キューブリック作品がいかに一点透視図法を使っているかがわかるムービー
「時計じかけのオレンジ」「シャイニング」「2001年宇宙の旅」「フルメタル・ジャケット」といった作品で知られる映画監督スタンリー・キューブリックは、もともと雑誌社に写真を持ち込むカメラマンであったため、作品にはそのまま写真になってしまいそうな構図の映像が多くあります。その中の一点透視図法(奥行き方向の線が全て消失点という一点に収束するように放射状になっている構図)を用いて撮られたカットを集めたムービーが「Kubrick // One-Point Perspective on Vimeo」です。
Kubrick // One-Point Perspective on Vimeo
一点透視図法をわかりやすく書いてみるとこんな感じ。中心の一点(消失点)に向かって線が伸びていっています。
まずは映画「シャイニング」に出てきた雪に閉ざされた山荘のホテル。室内の奥行きがしっかりわかります。
映画「フルメタル・ジャケット」の前半に出てくるシーン。
映画「時計じかけのオレンジ」の主人公が選ばれるシーンでも、見事に中心に向かって伸びる放射線上に立っています。
映画「フルメタル・ジャケット」から、頭と足とを交互にして寝そべる兵士たち。
映画「時計じかけのオレンジ」より、食事中の光景にも一点透視図法。
窓の向こうに消失点があります。
複数の人間が配置されても一点透視図法が崩れることがはありません。
映画「シャイニング」にてキーとなる巨大迷路の模型、これもきっちりと構図に合致しています。
映画「時計じかけのオレンジ」より、女性の足とネコの位置を放射線上に配置しています。
特に映画「シャイニング」の中では特に開発されたばかりの「ステディカム」を導入しているシーンでこの傾向が顕著であり、消失点に向かって人が歩いたり走ったりしていく映像が多く見られます。
2001年宇宙の旅
消失点を軸にして回ります。
こちらも奥行きがよくわかるように。
トイレ掃除を行う主人公たちの上半身の向きまで計算されています。
微笑みデブを中心にして完璧に放射線上に並んで腕立て伏せを行う兵士たち。
左側の三角にすっぽりと収まっている宇宙飛行士。
奥にいる男性に自然と目線がいくようになっています。
こちらもキッチリと構図に合致。
「アイズ ワイド シャット」の印象的なあのシーンでも。
映画「フルメタル・ジャケット」の後半でも。
銃口も消失点をとらえています。
ちょっと引いた画面でも構図は一点透視図法。
一点透視図法は絵画でもよく用いられ、有名なものではレオナルド・ダ・ヴィンチの最後の晩餐などもこの構図が用いられているのですが、映画では刻々と人物が動いていくため構図を維持し続けるのは非常に困難。その中で一点透視図法を効果的に見せるため、消失点から人が歩いてくる、あるいは人が消失点に向かって人が歩いていく、という映像が多く見られます。
消失点から人が歩いてくる様子は以下から。
一方こちらは人が消失点に向かって人が歩いていく様子。
なお、一点透視図法を用いて撮られた写真の例は以下から見ることができます。
29 Examples of One Point Perspective Black and White Photography
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