「インターネットでウワサを広めた」容疑で強制拘留、激化する中国の検閲
By Kai Hendry
中国は、政府にとって都合の悪い情報へのアクセスを検閲・規制するシステム「金盾」を始めとし、様々なインターネットへの検閲を行ってきました。現在、中国政府は「インターネットで偽のウワサを広めた」として一部のユーザーを拘留し始めているとの情報が報道されました。
China detains Internet users for spreading rumors
中国政府、ネット情報規制の再強化か―ツイッターなど新ツールで 2011/10/27(木) 15:44:31 [サーチナ]
「NETWORK WORLD」によると、中国政府は、雲南省で省の職員8人が殺害された事件について「犯人はセメント工場から公害が発生していることを理由に職員を殺害した」というウワサを流した容疑でユーザーを拘留。また、所得税引当金に関する州の文書を偽造し、インターネット上で誤った情報を流したとして、1人の男性が15日間拘留されたとのこと。
インターネット上の検閲は現在も強化され続けており、中国共産党の中央委員会全体会議では、「中国共産党中央の、文化体制改革を進展させ、社会主義文化大発展大繁栄を促進する上での若干の重大な問題に関する決定」が採択、26日にその全文が公開されました。すでに中国ではTwitterが検閲の対象となっていますが、新興のミニブログで日本にも進出している「weibo(新浪微博)」も同様に検閲の対象とすべく検討が行われているそうです。
2011年には1月にエジプトで反政府デモが発生した影響もあり、中国のインターネット規制に関する動きは加速しています。2011年の中国のインターネット規制に関する主な動きは以下の通り。
◆エジプトの反政府デモへの対応
1月25日、エジプトでムバラク大統領の辞任を求める反政府デモが勃発。これを受けて中国政府は、国内の改革を求める声に火を着けかねないと懸念し、大手ポータルサイト「新浪」と「捜狐」で、エジプトを意味する中国語「埃及」の2文字が検閲の対象となったとの情報が、台湾メディアによって伝えられました。
◆ヒラリー・クリントン米国務長官による批判
2月15日、ヒラリー・クリントン米国務長官は、ワシントン市内で行った演説の中で、中国やシリア、イランなどネットへの規制を強化している国家に対し「長期的には独裁者のジレンマに直面するであろう」と批判しました。
クリントン国務長官は、「“インターネットの自由”に対する、抑圧との戦いこそが、人権のための闘争である」と述べた上で、中国政府によるネット規制に対して、「成長と発展の障がいになる」と指摘しています。
◆中国版「ジャスミン革命」の集会開催への対応
チュニジアの「ジャスミン革命」やエジプトの反政府デモを受けて、2月20日および27日に、Twitterなどで中国版「ジャスミン革命」を呼びかける動きが起こりました。こちらは朝日新聞の報じた2月20日のデモの様子。
この最初の呼びかけのタイミングと前後して、中国国内からはアクセス出来ないサイトが急増。Twitterのつぶやきのリアルタイム検索ができなくなる、「革命」を含む文字列を検索するとGoogle自体にしばらくアクセスできなくなるなどの障害が発生しました。
◆国営検索エンジンのリリース
上述の規制強化と機を同じくして、2月22日、中国国営の新華社通信が、国営の検索エンジン「Panguso(盤古捜索)」と「Xinhuanet(新華網)」のサービスを開始。
米メディア「Wall Street Journal」は、「Pangusoは他の検索エンジンより厳しい制約を行っている」と指摘。例として、民主活動家Liu Xiaobo氏の名前を検索した場合、中国大手検索エンジン「Baidu(百度)」では同氏を批判する中国語のコメントへのリンクが検索結果に表示されるのに対し、Pangusoでは何の情報も表示されないことを挙げています。
◆「金盾」の開発者、講演中にクツを投げつけられる
5月19日、中国のインターネット検閲システムの開発者である北京郵電大学の方浜興(ほうひんこう)学長が、武漢大学で学術交流会に参加した際、学生からクツを投げつけられるという事件が発生。このことは中国のネット上で瞬く間に広まり、クツを投げた学生に対し、賞賛の声が集まりました。
下のムービーは、この事件に関する「新唐人テレビ」の報道です。
中国「ネット検閲の父」靴投げられる - YouTube
◆江沢民氏の死去報道に対する規制
7月6日、中国共産党創立90周年の祝賀式典に欠席した江沢民前国家主席が死亡したと海外メディアが報道し、中国のネット上で死亡説が瞬く間に拡大しました。
そうした動きに対し、「江」「江沢民」「心筋梗塞」「総書記」、入院先である「301病院」などの単語検索ができない状態になりました。この時インターネットの利用者は「江」を意味する「river(川)」を隠語に使って対抗したということです。
◆温州高速鉄道事故
7月23日、浙江省温州市で高速鉄道が脱線事故を起こし、多くの死者を出しました。原因究明が十分に為されないまま、突然事故車両が埋められるといった隠蔽(いんぺい)とも見られる事故処理が行われ、発表される事故原因も二転三転して世界中から批判を浴びました。
当局はインターネットの利用者が公然とネット上で政府の対応を非難するのを押さえられず、事故1週間後に報道規制が新聞各社に対して出されました。これに多くの記者が反発、「weibo(新浪微博)」などに規制の中身を暴露するいった行為に出ています。
【中国新幹線】 中国版新幹線の事故後処理映像。 - YouTube.flv - YouTube
◆ロンドン暴動を機に英国とネット規制の共同研究をもちかける
9月末、ロンドンを始めとした英国の多くの都市で起こった8月の暴動がSNSやツイッターで情報交換を行っていたことから、「SNSの乱用をいかに防ぐか考えなくてはならない」としてネット規制強化のための共同研究をもちかけました。
以後英国が共同研究に着手したという報道はなく、呼びかけに応じる可能性も低いとみられています。
中国当局の規制が激しさを増しているのは間違いありませんが、中国のインターネット利用者、そしてマスコミの一部記者らもこれにさまざまな手段で抵抗しており、高速鉄道事故の時には押さえられないほどの勢いになっています。
このまま締め付けを続けることによって中国の民衆の力を封じ込めることができるのか。それとも5億とも言われるインターネットの利用者たちが発言力を増し、中国社会や政府に対してより大きな影響力を持つようになるのか、その瀬戸際であるとも言えます。
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