ソリティアと競馬を融合したゲーム「ソリティ馬」のすごさがわかる開発者インタビュー&実際のプレイムービーレビュー
「ソリティ馬(そりてぃば)」は、世界中で親しまれている定番のトランプゲーム「ソリティア」と「競馬」を組み合わせ、ソリティアをうまくプレイすればするほど競馬のレースに反映されるという今までの競馬ゲームにはない斬新なシステムを搭載したニンテンドー3DSのダウンロード専用ゲームです。
いわゆる一般的な競馬シミュレーションゲームとは違い、競馬の知識がほとんど無くても、さらにソリティアのルールを知らない人であっても、いつでもどこでも誰でも簡単にサクサクとストレス無くどんどんプレイできる内容になっているとのことなので、実際にソリティ馬を開発しているポケットモンスターでおなじみのゲームフリークに行って開発者の人たちから話を聞いてきました。また、取材終了後に実機を借りて、実際にソリティ馬をプレイしてみました。
ソリティ馬 | GAME FREAK
http://www.gamefreak.co.jp/solitiba/index.html
「ソリティア+競馬」と言われてもこれまでにないゲームなのでさっぱりイメージが掴めないかもしれませんが、以下のムービーを見れば一体どういうものなのかは大体分かります。
ソリティ馬を爆速でプレイ - YouTube
というわけで、ゲームフリークにやってきました。
オフィス入口はこんな感じで、青く光っている地球儀が印象的です。
◆インタビュー
左から開発部プログラマーでありソリティ馬のディレクターを務める田谷正夫さん、開発部サウンドデザイナーリーダー・ゲームデザイナーの一之瀬剛さん、開発部プログラマーの小幡敏宏さん。
GIGAZINE(以下、G):
ソリティ馬はどういったきっかけで開発されたゲームなのでしょうか?
開発部 プログラマー 田谷正夫さん(以下、田谷):
きっかけと言うと「ソリティアと競馬を組み合わせよう」と、いきなり始まったわけではなく、競馬と何かカードゲームを組み合わせたゲームを作ろうと思ったのが最初ですね。
開発部 サウンドデザイナー リーダー ゲームデザイナー マネジメントグループ 一之瀬剛さん(以下、一之瀬):
僕は2009年にiPhoneを購入して、何種類ものソリティアが遊べるアプリを買って、初めてソリティアをプレイしたんです。ソリティアの存在自体は知っていたのですが一度もプレイしたことがなくて。初めてプレイしたのは「クロンダイク」と呼ばれるもので、次に「ゴルフ」というソリティアにはまりました。
G:
なるほど、クロンダイクというのがWindowsに「ソリティア」としてインストールされているタイプなんですね。
一之瀬:
そうなんですよ。僕がはまったソリティアのゴルフはソリティ馬に搭載されているのものと同じタイプのカードゲームなのですが、タイムトライアルで何回も遊んでるうちに3回くらいタイムが成長することがあったんです。それがスポーツの感覚に似ていてすごく面白いと思って。
G:
そこから競馬につながったということですか?
一之瀬:
おっしゃる通りです。僕も田谷も競馬が大好きで、ゴルフのカードを連続で取っていって前に進んで行く感じが、競馬の助走から駆け抜ける感じに似てるなと思いました。自分はソリティアゴルフと競馬を何とか組み合わせられないかと考えていまして、その頃、田谷も競馬のカードゲームを作りたいと思っていたこともあり、弊社には新しいゲームを作るためのGEARと呼ばれる制度があるので、そこに提案しました。
田谷:
ゴルフがすごく面白くて、初めはゲームをクリアするのが精いっぱいだったのですが、慣れてくるとクリアは当たり前になり、次はタイムを更新することが楽しくなってきまして。iPhoneでゴルフのアプリをプレイすると手軽にサーバーに接続して世界ランキングに参加できるんですよ。それに少し熱くなってしまいました。
G:
ランキングで順位を上げていく感覚は気持ちいいですよね。
田谷:
最初は、コンピューターが想定している「これくらいいけたらすごいよ」っていうタイムの48秒を目標にしていました。1分を切るのが難しいくらいの感覚でやってますから、48秒はなかなかいけないなって思いつつ毎日毎日1秒2秒を削るようにプレイしていると、最終的に18秒という記録を出すところまでいったんですよ。
G:
18秒!すさまじい記録に思えるのですが……。
田谷:
そのとき確か世界ランキングで20~30位までいきました。そうやって、毎日毎日ずーっとプレイしているとすごくいいタイムを出せたり、今日は調子悪いなっていう日があることに気づきました。この感覚がスポーツと非常に似ているなって感じて、ゴルフをスポーツゲームと組み合わせたら面白いんじゃないかと思ったんです。実は以前から一之瀬と競馬ゲームを作りたいよねって話をしていたのもありまして、2人で一緒にやろう、ということになりました。後は、弊社のGEARと呼ばれる実験的なゲームを3カ月~6カ月くらいの期間を当てて作っていいという制度がありまして、そこに企画を提案したのがスタートですね。
G:
ソリティ馬というゲーム名を聞いた時に「ソリティアと競馬を組み合わせたのか」とびっくりしたのですが、そういう経緯があったんですね。
一之瀬:
そうなんです。補足すると、ゴルフの世界ランキングのトップクラスに入ったことから田谷は当時「世界の田谷」って呼ばれていまして、僕が30秒台とかだったんですが、田谷は20秒台をだすことが当たり前になってましたよ。
G:
そのレベルまでいくと、1秒が長く感じるレベルですよね?
