高騰するメモリ(RAM)を自宅の裏庭で一から自作する方法

AI需要の増加でGPUやスマートフォン、PC向けのメモリ(RAM)需要が強まり、しかも供給はMicron、Samsung、SK hynixの大手3社に大きく依存しているため、すぐに増産できないという事情があります。そこでYouTubeチャンネルのDr.Semiconductorが、工場の新設を待つ代わりに、自宅の裏庭の小屋をクリーンルーム化し、自前で半導体製造装置まで作ってRAMを自作できるか試した動画を公開しています。
Making RAM at Home - YouTube

クリーンルームに改造した裏庭の小屋がこれ。

このクリーンルームは「1立方フィートの空気中に0.5μm以上の粒子が100個以下」というクラス100の基準をクリアしているとのこと。

なお、Dr.Semiconductorはクリーンルームの建設を以下で公開しているので、クリーンルームを自宅に作りたい人はぜひ参考にしてみてください。
There’s a Class 100 semiconductor cleanroom inside this backyard shed. - YouTube

RAMチップの中には膨大な行列で並んだ多数のセルがあり、それぞれの交点にトランジスタ1個と電荷をためるコンデンサ1個があります。トランジスタはスイッチ、コンデンサは電気をためる小さな電池のような役割を持ち、トランジスタをオンにするとコンデンサに電荷がたまって1ビット分の情報を保持できます。読み出すときも再びトランジスタをオンにしますが、その際に電荷が流れ出て減ってしまうため、定期的なリフレッシュが必要です。

実際の試作では、5×4の小さなメモリアレイを設計。各交点にトランジスタとコンデンサを置く構成で、最終的なトランジスタのゲート長は1μm弱を目標にしています。図の色分けはそれぞれ異なる加工層を示しており、半導体はこうした層を順番に重ねることで作っていきます。

素材として使うのはシリコンウエハーです。まず大きなウエハーをダイヤモンドスクライバーで小さなチップサイズに切り分けます。シリコンは結晶の向きに沿って割れやすいため、比較的きれいに分割できます。

その後、切断時のごみや有機物を落とすために、アセトンとイソプロピルアルコールで洗浄します。

洗浄後のシリコンは炉に入れられ、1100℃という非常に高い温度で酸化されます。これはシリコン表面を酸化膜、つまりガラス状の膜に変える工程です。

この焼成によって厚さ約3300Å(オングストローム)の酸化膜を成長させます。この膜は後工程で表面を保護したり、必要な部分だけ加工するためのマスクとして使われます。

焼成後のシリコンウエハーはきれいな緑色に。

酸化膜の上に、まずリフトオフ用レジスト(LOR)を塗布し、170℃で焼きます。LORは本来金属膜の離膜に使う材料ですが、ここでは密着性を高める下地として利用しています。

さらに上から感光性のフォトレジストをスピンコートし、100℃で焼きます。こうして表面に1μm強の均一なレジスト膜を作ります。

次に、マスクを通して紫外線を当てるフォトリソグラフィ工程に入ります。マスクの開口部を通った光だけがフォトレジストに届き、露光された部分は現像液の中で溶けて除去されます。

顕微鏡ステッパーを使って設計パターンを縮小投影し、サブミクロン級の形状をチップ上に転写します。これで、あとで加工したい場所だけが露出した状態になります。

パターン化されたフォトレジストをマスクとして使い、ドライエッチングで酸化膜を削ります。つまり、不要なガラス膜だけを選択的に除去して、下のシリコン表面を露出させます。

この加工が終わると、フォトレジスト自体は不要になるため、加熱したジメチルスルホキシド(DMSO)で剥がします。結果として、酸化膜の一部に「窓」が開いた状態になり、次の処理をその場所だけに施せるようになります。

次はトランジスタのソースとドレインを作る工程です。ソースとドレインは電流の入口と出口にあたる領域で、ここを高導電化する必要があります。

そこで、開いた窓の部分からシリコンにリンを入れてドーピングします。通常はイオン注入など高価な装置を使うことが多いですが、今回は物置のクリーンルームで実行するため、薬剤を塗布してスピニングして拡散させる方法を採用。

まず試験片でこのリン系材料の効果を確かめます。元のウエハーは抵抗が高く、テスターで簡単に導通が取れないほどですが、処理後の試験片では強い導電性が確認されました。

そこで、本番用のチップにもリン含有スピンオングラスを塗布し、徐々に温度を上げながら焼いていきます。途中でガラスの析出物が少しできたものの、大きな問題ではないそうです。

ドーピングの深さも重要なので、投稿者はリンの拡散プロファイルを計算するための計算機まで自作しています。

狙いは、浅すぎず深すぎない導電層を作ることです。そのため、まず1100℃で5分間アニールしてリンを拡散させ、その後スピンオングラスをフッ酸で除去し、さらに1000℃・10分の熱処理を行います。これでソースとドレインが形成されます。

