大破した軍用ロボットからルンバの始祖までiRobotの歴史が丸わかりの博物館&食堂を米国本社で見学してきた
世界的なベストセラーとなった家庭用ロボット掃除機「ルンバ」シリーズや米軍が採用している偵察用ロボットなどを開発しているiRobot社には試作機や過去に発売されていた幻のモデルなど、貴重なロボットたちが納められた博物館があります。今回、米国の本社に行ったついでに寄ってみました。
というわけで、iRobot社に到着。同社が行っている研究開発などについては「ロボットビジネスの最前線、iRobotの米国本社に行って研究開発の現場を取材してきた」に掲載しています。
◆ミュージアム
入り口はこんな感じ。
「COOL STUFF」と書かれたドア。日本語にするとイケてる資料、カッコイイ持ち物といった感じの意味で、この先に過去に開発されたロボットたちが納められています。
内部の様子は以下の通り。
初期に製作されたロボットが展示されている棚。
iRobotのCEOコリン・アングル氏が学生時代に製作したロボット。
割り箸のような木片でできた脚。素朴な作りというか、割と適当に作ったようにも見えますが、同社がこの後に製造していくことになるあらゆるロボットの始祖となる貴重な存在です。
火星などでの探索活動を念頭に置いて約20年前に製作された6脚ロボット「Genghis(ジンギス)」。なお、ここにあるのは2号機で、1号機はスミソニアン博物館に展示されているそうです。
センサーの配置などを変更したギンギスの兄弟機「Hermes(エルメス)」。
石油プラントのパイプの中を進みデータを集めるために開発されたという管状ロボット「MicroRig」。
ペットボトルより一回り細い位のサイズ。
前から見るとこんな感じ。
原子力関連施設の清掃用に作られた「R2」。
かつて販売していた玩具用のロボットたち。
おもちゃのロボットの原型になっているのは1995年に作られた感情を表情で表せるロボット「IT」。このマシンはロボットとしては初めてナショナルジオグラフィック誌の表紙を飾ったそうです。
確かに顔はありますが、ここから感情を読み取れるかは謎。
「IT」の研究を基にして作られたのが、この赤ちゃん型ロボット。
眼球や眉、頬などが動きます。
顔面のラバーを剥がすと中身はこうなっています。怖い……。
なお、この赤ちゃん型ロボットは後に「My real Baby」という名前で商品化され実際に販売も行われています。しかし、パッケージに入った状態で店頭に置かれていると表情が変わるとい製品の魅力が伝わりづらく、よりシンプルで低価格な競合製品に破れ、市場からの撤退を余儀なくされたとのこと。この教訓は後にルンバを販売する際に徹底して店頭で実機を動かしてデモを行う、という方針につながっていったそうです。
恐竜型のロボット。iRobotは玩具事業からは撤退しているので現在では販売は行われていません。説明をしてくれたスタッフが「絶滅種なのよ(笑)」と言っていましたが、こちらも笑っていいのか微妙なところ。
音に反応して動き回るロボット。
「とてつもない跳躍力を持つ」とだけ紹介されたカエル型ロボット。
壁面を登るために開発された吸盤付の車輪。
片手で持てる位の小ささですが、この中にバッテリーやモーターを内蔵しており、独立して稼働することが可能です。
タコのようなグニャグニャした動きを研究するために使用されていた関節モデル。
デパートや駅などで用いられている業務用の清掃機を無人で自走できるようにしたもの。
十分実用可能なレベルに達していたのですが労働組合から「職を奪う」と批判され、以後は「人の手助けをするけれども職業は奪わない」というロボットを作ることを目指すようにしたそうです。
家庭用ロボットと並ぶiRobot社の主力製品は防衛専業関連向けロボット。
地雷探査用のセンサーを備えた4輪ロボット「Fetch」。プログラム上では、一定のエリア内をくまなく走り回る、という意味でルンバと共通する点あるので家庭用製品からのフィードバックが地雷除去の精度向上にもつながっているとのこと。
車輪はこんな感じ。
センサー。
同社の防衛産業向け製品としては最も大きな成功を収めたという「PackBot(パックボット)」は無限軌道(キャタピラ)で移動しつつ上部に備えたカメラやセンサーを使用して周囲の偵察などが行えるという製品。
カメラはこんな感じ。
9.11のテロの後に行われた捜索活動でも実際に使用されていました。
以下の「SUGV」と呼ばれるモデルはパックボットを小型化した軍用のモデル。
イラクやアフガニスタンで不審物の捜索に使用されており、その際にIED(即席爆発装置) の被害に遭って大破したものが以下のロボットです。