田谷:
まさにそんな感じですね。もちろん毎回20秒台みたいなタイムが出るわけでもなくて、ちょっと今日調子悪いなーっていう日は30秒かかったりとか。
G:
30秒台であっても、相当やり込んでないと無理なレベルですよね?
田谷:
そうですね。普通にプレイしているだけじゃあ無理だと思います。毎日プレイしていると、そういう領域に入ってくるんですね。
G:
なるほど。作りはじめてからゲームが完成するまではどれくらいかかりましたか?
田谷:
GEARと呼ばれる実験的な期間が最初に約6カ月ありまして、「じゃあ、これを製品にしましょうか」と、許可を頂いてからは約1年です。
G:
ソリティ馬はワンコインの500円という、ゲームとしてはかなり低価格になると思うんですが、これについてはどうなんでしょうか?
田谷:
そうですね、最近はダウンロード販売で500円という価格帯のゲームも増えてきています。また、ソリティアってパソコンに無料で入っているイメージが強いと思うのでこれくらいが妥当かなと。
G:
ゲームのボリュームとかを見ていると、500円でいいのかなっていうくらい詰め込まれていると思うのですが。
田谷:
ありがとうございます。そうなんですよ、結構詰め込んでしまって。
G:
競馬ゲームというと「ダービースタリオン」「ウイニングポスト」のようにシリーズで続いているものがありますが、新しいものはなかなか出てこないジャンルなので、このゲームがどんなものなのか非常に楽しみです。ゲーム中に収録されているレースはどのようなものがあるのでしょうか?
一之瀬:
今回、ダートのレースは入っていないのですが、JRAさんの公式レースから、芝のGⅠレースが全てと、GⅠに出場するためのステップレースなど、多くのGⅡ・GⅢが入ってます。後はキングスゲートと呼ばれるオリジナルの海外レースも収録してます。
3歳馬にとって目標になるのが「三冠」と呼ばれるレース。その1つがこの皐月賞で、競馬場は架空のウグイス競馬場となっています。
G:
キングスゲートと呼ばれるレースに出場するためには何か条件があるのでしょうか?
田谷:
そうですね、かなり厳しい条件があります。まずGⅠを4勝以上して、かつキングスゲートのステップレースであるGⅠも制覇します。条件を満たすと、調教師から「日本代表としてキングスゲートに出場してみないか」っていう燃える展開になります。
一之瀬:
キングスゲートは本当に難しいです。キングスゲートのモチーフとなっている凱旋門賞は、フランスで行われる世界最高峰の競馬レースで、優勝することは日本の夢でもあるのでがんばってください。
田谷:
僕も何回かチャレンジしたのでしたのですが、心が折れるくらいの難しさでしたね。
G:
世界の田谷さんが難しいとなると相当な難易度ということが伝わってきます。
一之瀬:
キングスゲートだけは特別ですね。ソリティ馬をものすごくやりこんでくれる人のために作ったんで、ちょっと尋常じゃない難易度になっています。
G:
難しいというと、ライバル馬が強いってことになるんでしょうか?
田谷:
そうですね。
G:
ライバル馬に関してはイメージした実在の馬があるんでしょうか?
