サイエンス

学校でのスマホ禁止により睡眠が改善され気分も改善されることが研究で明らかに


オーストラリアで2024年11月に16歳未満のSNS利用を禁止する法案が世界で初めて可決され、スマートフォンから受ける悪影響から若者を守る試みが世界的に注目されています。イギリスのヨーク大学の心理学者チームは、スマートフォンの使用を禁止することで睡眠や健康、認知力など脳に実際にどのような影響を与えるかを中学1年生のグループでテストしました。結果として、学校主導でのスマートフォン禁止が睡眠と気分に良い影響を与えることを発見したと研究者チームは報告しています。

School smartphone ban results in better sleep and improved mo - News and events, University of York
https://www.york.ac.uk/news-and-events/news/2024/research/school-smartphone-ban-better-sleep/


ヨーク大学の心理学教授であるリサ・ヘンダーソン氏らは、イングランド南東部エセックスの都市であるコルチェスターにあるスタンウェイ・スクールの8年生(中学1年生相当)の生徒グループを対象に、21日間スマートフォンの使用を禁止するという実験を行いました。実験では、生徒たちが一連のテストを受けた後に生徒たちがスマートフォンを禁止されるグループと従来通りスマートフォンを使用できるグループにランダムに振り振られ、3週間後に改めてテストを実施してスマートフォン禁止の影響が調べられました。

スマートフォンを禁止されたグループの生徒たちは、禁止される前の1週間は平均就寝時間が23時2分だったのに対し、スマートフォンを禁止された週は50分早い22時12分が平均就寝時間になりました。また、スマートフォンの使用を禁止したグループの生徒は、うつに関連する感情が17%減少し、不安に関連する感情が18%減少し、全体的に動揺や緊張が減ったと報告しました。睡眠の質が向上したと報告した生徒は、心拍数にも変化が見られ、健康状態が改善したことを示唆していると研究者らは指摘しています。


一方で、スマートフォンの禁止により認知能力の大幅な向上は示されませんでした。実験の開始前と終了後に実施されたテストにおいて、スマートフォン禁止グループのスコアは3%向上しましたが、持続的な注意力には改善が見られなかったと結論付けられています。研究者らはこの結果に関して、「認知能力の変化が現れるには、今回定められた研究期間の21日間よりも長い時間がかかる可能性があることを意味しているのではないか」と推測しています。

ヘンダーソン氏は「この実験では、これまで過去に行われた研究と比べてはるかに長いスマートフォンの禁止期間が組み込まれており、学校でのスマートフォン禁止が睡眠、健康、認知能力、注意力にどのような影響を与えるかを見ることができました。調査結果から、14歳未満の子どものスマートフォン禁止は睡眠に良い影響を与え、睡眠の改善や全体的な気分の向上につながる可能性があることがわかりました」と実験の成果を報告しました。

また、研究に参加したエール大学心理学部のエマ・サリバン氏はオーストラリアなどが16歳未満のソーシャルメディア禁止を導入していることに触れたうえで、「若者の生活に影響を与える大きな決断を下すには、証拠収集が極めて重要であり、これについてはさらなる取り組みが必要です。私たちの研究結果は、これらの最初の結果であり、より情報に基づいた会話を始めるための興味深い出発点になるはずです」と研究の意義について語っています。

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in サイエンス, Posted by log1e_dh

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