テスラモータース、BBCの人気テレビ番組「Top Gear」のレビューが不当だと主張し提訴
アメリカの電気自動車メーカー・テスラモータースが、自動車を題材にしたBBCの人気番組「Top Gear(トップギア)」を提訴したと発表しました。
テスラによると、Top Gearはテスラ社の電気自動車「テスラ・ロードスター」のレビューを行った際、その挙動や信頼性について嘘を含んだ放送を行い、BBCに対して連絡を取ろうとしたものの無視される状態が続き、やむなく訴えたとのこと。
Top Gearといえばトヨタ・ハイラックスの頑丈さをとことんまで試してみたり、水陸両用車に改造したトラックでドーバー海峡を横断してみたりと無茶苦茶な企画をやっているほか、自動車レビューのシビアさでも知られ、ヒュンダイの「アクセント」は「こいつは『アクセント』じゃなくて『アクシデントだ』」と言われたりしています。
Tesla vs. Top Gear | Lawsuit: Tesla sues Top Gear for libel and malicious falsehood | Tesla Motors
現地時間3月29日(火)、テスラは誹謗中傷および悪意ある虚偽を放送したとしてBBCのテレビ番組「Top Gear」を訴えました。テスラの主張している、Top Gearの誤りは以下の5点です。
1.番組のレビューにおいて、テスラ・ロードスターが充電を使い果たしたとして、4人の男によってTop Gearのハンガーまで押して移動させられたこと
2.ロードスターの航続距離が211マイル(約340km)ではなく55マイル(約89km)だという発言
3.レビューで使用したロードスターのうち1台のモーターがオーバーヒートして動かなくなったということ
4.もう1台もブレーキが壊れていたということ
5.これらはTop Gearがロードスターの提供を受けた時点では問題なかった
テスラはBBCに対して誤った内容を含むものを放送するのはやめて欲しいと連絡を取りましたが、BBC側は連絡を受け取らず、この内容はBBCでの放送のほかに全世界への番組販売、インターネットでの配信などによって何億もの視聴者が目にすることになりました。また、DVDにも収録されて販売が行われています。
Top GearはロードスターやそのEV(電気自動車)技術を不当に中傷している、というのがテスラの言い分です。この件でテスラは具体的な請求額は指定していませんが、訴状によると最高で10万ポンド(約1340万円)の賠償請求となる模様。テスラは実際にこの訴状をサイト上にアップしています。
なお、Top Gearがテスラ・ロードスターのレビューを行ったのは2008年12月14日に放送したシリーズ12 エピソード7でのこと。
実際にどのようなレビューを行ったのかというと、まずはテスラ・ロードスターのベースになったロータス・エリーゼとのドラッグレースを実施。
番組司会者のジェレミー・クラークソンはロードスターに乗って、最初はエンジン音の静かさにいぶかしげな表情を浮かべます。
しかし、いざ走り出してみるとその速さを「さようならダイヤルアップ、こんにちはブロードバンド・モータリング!」「この車はまさにエレクトリック(電気自動車であり、かつ稲妻のように早い)だ!」と絶賛。
一方で、重いエンジンを搭載しないことから足回りはコーナリング性能よりもスピンしない方向性で固められていると、ややネガティブなニュアンスで表現。しかし、やはり直線の早さは気に入ったようで、「これからは電気の時代だ」と高らかに宣言していました。
ところが、このあとにテスラの主張にもあるようにロードスターが停止。番組では「ガソリンなら給油はものの2~3分で終わるが、充電は16時間かかる」「これじゃスコットランドまで3日かかってしまう」と酷評、結局は「すごい技術の結晶だが、惜しむらくは現実世界では動かないことだ」という評価に終わっています。
これがテスラを激怒させた、大人4人でロードスターをハンガーまで押してくる様子。
番組恒例、覆面ドライバーのザ・スティグによるタイム計測も行われました。タイムはポルシェ911GT3と同じでした。
ジェレミーが自身のコラム「Jeremy's Review」の中で語ったところによると、収録時の事象についてテスラは何も言わなかったものの、GuardianやNew York Times、Daily Mailなどのメディアから「Top Gearはインチキだ」と激しい攻撃を受けたそうです。そしてコラムの中で改めて「それでもテスラ・ロードスターは女性を誘うぐらいにしか使えない」と斬っています。
Top Gearはこの件について争う姿勢を見せているとのこと。
追記:
2011年10月、裁判所は番組側勝訴の判決を下しました。Top Gearはあくまで娯楽番組なので、そこで出された結論は娯楽ゆえのものである、という判断によるものです。
この内容に納得がいかないテスラモータースは2012年にもう一度裁判を起こしましたが、こちらも棄却されています。
・関連記事
車は落雷を受けても大丈夫なのか、実際に人を乗せて実験したムービー - GIGAZINE
プラスチック爆弾でも破壊されない史上最強の市販車「マローダー」 - GIGAZINE
「ミニvsポルシェ」は2秒差でポルシェ勝利、ミニは「1秒早く走るのに3万8千ドルかかる」と主張、ヒュンダイには沈黙を保つ - GIGAZINE
「プライベート・ライアン」冒頭のオマハ・ビーチへの上陸作戦を3人で再現したムービー - GIGAZINE
フォードを時速190kmで壁にぶつける実験のムービー - GIGAZINE
電気自動車1台だけでイベントのねぶたの光を全て供給する「i-MiEVねぶた」 - GIGAZINE
・関連コンテンツ