一晩で地球外生命体を発見するかもしれない「超大型望遠鏡」がチリで建造中

by ESO
遠く離れた惑星に生命がいるかどうかを調べる生命探査では、その惑星に大気があるかどうかやその大気組成が重要な手がかりになりますが、小さな惑星のごく表面を薄く覆っている大気の層を観測するのは非常に困難です。チリで建造が進められ、2029年に稼働を開始すればものの数時間で太陽系外惑星の大気の成分を把握できる「超大型望遠鏡(Extremely Large Telescope)」について、非営利の天文学ニュースサイト・Universe Todayが解説しました。
ELT | ESO
https://elt.eso.org/
[2503.08592] There's more to life in reflected light: Simulating the detectability of a range of molecules for high-contrast, high-resolution observations of non-transiting terrestrial exoplanets
https://arxiv.org/abs/2503.08592
The Extremely Large Telescope Could Sense the Hints of Life at Proxima Centauri in Just 10 Hours - Universe Today
https://www.universetoday.com/articles/the-extremely-large-telescope-could-sense-the-hints-of-life-at-proxima-centauri-in-just-10-hours
チリ北部にある標高3000メートルのアマゾネス山で建造が進められている超大型望遠鏡(ELT)は、主鏡アレイの有効直径が39メートルに達する文字通り巨大な望遠鏡で、完成すればハッブル宇宙望遠鏡の16倍鮮明な宇宙の画像を提供できるとされています。

by ESO/L. Calçada
そんなELTの最も強力な能力の1つが、太陽系外惑星の大気から放たれる微弱な大気スペクトルを捉える機能です。現行では、他の惑星系の大気を調べるのには、その惑星が主星の前を通り過ぎる瞬間に惑星の大気を通り過ぎたごくわずかな光を捉えて、その吸収スペクトルを分析するトランジット法が用いられています。これにより、惑星に水、二酸化炭素、酸素など生命にとって重要な成分があるかどうかが特定できますが、そのデータは必ずしも決定的ではありません。
例えば、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が地球から約40.5光年離れたTRAPPIST-1という恒星を周回する惑星を調べた結果から、これまでのところTRAPPIST-1bやTRAPPIST-1cには大気がないと思われていますが、そのデータは大気の存在を否定できるほど強力ではありません。しかし、ELTならJWSTでは観測することができなかった薄い大気からのスペクトルを捉え、本当にそれらの惑星に大気がないのかどうかをはっきりさせられると期待されています。
さらに、トランジット法では他の星の前を惑星が横切った時しかその惑星の調査ができませんが、ELTの精度であれば恒星の反射光を利用して星の前を横切らない太陽系外惑星のデータも収集することが可能だと見込まれています。

by ESO/L. Calçada/ACe Consortium
そのことを検証するため、ワシントン大学の天文学者であるビクトリア・メドウズ氏とマイルズ・カリー氏は、太陽系外惑星としては最もポピュラーな赤色矮星(わいせい)の周りを回る惑星の観測シナリオをシミュレートしました。
テストケースとなったのは、水や光合成植物が豊富な「非工業化時代の地球」、生命が繁栄し始めた「初期の始生代地球」、まだ生命は存在しないがこれから生まれる可能性を秘めた「生命誕生前の地球」、地球に似ているものの火星や金星のように海が蒸発した「偽陽性の星」の4つです。また、比較のために海王星サイズの星も追加でシミュレーションされました。
地球や地球に似た不毛の星を研究テーマに選んだ目的は、ELTが地球のようなさまざまな惑星を区別できるかどうか、そしてその観測データに偽陽性や偽陰性を判断するための手がかりが含まれているかどうかを確認することです。もし、誤検知の兆候がELTのデータに含まれていなければ、生命がいるのにそれを見落としたり、逆に不毛な星を生命があふれる星だと勘違いしたりしてしまうリスクがあります。

by E. Garcés/ESO. Ack.: N. Dubost
検証の結果、研究グループは比較的近い惑星系であれば正確ではっきりとしたデータが得られることを突き止めました。例えば、地球に最も近い恒星であるプロキシマ・ケンタウリの周囲を回る惑星の場合、わずか10時間の観測で地球に似た惑星に生命がいることを検出できたとのこと。また、厚い大気を持つ海王星サイズの惑星なら1時間も観測すればその大気スペクトルを捕捉できました。
初めて望遠鏡に光を入れる「ファーストライト」を2029年に予定しているELTについて、Universe Todayは「もし近くの惑星系に生命が存在すれば、ELTはそれを検出できるはずです。おそらく人類史上で最大の疑問に対する答えが、わずか数年のうちに見つかるかもしれません」と述べました。
なお、ELTの建造が進められている様子は以下から見ることができます。
Webcams | ELT | ESO
https://elt.eso.org/about/webcams/

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in サイエンス, Posted by log1l_ks
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