オープンソースで超ローコストな「卓上CTスキャン」の開発が進行中

携帯電話やロボット義手、さらには家具を自分で作れたりフランスの憲兵隊がubuntuを導入するなど、世の中に広まり続けているオープンソースですが、こんどは医療機器である「CTスキャナ」を卓上サイズで、しかも非常に安価に作成するという開発が進められています。
Towards an inexpensive open-source desktop CT scanner | the Tricorder project
http://www.tricorderproject.org/blog/towards-an-inexpensive-open-source-desktop-ct-scanner/

「大学院で受けていた講義の中で一番のお気に入りは、脳のイメージング(画像化)についての講義でした」と語る、今回のプロジェクトの制作者であるピーターさん。大学院で毎週のように新しい知識を身につけていった先にたどり着いたのがMRI(Magnetic Resonance Imager:磁気共鳴断層撮影装置)でした。その後、拡散テンソル法やスピン標識法を初めとするさまざまな方法論と技術を学んでいった末に「MRIは人類が生み出したなかで最も素晴らしい装置だ」という持論を持つに至りました。

By Satoshi KAYA
ちょうどこの頃、ピーターさんは体調を崩し、クリニックで検査を受ける機会がありました。運動のしすぎで筋肉を痛めた程度と思いこんでいたピーターさんでしたが、医師から告げられたのは「胃に問題が見つかり、すぐにでも大きな病院にかかる必要がある」という内容でした。急いで病院に駆け込んだピーターさんは、すぐにCTスキャンの検査を受けて治療を受け始めたことで事なきを得ることができました。このことがきっかけで医療の重要さを実感したピーターさんは、自身が学んできたMRIの知識などを活かしてオープンソースのCTスキャナーを作ろうと決意するに至りました。
ピーターさんはオープンソースの精神を重視し、CTスキャナの本体を3Dプリンタで作ろうと作業を開始しましたが、精密な切削でパーツ細部を加工するためには非常に高価なレーザーカッターが必要となることがわかりました。これはとても自前で揃えられるものではなかったため、計画はしばらく停滞することになります。
しかし、中断から2年を経たころ、工作ツールと作業スペースを貸し出しているレンタル工場(ハッカースペース)がレーザーカッターを貸し出してくれることになり、ピーターさんはプロジェクトを再開することができました。
ピーターさんの作ったプロトタイプがコレ。直径約30センチのドーナツ状のガントリーに各種センサー類がマウントされており、回転方向と前後方向(画像の左下から右上方向)に移動が可能になっています。

ガントリーの駆動には、オンラインで電子パーツを販売しているAdafruitで購入した14ドル(約1400円)のステッピングモーターが使われています。

そのガントリーを前後方向に動かすのが、画面中央に白く写っているナイロン製のボールねじです。この棒を回転させるのも同じステッピングモーターです。

こちらは各種装置をマウントするガントリーの写真。2枚のドーナツ状の板の間に挟まれている白いパーツがX線の検出器です。検出器を設置しているマウントは、銀色に光っているアルミ製のレールに沿って移動が可能で、画面手前に見えるステッピングモーターにつながるベルトによって駆動されます。

ここで使われている検出器は、放射線センサーを安価で販売する非営利プロジェクトradiation-watch.orgが取り扱っているType5(6933円)というモデルを使っています。このセンサーを見つけたことで、非常に高価なPET検査装置から取り外された光電子増倍管やシンチレーション検出器といったユニットを購入する必要がなくなったそうです。

下記は人が浴びる放射線の量を示したもので、左側の青いボックスの総合計が1日の生活で浴び得る最大の放射線量です。ピーターさんは安全面に細心の注意をはらっており、この装置で検査を受けた際に浴びる線量を「何もせずに過ごした1日に浴びるものと同等」に抑えたいとしています。線量を抑えているために検査に要する時間は長くなってしまいますが、それは安全性を最重要視するピーターさんのポリシーの表れといえるでしょう。

そしてこの装置全体を制御するためには、オープンソースのマイコンボードであるArduinoのShieldにPololuが販売しているステッピングモーターのコントローラーを組み合わせたものが使われています。最初のテストは失敗するものと予想していたピーターさんですが、なんとすべてが正しく動作したそうです。

まずはニンジンのスキャンでテストを行い、次にピーマンのような中空物、そしてリンゴというふうに実証を進めていきたいとピーターさんは語っています。サイズ的にあまり大きなものは測定できませんが、将来的には装置の上で植物を栽培し、長期間の立体スキャンデータから「CTスキャンのタイムラプス画像」を作成して、生育の研究などに使いたいと語ります。
また、コスト面でも大きなメリットがあるとのこと。医療の現場で使われている機器は非常に高価ですが、このプロトタイプを作成するのにかかった費用は、多く見積もってもたったの200ドル(約1万9000円)程度だそうです。
この透明なアクリル製のスキャナーはプロトタイプの4分の1サイズのもので、なんと作成期間は約1日だそうです。これは、オープンソースやレーザーカッターのように便利なマシンのおかげだというピーターさん。今後も、オープンソースや3Dプリンターといった機器が便利な世の中を作っていくのかもしれません。

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