マイクロソフトのアンチGmailキャンペーン「Scroogled」の行き着く先とは?
マイクロソフトが全米でGmailに対するネガティブキャンペーンを大々的に実施、ついにはテレビCMまで登場する事態に発展しています。このキャンペーンはそれなりの成果を上げているように見えますが、その行く末はそれほど明るいものではないかもしれません。
Don't Get Scroogled! - Scroogled
http://www.scroogled.com/email/
Microsoft's Google-Bashing TV Campaign Is Actually Working | Digital - Advertising Age
http://adage.com/article/digital/microsoft-s-google-bashing-tv-campaign-working/244691/
Don't Get Scroogled by Gmail
http://www.ibtimes.com/press-release/20130206/dont-get-scroogled-gmail-1067634
70%以上の消費者は、メール事業者が広告のためにユーザーのメールの中身を見ていることを知りませんが、この事実を知れば88%の人がこの行為にNOを突きつけるそうです。GoogleもGmailの内容を広告戦略に活用しており、メールの文面に表れたすべての単語を一つ一つ個別に"検閲"し、ターゲティング広告を打つことで広告収入を高めています。ちなみにこの検閲は、Gmailユーザー相互間のメール送受信だけでなく、非Gmailユーザーからのメールの内容にも及んでいる網羅的なもので、現在、連邦・州それぞれの通信傍受法違反を理由に6つの集団訴訟が進行中です。
マイクロソフトは2013年2月、Googleの"検閲"行為を強く非難するネガティブキャンペーン「Scroogled!」を大々的に開始しました。マイクロソフトは、「自社メーラーであるOutlookは、Gmailのように広告を売るためにメールの内容をのぞき見することはありません!Outlookはユーザーのプライバシーを尊重します!」として、Gmailに対する批判を強めつつOutlookへの乗換えを推奨し、専用のサイトScroogled.comを立ち上げます。マイクロソフトによれば、このキャンペーンは、個人メールを検閲するGoogleのやり方を明らかにすることで、メールの盗み見を許さない消費者の声を支援する目的でなされているということです。しかし、どういうわけかマイクロソフトはSkypeで横行するのぞき見行為に対する消費者の声には耳を傾けないようです。
こちらが同サイトのGmailネガキャンムービー。
「このキャンペーンが始まる前に、検索エンジンのシェアでマイクロソフトのBing(ビング)は、Googleから50ポイント以上引き離されていましたが、キャンペーンを見た53%以上の人が、検索にGoogleではなくビングを選ぼうとしています。そもそもGoogleのこと以上にビングについて関心をもたせていること自体、マイクロソフトにとって、このキャンペーンは成功であるのです」とマーケティング調査会社エースメトリクスの幹部ジョナサン・シモンズ氏は話します。
マイクロソフトの調査によれば、Scroogled.comの創設以来、ビングとGoogleとの好感度の差は45%まで縮まっているとのこと。キャンペーンを知った後、Googleを友人に勧める人が10%低下するのとは対照的にビングを勧める人は10%も増加した可能性があるとしています。マイクロソフトのスポークスマンは「このキャンペーンは、Googleが言っていることとGoogleがしていることの間にとてつもない差があるということを消費者が学んだという点で大きなインパクトがあります」と話します。
キャンペーンに手応えを感じたのか、マイクロソフトはテレビCMでもGoogle(Gmail)の不当性を訴えます。これまでにマイクロソフトがScroogled!キャンペーンに費やした広告費は1000万ドル(約9.8億円)を超えるとされ、NSAとの蜜月関係を暴露されたのもそっちのけでキャンペーンにご執心中のようです。
こちらがそのテレビCM。
今回Scroogled!キャンペーンを指揮したのは、最近マイクロソフトに加わった、クリントン一家の元アドバイザーのマーク・ペン氏です。ペン氏はマイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOから「規格外のアイデアを提供して欲しい」と依頼され今回のネガティブキャンペーンを実行しました。「Scroogled!キャンペーンは一種の社会現象です」とペン氏は胸を張ります。
しかし政治広告の評価会社ヴァンダービルトのプロジェクトリーダーであるジョン・エール氏は「ペン氏はかなりのうぬぼれ屋です。マイクロソフトのキャンペーンが支持されるのは、『自由』を健全な方法で周知・支援する限りにおいてです」と語ります。また、エースメトリクスのジョナサン・シモンズ氏は、「ネガティブキャンペーンが有効な政治の世界と異なり、消費者にはネガティブな広告はそれほど効果的ではありません。Scroogled!キャンペーンは、私たちがする製品比較広告ほど効果は出ません」と話しつつ、マイクロソフトは今後も引き続きネガティブキャンペーンを行って、Google支持者の離反と無党派層の取り込みを図るだろうと予想します。
エール経営大学のラヴィ・ダール教授は、この種のネガティブキャンペーンは意図せず両方の陣営を"泥"の中に引きずり込む危険性があることを指摘します。「政治家が互いに批判合戦を行う場合、どちらかが勝利を収めます。もっとも、その場合、中長期的に見れば両者ともに格付けが落とされるものです。議会の支持率を見ればこのことは容易に理解できるでしょう」とダール氏は語ります。
Scroogled!キャンペーンはいつまで継続されるのか?という問いに、マイクロソフトのスポークスマンは「GoogleがGmailで検閲を続ける限り啓蒙運動は続きます」と答えました。どうやら識者の懸念にもかかわらず、マイクロソフトは当面ネガティブキャンペーンをやめるつもりはなさそうです。ネガティブキャンペーンによって得をするのはマイクロソフトなのかGoogleなのか。それともどちらも損をするだけなのか。その行く末に注目です。
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