一之瀬:
ソリティ馬には実在する競走馬が出るわけではないですが、それっぽい名前で出ている競走馬もいます。
G:
それは名前を見たらある程度わかる感じなのでしょうか?
一之瀬:
そうですね、名前でわかるような馬もいます。ナリブタライアンとかね(笑) ただし、ナリタブライアンではないので、ブライアンのように強くはないです。
G:
そういうのもプレイヤーとしては楽しみの1つですよね。出走するレースなどはプレイヤー自身で選んでいく形になるのでしょうか?
一之瀬:
ソリティアから入ってきた人にもわかりやすいように、若駒モードというモードでは自分でレースを選択する必要はなく「おまかせ」になります。現在の勝敗成績ならこのレースに出場、などと調教師が自動的に選んでくれます。ゲームをある程度進めると遊べる古馬モードでは、調教師から「どっちのレースに出場する?」と聞かれることはあります。
G:
レースはソリティアをプレイしながら進めるとのことなんですが、1レースに何回くらいソリティアをプレイすることになるのでしょうか?
田谷:
レースの距離によっても変わってくるのですが、例えば1200mのレースだと2回とか、多いものだと3600mのレースで7回ソリティアをプレイすることもあります。
一之瀬:
馬には距離適正っていうのがありまして基本的には距離適正にあったレースに参加していく形になります。
田谷:
最終的にGⅠを全部取ることがゲームの最終的な目標になりますので、例えば、3200mの天皇賞春をすでに制覇していた場合、ナリタブライアンのように高松宮記念(1200mの短距離レース)にチャレンジすることもできます。距離適性が違うので勝つのは難しくなりますけどね。ちなみにここは、マジメな競馬ファンの人が納得できないかもしれないポイントだと思ってるんです。ただゲームだと強いウマが出来たら、それで出来るだけ多くのG1を勝ちたいというのも人情かと思いまして、そのようにしました。納得いかない人はちゃんと短距離馬でチャレンジしてくれると嬉しいです(笑)
G:
ゲーム内でのソリティアの難易度っていうのは自由に設定できるのでしょうか?
一之瀬:
レース中にはコントロールフェーズと呼ばれる、どの場所に自分が操作している馬を配置するか選択できるモードがあります。その馬を配置した場所によってソリティアの難易度が変わる仕組みになっています。
レース中に出てくるコントロールフェーズはこんな感じです。
田谷:
簡単なソリティアのところを選べばローリスクローリターンで、難しいところを選べばハイリスクハイリターンという感じですね。また、難しいレースになるにつれてソリティアをプレイする制限時間が短くなります。これも競馬っぽさを意識している点で、ジョッキーのインタビューなどでも、「GⅠは緊張する」と話しているのを目にするので、そういう緊張感というのもプレイヤーに感じてもらいたいです。始めのうちはGⅠのソリティアの時間制限が厳しくて緊張しますが、やりこんで慣れてくるとそうでもなくなるっていう点もプレイヤーに味わってほしいところですね。
G:
まさに、ルーキーからベテランジョッキーになるようにプレイヤーもソリティアをプレイすることによってゲーム内での自分の成長を感じることができるというわけですね。レース中にはソリティアフェーズとコントロールフェーズがあるんですが、2つのフェーズはレース中にどのように進行していくのでしょうか?
田谷:
レースがスタートしてから、まずソリティアフェーズでソリティアをプレイするのですが、ソリティアの結果に応じてパワーがたまるんですね。ソリティアが終了するとコントロールフェーズに移行して、ソリティアフェーズでためたパワーを使って馬をコントロールするという感じです。
レース中のソリティアプレイ画面。
一之瀬:
ソリティアで取得したカードが多ければ多いほどコントロールフェーズで自由に馬を動かせるようになります。つまり、気合を上げたりだとか、どのコースを走るかなどを決められるんですね。
コントロールフェーズで馬を動かすには、ペンで馬の進路を描きます。
G:
コントロールフェーズで馬を自由に動かすにはソリティアで上手にプレイする必要があるということですね。自分の腕が反映されるっていうのはうれしい要素ですよね。
レース中のソリティアを上手にプレイできると、いいことが起こるかも。
G:
レース1回にはどれくらいの時間がかかりますか?
