世界No.1の日本製スーパーコンピュータ「京」は、「命を救える処理速度」
世界No.1の座に輝いた、富士通と理化学研究所が共同開発中のスーパーコンピュータ「京(けい)」の実物が「CEATEC JAPAN 2011」会場の富士通ブースにて展示されていました。「京」は第37回TOP500リストの第1位を獲得し、日本のスーパーコンピュータとしては2004年6月以来の快挙となったスーパーコンピュータです。
「次世代スーパーコンピュータ」 : 富士通
富士通ブースに到着。
「世界一を、日本の力に」というコピーが光ります。
「京」のことをまったく知らない人のためにプロジェクト概要などが書かれていました。
「京」は、文部科学省が推進する「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラの構築」計画の元に富士通と理化学研究所が共同開発しています。2012年の完成を目指しており、医療・防災・ものづくりなどさまざまな分野での貢献が期待されているとのこと。
10ペタプロップスという高性能を幅広く使えるようにLinuxをベースとしたOS、Fortran/C/C++などの言語環境、MPIをサポートと、汎用性の高さを重視しています。
1秒間に1京回(1兆の1万倍)もの計算性能によって、自動車の衝突解析や天気予報、心臓シミュレータといった具体的な活躍方法が想定されているそうです。
これが「京」のシステムボード。これ1枚に4つのCPU(SPARC64 VIIIfx)が搭載されており、「SPARC64 VIIIfx」は1CPUに8つのコアが集積されています。1ワットあたり2.2ギガフロップスという世界最高レベルの電力あたり性能を実現しており、稼働時に発生するCPUやICCからの熱は水冷によって取り除かれ、消費電力の減少や部品の長寿命化を可能としています。
そして、システムボードが1台に24枚搭載されたものがこちらです。このシステムラックが800台集まることでスーパーコンピュータ「京」となっています。要するに「京」の800分の1というわけ。
上側にはシステムボード部があります。
中央には電源部とIOシステムボード部。
そして下側にはサービスプロセッサボードやシステムディスク、システムボード部がありました。
2011年6月20日に世界一を獲得し、ようやく「命を救える処理速度」が見えてきました。
TOP500リストで首位を獲得。
先進各国はスーパーコンピュータの開発にしのぎを削っており、年率1.8倍ものハイペースで性能が上昇しています。
ちなみに、省エネスーパーコンピュータランキングでも世界6位とのこと。
それで、実際に「京」を使って何をするのかというと……
生命科学・医療および創薬基盤、新物質・エネルギー創成、防災や減災に資する地球変動予測といった分野が想定されています。
また、「物質と宇宙の起源と構造」という謎の解明や、次世代のものづくりにも貢献できるとのこと。
開発に当たって、高い志をもった開発者が「京」のために集っています。
これは「6次元メッシュ/トーラス構造のインターコネクト」というもので、「京」に8万個以上も搭載されているCPU間を相互に接続する革新的なネットワーク(インターコネクト)。「京」ではCPU間で計算結果などのデータをやり取りするためのネットワークがとても重要な役割を果たします。
「性能3倍、消費電力1/2以下」という厳しい目標を達成した、世界最高水準の新開発CPU「SPARC64 VIIIfx」。
なお、日本におけるスーパーコンピュータの歴史は1977年から始まっています。
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