3Dプリンタで今までより優れた義耳を作成することが可能に
耳は体の中でも複雑な形をしていて複製がとても困難な部位なのですが、銃やドレスなど複雑な構造物でも作成できる3Dプリンタを使えば耳も簡単に複製できるようです。カーネル大学のロウレンス・ボナサー准教授によると、3Dプリンタで複製した耳を元に義耳を作れば、病気や事故により耳が破損、もしくはなくなってしまった患者への新しい治療法の1つとなる可能性があるとのこと。
Cornell Chronicle: Engineers 3-D print artificial ear
http://www.news.cornell.edu/stories/Feb13/earPrint.html
詳細は以下のムービーから確認できます。
Cornell Scientists Develop BioMedical Printer for Ear Replacement - YouTube
今まで小耳症や事故などで耳の1部もしくは全体を失ってしまった人への治療法には「スタイロフォームなどの素材から義耳を成形し移植する方法」と「患者の肋骨から肋軟骨を使用して、義耳を作成・移植する方法」の2種類がありました。しかし肋軟骨から義耳を作る治療法は難易度が高い上に激しい痛みを伴い、本物の耳と比べて形が不完全であったり、きちんと機能しない可能性があるなど、リスクを伴うものでした。
By ReSurge International
ボナサー准教授によると、3Dプリンタで義耳を作成する方法を使えば片方の耳だけが小耳症にかかっていたり破損している患者は、もう片方の耳をモデルに3Dプリンタでコピーを作成でき、両方の耳がない患者は似ている人の耳からモデルを作成することが可能。自身の軟骨を使用しないので痛みが少なく、また手術後に形が崩れないという利点もあるそうです。
義耳を作成する手順は、最初に義耳のモデルとなる耳をスキャンして……
画像データとしてパソコンに取り込んでいきます。
これは パソコンで耳の画像データを読み込んでいる最中の様子。
そして、画像データを3Dプリンタで出力して、義耳の型を作成します。ここまでの作業にかかる時間は約1日半。
次に完成した型にねずみの尾から取ったコラーゲンと牛の耳から抽出した250万個の軟骨組織を流し込みます。一般的な義耳と違い、生きた細胞を使用することで、患者の成長に伴い義耳も成長させることができるので、生まれつき耳を損傷している子供にも移植できるのです。
約15分後に取り出した義耳がこちら。この小さな義耳を直接患者に移植できます。
義耳が小さすぎて患者に合わない場合は、少し奇妙な感じがしますが、できあがった義耳をネズミの背中の上で1カ月から3カ月成長させてから移植することも可能。ちなみに、画像は実際に義耳が成長しているところではありません。
スペクター医師によれば、この義耳が安全であると認可されれば、3年以内に新しい治療法として実現可能。さらに将来的には牛ではなく人間の軟骨組織を使用可能にするため、現在新たな方法を研究中とのことです。
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