金属のボディが引きちぎられるようにして吹き飛んでおり、爆発のすさまじさを感じさせます。
同じく、任務の途中で大破して送り返されてきたSUGVとコントローラー。
バラバラ。
以下のような端末で操作を行います。
実際に人間を乗せて目的地まで走ることを目標に開発された車型ロボット。
運転席の脇にあるスイッチで自動運転と人間による運転の切り替えが可能。
GPSで指定した座標に向かって自動で走行することができます。
前から見るとこんな感じ。
前方にセンサーが取り付けられており、自動で障害物を回避できます。
試作段階のものとしては、扉の隙間から進入して室内の情報を集める尺取り虫の様なロボットもあります。
伸び縮みさせるとこんな感じ。
さらにパックボット用のアタッチメントとして開発された「ろくろっ首」のようなユニット。箱の中に納められた3枚の金属板を噛み合わせながら押し出して行くことで約2.5メートルの高さまで自立した状態で伸ばすことが可能です。
「首」の部分はこんな感じ。
家庭用ロボット掃除機の先駆者として世界的なベストセラーとなっている「ルンバ」シリーズの初号機。
幾度ものテストが行われており、ボディは傷だらけです。
試作機なのでさまざまなアタッチメント取り付けて性能を試せるように裏面には面ファスナーが付けられています。
走行パターンなどの研究のために使われた試作機。
頻繁に基盤にアクセスする必要があるため、マザーボードがボディの上に直付けされています。
3Dプリンターで作られたデザインモックアップ。
上記のような開発過程を経て生まれてきたのが以下のようなルンバたち。
最新のルンバなどの説明をしてくれたのは同社が「ホームロボット」と呼ぶ家庭向け製品のプロダクトマネージャーを務めるCraig Henricksen氏。
「ルンバ」シリーズの6代目にしてハイエンドラインナップに位置するルンバ「770」の外観はこんな感じ。
裏側。
同じモデルの強みはゴミを吸い取るブラシの後ろに通過したゴミの量を検知するセンサーを備えている点で、ゴミをたくさん吸い込んでいる場所を汚れている場所であると判断して集中的に掃除をするようにプログラムされています。
日本未発売の「Scooba 390」はタイルの床などに水をまいて汚れを洗い、汚くなった水を吸い込んで掃除をすることができるモデル。
裏側。
タンクを外すとこんな感じ
青いキャップの注ぎ口から清掃用の水を入れます。掃除が終わった後は汚れた水が自動的に本体に吸い込まれタンクに戻されるので、灰色のキャップを開けて捨てればOK。
台所や風呂場などの限られたスペースで使用するための小型モデル「Scooba 230」。
汚れた水を吸い込む機能はなく、裏面の構造はシンプル。ブラシはワンタッチで交換できるのでお風呂用、キッチン用などと使い分けることができます。
雨どい清掃用のロボット「Looj」は専用フックでズボンなどにつり下げることが可能。これは、はしごを登って雨どいまで行く際に両手を自由にするための機能です。
こんな感じで落ち葉が溜まった雨どいの中を掃除することができます。かなり1つの目的に特化した製品ですが、高い場所にある雨どいの中の掃除は危険が伴うものでもあるのでロボットが活躍する場所としてはうってつけです。
取っ手を外すとそのままリモコンとして使用できます。
フローリングの拭き掃除用ロボット「Mint 5200」。
裏返すとぞうきんがペタリと貼り付いています。
ぞうきんを外すとこんな感じ。
というわけで、「COOL STUFF」ルームはまさにiRobotミュージアムとも言うべき展示内容で同社がさまざまな失敗を乗り越えつつ防衛産業から家庭用ロボットまで幅広いジャンルに向けて着々と製品を投下し続けてきた歴史を見ることができました。
◆食堂に行ってみた
取材の最後にお腹が空いたので立ち寄った食堂は以下の通り。
チキンサンドは冷めないように上に加熱用の機械が設置されています。
サラダバーが並んでいるので好きな野菜を取って食べられます。
チキンや野菜炒めをゲット。
レジに到着。
サラダバーで取ったものは測りに載せて重量に応じた金額を支払います。
食器はセルフサービス。
チキンサンドはこんな感じ。
ちょっと肉がパサパサでしたが、ほんのりと温かいのでおいしく食べることができました。
なお、お値段はサラダバーが4.13(338円前後)ドル、チキンサンドが3.99ドル(327円前後)、税金を加えた合計が8.69ドル(712円前後)でした。
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