一之瀬:
短い距離のレースで5分くらいでしょうか。
田谷:
プレイを開始したばかりの時は、ソリティア部分に結構時間がかかると思いますけど、なれてきたら数分で終わります。
G:
今回QRコードを使ってプレイヤー同士で馬を交換できるとのことですが、交換するのは種牡馬や繁殖牝馬として、ということでしょうか?
田谷:
そうです。
G:
QRコードを使ってゲットした馬の血統とかは見られるのでしょうか?
一之瀬:
血統などの深いデータなどは導入していません。競馬を好きな人なら血統などわかると思うのですが、今回は競馬を知らない人にもプレイしていただきたいので、なるべくハードルは上げないようにしています。
父と母がどの馬かというデータは持っているそうですが、細かい血統知識などは知らなくても、育てた馬を配合してカンタンに子どもを産ませることが可能。
田谷:
ただ、競馬ファンの人がちょっとニヤリとできるような要素も含まれていますよ。ゲーム中に操作する馬はプレイヤーが名前を付けることができるのですけども、名前を付けるのがめんどくさいやって人向けにデフォルトの名前も多く用意してるんですね。例えば、ゲーム中にたてがみが炎のように燃えている「ファイアーボーイ」という馬が出てくるのですが、その子どもの馬のデフォルト名が「ヒノタマコゾウ」になったりして、デフォルト名が受け継がれていくということがあります。競馬ファンにとって名前が代々受け継がれていくっていうのはちょっとうれしいことなんですよね。
G:
なるほど。確かに完全にランダムで名前を決められるのは少しさみしい感じがします。ゲームフリークさんが開発しているということで、ゲーム中にポケモンのキャラが出てくるなどの隠し要素はありますか?
一之瀬:
いや、それはさすがに無いですよ。ただ、馬名がとにかく沢山ありますけど、その中に「あれ?」っていうのはあるかもしれません(笑)
田谷:
そのものズバリは使えませんので、なんとなく「あれ、これってもしかして…?」みたいなヤツ、入れてましたね。
一之瀬:
「ピカピカマウス」とかね、もうあれですよね(笑)
田谷:
社内からも失笑がありました(笑)
一之瀬:
後は、ランチでよく行く三軒茶屋のお店の名前をもじって競走馬に付けてみたり(笑)
G:
なるほど。ソリティ馬はダウンロード専用ゲームということなんですが、価格として500円で出すにはダウンロード専用しかないなあという感じですか?
田谷:
いろいろな要素を検討して、最終的にダウンロードでいきましょうと決定した結果です。
G:
では、アプリ化してiOS版だとかAndroid版として発売する予定はありますか?
一之瀬:
全く未定なんですけども、できないわけではないという感じです。
田谷:
好評を頂ければ、もしかしたらっていう感じです。
開発部 プログラマー 小幡敏宏さん(以下、小幡):
社内からもそういった声がチラホラ上がってますね。iPhoneでやっても面白いんじゃないかって。
G:
そうですか。社内で実際にソリティ馬をプレイしてもらった感想はどうですか?
一之瀬:
社内のみんなはほんと優しいので、おもしろいって言ってくれるんですよ(笑) ただ、ソリティ馬のルールが全く新しいので、最初にプロトタイプをプレイしてもらった時は、みんなよくわからない、ましてや競馬がわからないと余計わからないってなって大変でした。そこから競馬を知らない人のことをもっと考えて、チュートリアルを見直したり、ゲーム中に出てくるTipsという用語を説明してくれる部分を多く追加したりしましたね。なるべくソリティ馬のルールをわかってもらえるように努力しました。
ゲーム中に競馬用語が出てくると、丁寧に説明してくれます。
田谷:
ですので、開発終盤はルール説明に関する機能を追加することにかなり時間をさきましたね。
一之瀬:
小幡は競馬を全く知らないので、いろいろなアイデアを考えてもらったりしました。プログラマーの中にもいろいろなことをやってる人がいるんですよ。企画もやったり。
G:
みなさんで分担して仕事をするのではなく、いろんな仕事をやるという感じですか?
田谷:
そうですね。小さいチームだとそうしないと回らないです。
G:
ソリティ馬の開発は基本的にこちらの3名だったのでしょうか?
