足するという事態に陥りました。特に倉庫管理や配送の仕事から離れる労働者は過去最高のペースで増えており、ドミノ・ピザも労働者離れに苦しんでいた企業の1つでした。これらの仕事は給与が高いわけでもないのに肉体的につらい仕事だったからです。
そこで、ドミノ・ピザが導入したのがピザ生地を製造する機械でした。ドミノ・ピザが5000万ドル(約78億7000億円)を費やして設立した工場がアメリカのインディアナ州にあります。
この工場では機械がピザ生地を測定して積み上げる作業を行っています。具体的には小麦粉、水、油、塩、砂糖を保管場所から直接ミキシングマシンに投入しており、1日に約8万8000枚分のピザ生地を製造しているとのこと。人間の労働者は一番体力を使う生地の製造を完全に機械に任せ、機械を管理する作業に従事することができます。
工場で働く従業員は「粉を触る代わりにボタンを押す作業が増えました。ただ見守って、ちゃんと動作しているか確認するだけです。9年前はチームメンバーがこれを手作業で行っていました。チームメンバーにとっては非常に負担の大きい作業でしたが、今ではその負担が大幅に軽減され、優秀な人材を惹きつけられるようになりました」と語っています。
ドミノ・ピザは製造だけでなく流通も改善しています。インディアナ州の工場で作られたピザ生地は周辺地域のドミノ・ピザ実店舗に運ばれますが、これまではトラック運転手が運搬と積み下ろしの両方を担う必要があったそうです。しかし、新たに積み下ろし専門の「ピッキングチーム」という人員を設けることで、効率が向上して作業が早くなったといいます。運転手の1人は「店舗への滞在時間が1時間から15分に短縮されました」と語りました。
また、運転手の育成にも力を入れていて、会社の他の部門から従業員を集めて自動車学校に派遣するプログラムを立ち上げてるなどして配送要員の確保にいそしんだそうです。
こうした自動化を試みているのはドミノ・ピザだけではありません。アメリカで事業を展開するファストフードチェーンのホワイト・キャッスルやジャック・イン・ザ・ボックス、KFCなどが実店舗にロボットを配置しており、鶏肉を調理するなどの仕事を任されています。また、AI自動音声でドライブスルーの注文を受け付けるといったところも増えています。
人間の仕事が機械に取って代わられることで「ロボットが人々の仕事を奪うのではないか」という懸念があるのも事実ですが、従業員らは「ロボットができる仕事は、ロボットがやっても問題のない仕事ばかりです。例えば、箱を積み上げる作業は怪我につながる可能性があります。労働者にとって危険だったり単純に退屈だったりする反復作業を自動化することで、従業員は企業内でより良い仕事に就く機会を得ることができます」と語り、そうした取り組みを悪者扱いするべきではないとの考えを示しているそうです。
製造拠点が高性能化を果たす一方で、実店舗ではまだ完全な自動化は進められていません。ピザ生地の形を整えて具材をトッピングし、焼いて提供するのは人間です。ただし、これらはドミノ・ピザの「ハンドトス(手作り)」というスローガンを元に実行されているとのことで、こうした点で機械による作業と手作業のバランスが取られているといます。
従業員の確保と維持、他のデリバリー業者との競争もあり、今後は自動運転による配送も視野に入れているとのことです。
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