ソースとドレインができたら、今度はその間のチャネル領域、つまりトランジスタのスイッチそのものを作る工程に進みます。再びLORとフォトレジストを塗り、今度はすでに形成したソースとドレインの間にきちんと位置が合うよう、慎重にアライメントして露光します。このとき同時に、トランジスタの上に置く電荷保存用コンデンサの領域も露光対象に含めています。

現像後、フッ酸でソースとドレインの間にある酸化膜と、コンデンサを作る予定部分の酸化膜を削ります。ここで酸化膜を薄くしたい理由は、トランジスタではゲート制御を効かせやすくするためであり、コンデンサでは容量を大きく取るためです。特にチャネル領域はトランジスタ動作の要なので、ここは最重要部分として扱われます。

重要部分の表面をきれいにするために、ここでピラニア洗浄を行います。これは有機物や多くの金属汚染を徹底して除去する洗浄で、非常に強力な薬液を使います。

表面を徹底的に清浄化したうえで、再び炉に入れて新しい酸化膜を成長させます。

今回成長させる酸化膜は、最初の保護膜よりかなり薄いものです。温度を950℃に下げて38分処理することで、約200Å、つまり20nmのゲート酸化膜とコンデンサ酸化膜を作ります。これによってトランジスタのゲート制御性が向上し、コンデンサの容量も確保しやすくなります。

一方、デバイスの外側には依然として厚い酸化膜が残っており、必要な場所だけ薄い酸化膜に作り分けられています。

次は電気的な接続のためのコンタクトホール形成です。表面は全面が酸化膜で覆われているので、このままでは金属配線をシリコンに直接つなげません。そこで再びLORとフォトレジストを塗り、コンタクトカット用のマスクで露光し、小さな開口部を作ります。その開口部にフッ酸を作用させて、必要な場所だけ酸化膜を取り除き、後で金属が接触できる通り道を作ります。

最後の大きな工程が金属配線です。ここでもLORとフォトレジストを塗って最終マスクを露光しますが、今回は前の工程と違って材料を削るのではなく、できた開口部を「型」として使います。

言い換えれば、ここまでで作ったレジストの穴をステンシルのように使い、その上から金属を吹き付けるような工程になります。実際にはスパッタ装置でアルミニウムを成膜し、アルゴンイオンで金属ターゲットをたたき、飛び出したアルミ原子をチップ表面に降り積もらせます。すると表面全体に金属が付きますが、必要なのはレジストの開口部に対応した部分だけです。

そこで再び加熱DMSOに浸し、レジストごと余分な金属を剥がしていきます。これがリフトオフです。

リフトオフ後に顕微鏡で見ると、トランジスタ、コンデンサ、各種接続配線が完成していることが分かります。断面構造としては、下にシリコン基板、その上にソースとドレインや薄い酸化膜、さらに上にアルミのゲート電極やコンデンサ電極が乗った形です。これで、トランジスタで電流を制御しながらコンデンサに電荷をためる、DRAMセルの基本構造が実際に作れたことになります。

ここからは測定です。ナノスケールの素子なので普通の線をつなぐことはできず、微細なプローブ針をマイクロマニピュレーターで当てて測ります。トランジスタの測定では、ゲート電圧によって流れる電流が変化し、スイッチとして機能していることが確認されます。完全なデジタルのオンオフだけでなく、出力を連続的に変えられるような動作も見えます。

ただし、トランジスタ特性は理想的ではなく、高電圧側で電流が増え続ける問題も見られたとのこと。これはソースとドレインの間隔が1μm未満と短いため、高い電圧をかけると両者の影響領域がつながり、ゲートでの制御が弱くなってしまうためだそうです。低電圧で動かす限りは使えるものの、微細化の難しさが表れているとしています。

続いてコンデンサ単体の測定を行います。C-Vプロッタで電圧を変えながら容量を読み取り、最大容量は12.3pFだったと報告しています。これは設計上の理想値にかなり近く、狙ったコンデンサがきちんとできていることを示しています。

トランジスタとコンデンサを1つのDRAMセルとして組み合わせてみると、トランジスタがコンデンサを数百nsで3Vまで素早く充電できることが確認されます。その後、コンデンサの電圧は徐々に下がっていき、2ms少々でほぼ失われます。つまり、データ保持はできるが、かなり短い周期でのリフレッシュが必要です。市販DRAMが64ms以上保持できるのに比べると短いものの、自宅製作としては動作原理の実証に成功した形です。

Dr.Semiconductorは、今回作ったDRAMは「初めて自宅で作られたRAM」だとアピール。ただし現時点では数個のセルしかなく、まだ実用的なメモリチップではないとのこと。Dr.Semiconductorはこのセルを多数並べて大きなアレイにし、最終的にはPCにつないで使えるレベルまで発展させることが次の目標だと述べました。
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in 動画, ハードウェア, サイエンス, Posted by log1i_yk
You can read the machine translated English article How to build your own RAM from scratch i….