田谷:
GEARというのが、ゲームの企画に賛同者が3名集まればその3名でプロトタイプを作っていいよ、という制度なので立ち上げ時から6カ月の試作期間は3名だけでした。その後は社内外からいろいろな人に協力してもらって最終的には7~8人まで増えました。
G:
なるほど。ソリティ馬のようにゲームフリークでパブリッシュまで携わるというゲームは今後増えていくのでしょうか?
一之瀬:
増えていくように努力しているところですね。
田谷:
自社パブリッシングで面白いものを出していきたいです。
一之瀬:
ゲームフリークはポケモンだけじゃないぞっていうところを見せていく姿勢は必要だと思っています。
G:
今自社で開発中のゲームとかってありますか?
一之瀬:
うーん、やっぱりGEARっていう制度を利用してちょっとずつがんばっている感じです。GEARは3人集まれば企画を提出して、企画が通れば6カ月間実験で開発していいよっていう制度なんで。今はそういう意思を持った人がちょっとずつ種をまいてるって感じです。
田谷:
以前発売したハーモナイトっていうゲームもGEARから始まったゲームですよ。
G:
そうなんですか!それにしても、ハーモナイトの発売から約1年しか経過してないのに、もう次のタイトルを発売するってかなり早いスピードですよね。
一之瀬:
そう言っていただけるとありがたいです(笑) ゲームを作るのは時間がかかるので。
G:
そうですよね……ハードウェアの進化もあるのか、ゲームソフト開発にはすごく時間がかかるというイメージが合って、1年で次が出てくると「早いな!」と。
一之瀬:
あーなるほど。でももっともっとたくさんゲームを出したいです。でも、時間かかるんですよね。自分が死ぬまでに後何本だせるんだろうって計算しながらやってます(笑)
G:
では、自分の中でこれは出したい!っていうゲームとかあるのでしょうか?
一之瀬:
それはゲーム会社に就職した人ならみんなあるのではないでしょうか。
G:
一之瀬さんにはいつかは出したいというゲームはありますか?
一之瀬:
僕は3つありますね。今はそれに向かって畑を耕しているところです。
G:
なるほど。
一之瀬:
ソリティ馬は3つの中の1つで、僕の夢がかなった作品です。僕はゲームもすごく好きですし、競馬も好きなんです。ですので、ゲームや競馬ファンが楽しめるソフトを開発して、皆様に楽しんで頂けていたら、本当にうれしいです。今は、大変だったソリティ馬開発も終わり、後考えているゲームを世の中に出すことができたら死んでいいかなって思いになっています(笑)
田谷:
そういう意味だと、僕は競馬ゲームを絶対作るぞっていう意気込みや思い入れがあったわけじゃあないんです。でも、よくよく振り返ると実はプログラマーになろうと思ったきっかけの1つにダービースタリオンっていう競馬ゲームがあるんですね。ダービースタリオンでは、馬を交配させて子どもを作るときに馬の血統が重要になるんですね。その血統をまだ自分で書き出していたころに、フリーソフトで血統を管理してオススメの交配を教えてくれるツールがあったんです。そのソフトウェアがフリーで配られているのを見て、プログラマーって魔法使いみたいだなって衝撃を受けました。その時からプログラマーになる勉強をし始めたんですね。それからもう20年くらいたつんですが、今回ソリティ馬を出すっていう形で結実したのかなって感慨深いものがあります。
G:
競馬ゲーム以外でいつか世に出すぞっていうゲームはありますか?
田谷:
そうですね、今もGEARに企画を出していたり、他にも温めているのはいくつもあります。でも、今こういうゲームを出したいんだと思っていても、世の中の流れが変わっていって数年すれば時代的に古くさくなることがあるんです。ですので、今の時代の流れに合わせて出せたらなっていうのはありますね。
G:
小幡さんにはいつか出したいゲームとかありますか?
