携帯電話や携帯音楽プレーヤーで音楽を大音量で聴くと、音を鮮明に聞きとる力が弱くなる
By icedsoul photography .:teymur madjderey
国の研究機関である自然科学研究機構に属する生理学研究所の発表によると、周囲の雑音が騒々しい場合に携帯音楽プレーヤーや携帯電話の音量を上げ、大音量で音楽を聞き続けると、聴覚検査は正常であっても雑音の中から音を聞き分ける力(音を鮮明に聞きとる力)が弱くなることを明らかにしたとのこと。
どういうメカニズムでこうなるのかという詳細は以下から。
携帯音楽プレーヤー常用者に注意!「音の鮮明な聞き分け」に対する聴覚異常大音量で聞き続けると、知らず知らずに、鮮明に音が聞こえなくなる/自然科学研究機構 生理学研究所
今回、自然科学研究機構生理学研究所の岡本秀彦准教授、柿木隆介教授とドイツの研究グループは共同で、騒々しい状況下で大音量で音楽を聞き続けると、聴覚検査は正常であっても、雑音の中から音を聞き分ける力(音を鮮明に聞きとる力)が弱くなることを明らかにしたとのこと。
これは一つ一つの音を聞かせて聞こえを検査する通常の聴覚検査では明らかにならない「音の聞き分け(音の鮮明さ)」に関わる聴覚の異常であり、今後の検査方法の在り方にも提言を与える研究成果だそうです。
まず研究グループは、生体磁気計測装置 MEG(magnetoencephalography)を使い、音に対する脳の反応を記録し、普段から大音量で携帯音楽プレーヤーを聞いている13名の若者(常用者)とそうでない若者13名(非常用者)に、映画を観させるなどリラックスしている状態で、雑音とともに特定の周波数の音を聞かせ、その時の脳の反応を記録。すると、雑音の中から音を聞き分ける能力が、携帯音楽プレーヤー常用者の方が弱くなっていたそうです。静寂の中で集中してもらい、特定の周波数の音が聞こえるか聞こえないか検査する通常の聴覚検査では、常用者でも非常用者でも違いはないことから、これまでの検査方法では見落とされる聴覚の異常ということです。
岡本准教授によると「これまでの検査方法では聴覚正常といわれても、知らず知らずに音を鮮明に聞き分ける能力が落ち、脳や聞こえの神経に負荷がかかっていると考えられる。雑音が騒々しい場所で携帯音楽プレーヤーを楽しむ時は、大音量にするのではなく、ノイズキャンセラーなどの機能を使って音は控えめにして欲しい」と訴えています。
これがMEGで記録した脳の聴覚反応
常用者と非常用者の聴覚反応の大きさを比較するとこうなります。
つまり、雑音の中での音の聞こえ方は知らず知らずのうちに悪化しており、これが脳や聞こえの神経に負荷をかけてしまっていると考えられ、今後こうした異常を早期に発見するためにも、こうした音の鮮明さを反映できる聴覚検査であるhearing in noise test(雑音がある中で音を聞き分ける検査)なども行われるとよいと考えられるとのこと。
また、大音量の音を聞き続けることが知らず知らずの間に聴覚の異常を起こしているものと考えられるため、周囲が騒々しく雑音が多い場合には携帯音楽プレーヤーの音量を上げるのではなく、周囲の雑音をキャンセルするようなノイズキャンセラーなどの機能を使う方がよいだろう、ということです。
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