視線を合わせないという自閉症の特徴は赤ちゃんの時期から見られることが判明

By Darren Johnson

「他人と視線を合わせない」という自閉症によく見られる特徴は、早い場合には生後2ヶ月から現れていることが判明しました。これまでの自閉症の研究で、ソーシャルスキルトレーニングなどの早期の行動療法により自閉症の子どもの社会性が向上することが分かっていましたが、今回の研究によって、より早期の治療の有効性が指摘されています。

Attention to eyes is present but in decline in 2-6-month-old infants later diagnosed with autism : Nature : Nature Publishing Group
http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature12715.html

Baby's Gaze May Signal Autism, a Study Finds - NYTimes.com
http://well.blogs.nytimes.com/2013/11/06/a-babys-gaze-may-signal-autism-study-finds/

エモリー大学のウォーレン・ジョーンズ博士とマーカス自閉症センター所長であるアミ・クリン博士は、自閉症を発症する子どもは、生後2ヶ月から6ヶ月の間に、徐々に人の目に注意を向けなくなることを発見し、自閉症の兆候が比較的早い段階で現れるという結果をまとめた研究論文をネイチャー誌に掲載しました。

ジョーンズ博士とクリン博士の研究チームは、人の視線をモニターする視線追跡技術を用いて、生後2ヶ月から2歳までの110人の赤ちゃんを長期的に調査しました。実験は、自閉症の兄弟を持つ赤ちゃんのグループと自閉症の親類がいない赤ちゃんのグループに分けられて行われました。これは、自閉症の兄弟がいる赤ちゃんは統計的に20倍、自閉症を発症するリスクが高いことに基づいています。

実験では、赤ちゃんに保育士を演じるフレンドリーな女性のビデオを見せ、赤ちゃんが女性の目・口・身体またはおもちゃなど他の物など何に視線を向けているのかが10度にわたって調べられました。その後、赤ちゃんが3歳になった時点で自閉症かどうかの診断を行い、最終的に、自閉症を発症したと診断された11人を含む男の子36人の視線追跡データから、「視線を人の目に向けないという自閉症の特徴が、生後2ヶ月から6ヶ月のうちに生じること」を突き止めました。なお、女の子は2人しか自閉症を発症しなかったため、研究データとして除外されたということです。

By christina rutz

さらに、実験結果からは、他人の目を見るのを避けるという特徴は、生まれた直後には見られないもので、早い赤ちゃんでは生後2ヶ月頃から徐々にその傾向が高まっていくことが明らかになりました。自閉症診断センター長でありデューク大学教授であるジェラルディン・ドーソン博士は、今回の研究はサンプル数こそ少ないものの、非常に慎重かつ繰り返し行われていることから信頼性が高いと評価し、「赤ちゃんが生まれた直後はいたって正常な反応を示していることから、脳の発育に手がかりを与えるものとして非常に重要な成果です」と話しています。

今回の研究では、後に自閉症を発症する赤ちゃんが、ビデオに映る女性の口に視線を向けること、また女性の身体に注意を持ち続けることも明らかになりました。また、1歳を過ぎる頃には、普通の子どもが興味を持たなくなった物に対してより興味を持つことも分かりました。ドーソン博士は、「赤ちゃんは、人を見ることで、顔の表情や言語、身振りを覚えます。自閉症の赤ちゃんが物に興味を持っており人を見ていないとすれば、学習のチャンスを逃してしまっています」といいます。

By ram reddy

今回の研究成果を受けて、自閉症の専門家たちは、子どもが1歳になる頃までに、自閉症の潜在的特徴を見抜くことができるかもしれないと話します。アメリカ小児学会は、自閉症かどうかの診断を生後18ヶ月から24ヶ月に受けることを推奨していますが、自閉症の子どもの多くは3歳から5歳の間に診断を受けているのが現状であり、今後は、より早い段階での診断の必要性が指摘されています。

ジョーンズ博士を始め自閉症の専門家は、今回の研究によって自閉症の治療をより早い段階から行うことで、症状の発生を抑制できる可能性があると考えおり、より研究が進み自閉症治療に役立てられることが期待されています。なお、ジョーンズ博士は、赤ちゃんの視線追跡は、専門技術と専門知識が必要であり、赤ちゃんがあまり目を合わせてくれないといって心配しないように、と注意を喚起しています。