小幡:
うーん、僕は現時点では特に夢見ていて、絶対に出したいっていうゲームはまだないです。でも、今回のソリティ馬では自分がゲーム以外で楽しいと思っているものをゲームに落とし込むことができました。自分が楽しいなあと感じていること、今回だとソリティアや競馬になるのですが、そういったものをゲームに落とし込んでそれについて知らなかった人がゲームを通じて、こういう楽しいものがあるんだってことを知ってもらえるようなゲームを出せたらなって思っています。
一之瀬:
実は小幡は競馬について一切知らなかったんですね。僕と田谷は競馬について非常に詳しいんですけど。だから、僕らが当たり前にやってることでも、競馬好きじゃない人は知りませんよっていうことをいっぱい教えてくれまして。ソリティ馬の入口の間口を広げるために、彼は本当にいろいろやってくれました。ソリティ馬のキャラクターにリアルな馬ではなくて、かわいいものを使用しているのも小幡のアイデアなんです。「リアルな馬が出てると買わない」っていうんですよ。
小幡:
競馬好きでない僕からしたら、リアルな馬が走っている競馬ゲームは買わないんですよ。リアルな馬が走っているのを見ても興味がわかない、というか。
特殊な馬の他にもかわいくて個性豊かなキャラクターが登場するのがソリティ馬の魅力の1つでもあります。キャラクターたちは主人公の活躍に応じて登場していくとのことです。
一之瀬:
老若男女に遊ばれるゲームを作りたかった、ということもあって、キャラクターデザインはかわいいものにしました。僕は、ソリティアを遊んでみようと思ってソリティ馬を買ってくれたお客さんも競馬についての知識が少し得られると思っているんです。だから、ソリティアが好きでソリティ馬をプレイしてみて、結果的に競馬を好きになってくれたらもう言うことはないですね。僕はこの会社に来てダービースタリオンで競馬にはまってしまいました。それからかれこれ18年間競馬ファンですが、JRA預金がだいぶたまっています(笑) 高い授業料でしたがソリティ馬を作れたので後悔はありません。
小幡:
僕もソリティ馬を作っていくうちに競馬を少しかじるようになりました。
一之瀬:
そうだよね。小幡は今年のダービーで万馬券当てたもんね(笑)もう競馬大好きだもんね、小幡は。
小幡:
はい、大好きです(笑)
一之瀬:
この記事読んで小幡のお母さんとかが心配するかもね(笑)
G:
みなさんが話してくれたように、馬のキャラクターはかわいいデザインに仕上がっていますね。
一之瀬:
最初はほんとに普通のリアルな馬を使ってました。
田谷:
そうですね。馬のアニメーションを描ける人が1人もいないんで、JRAのCMで武豊騎手が競走馬に乗って走ってるものがあるんですけど、そこから武豊騎手と馬だけを1フレームごとに切り出してやってたんですね。
G:
では当初の予定だと完全にリアルな馬の絵を使用するつもりだったんですか?
田谷:
そうですね。その後に小幡にこのゲーム買うって聞いたら買わないっていうから。
一之瀬:
買わないんだ!ってなって、じゃあどうするかってなったんだよね。
G:
レースシーンを見ていてもかなりデフォルメされている部分がありますが。
一之瀬:
おっしゃるとおり多くの部分をデフォルメしてます。例えば、実際の競馬で馬同士がぶつかって、激しくはじき飛ばされるなんてことは無いですよね。反則ですからね。ただ、1つ言っておきたいんですけども、デフォルメしてる部分は多くありますが、競馬の要素はソリティアと組み合わせてものすごく取り入れたつもりです。例えば、馬はスローペースだとイライラして機嫌が悪くなりやすくなったり、反対にハイペースだと機嫌が悪くなりにくくなったりする事も盛り込んだり、競馬的な要素にもかなりこだわっている部分はあります。ただ、そういう競馬の要素を意識しなくてもなんとなく遊べるように極力しています。
ソリティアをあまりうまくプレイできないと、馬は制御不能になって暴走することもあるようです。
田谷:
そうですね。やっぱり幅広い層の人たちに楽しんでもらいたいので、そこまでマニアックな知識は入れずに、とっつきやすいようにデフォルメして入口は広めにしました。ただ、デフォルメの作業を担当したのは競馬歴何十年ていう人たちなので、競馬ファンの人にも納得してもらえるかなとは思います。
一之瀬:
その他にもこだわっている競馬的要素を上げたらきりがないですが、例えば超ハイペースの時は追い込みが有利になったり、スローペースだったら逃げ馬有利な展開になるように調整したりっていう部分とかですね。
G:
では、逃げ馬じゃ勝てない、というような事態は起こらないってことですよね。
一之瀬:
いやあ、ないといいですけどねえ(笑)
G:
やっぱりレースのペース調整とか難易度が高かったのでしょうか?
一之瀬:
時間はかけたんですけども、まだ足りないんじゃないかなとも思います。これやったら絶対勝てるっていう、必勝法がもしかしたらまだあるんじゃないかって怖いですね。もちろん要所はかなり時間をかけてチェックしたんですけども。
G:
勝つための定石が見つかるくらいやり込む人が出てくるかもしれませんよね。
一之瀬:
ほんとは、競馬を知らない人にソリティアから入って欲しいんですよ。競馬を知らない小幡の感覚っていうのをなるべくたくさん取り入れましたし。馬のキャラクターもかわいいし。
G:
ゲーム内では少し変わった風貌の馬を見たんですが、特殊な競走馬っていうのは何頭くらい出てくるのですか?
田谷:
構想当初はかなりの数を考えていたんですが、開発が進むにつれて減っていき最終的には10種類になりました。
G:
キャラクターごとに特殊能力などが付加されているのですか?
一之瀬:
特殊能力っていうか個性があるんですね。例えば、大仏をモチーフにした馬は性格が温和なんで機嫌が悪くなりにくいとかって感じです。リーゼントは短気だとか。
G:
その10種類は隠れキャラクターのような感じで、なかなか出現しないといった感じですか?
一之瀬:
隠れているっていうか、条件を満たせば出現します。条件を満たせない人はQRでゲットしてねってことなんです。
G:
条件をクリアするのは難しいのでしょうか?
一之瀬:
難しくないですよ、3時間もプレイすればプレイヤーのソリティアの腕が追いついて条件をクリアすることはできると思います、個人差はあると思いますが。
長い構想期間から選び抜かれた10頭の特殊なルックスを持つ馬の一部は以下のような感じです。
真っ赤なたてがみが炎を連想させる馬のキャラクター。
尻尾がかわいい猫のデザインの馬は愛嬌担当で能力的にはソコソコとのこと。
アンロックした特殊な馬はアルバムに保存されていつでも見返すことができます。
G:
なるほど。DLCで追加キャラクター配信ということもありえるのでしょうか?
一之瀬:
やりたいですけどね。残念ながら今の所は未定です。構想はいろいろあったんですけど、時間の関係でカットしていくことになりました。
G:
では、残念ながらカットせざるを得ないという要素も多くあったのですか?
一之瀬:
そうですね。馬のキャラクターで話しますと、先に出てきた10種類の特殊な馬はそれぞれ最後の直線で使える必殺技が違う予定だったんですよ。
田谷:
構想段階ではロケットエンジンで飛んでいく馬とかもあったんですが、その絵を描くのにどんだけかかるんだよってなってしまって。
一之瀬:
ラチの上を走る馬もいたよね。
G:
では、最後に一言ずつお願いします。
田谷:
競馬を知らない人にも楽しんでもらえるように作ったので、ソリティ馬を通じて競馬も知ってもらえたらなと思っています。
一之瀬:
実は昨日お風呂に入りながら考えてきたんですよ(メモをポケットから取り出す一之瀬さん)
G:
ありがとうございます。
一之瀬:
自分がそうであるようにですね、ゲームを愛する人と競馬を愛する人に向けて少しでも楽しんでもらえるものが作れたらなあ、という思いで作りました。ですので、500円以上楽しんでもらえるゲームに多分なってると思うので、是非ニンテンドーeショップでお求めください。後、僕はゲームサウンドも担当していて、音楽にもゲームと競馬への想いを込めましたのでその辺も見て欲しいですね。
小幡:
電車でソリティアとかパズドラをやっている人には是非買ってもらいたいです。誰でも簡単にできるくらいの入りやすさなので、よろしくお願いします。
田谷:
パズドラできる人は絶対できるよね。分母がすごく広がりましたけど(笑)
G:
すごくわかりやすいですね(笑) 本日はどうもありがとうございました。
取材後実機を借りてソリティ馬を実際にプレイすることができたので、新馬戦を実際にプレイしてみました。新馬戦はゲーム内で最初に挑むレースのため、チュートリアルなどでルールをしっかりと説明してくれています。
ソリティ馬の新馬戦を実際にプレイしてみました - YouTube
なお、ソリティ馬のプロモーションムービーは以下から確認できます。
ソリティ馬プロモーションムービー - YouTube
ソリティ馬は7月31日(水)よりニンテンドーeショップでダウンロード販売を開始しており、かなりのボリュームが詰まっていながら500円で購入することができます。
ソリティ馬 | GAME FREAK
http://www.gamefreak.co.jp/solitiba/index.html
・関連コンテンツ