15テラバイトのメモリ・2880個のCPU・2億ページ分のデータを駆使して史上最強のクイズ王と対戦中のIBM製スーパーコンピューター「WATSON」とは?
IBMの科学者25人が4年がかりで開発、200万ページを3秒以内にスキャンする威力で2億ページ分の文章(100万冊の本に相当)を取り込み、15テラバイトのメモリ・2880個のCPUを積んでLinux搭載の「IBM POWER 750」サーバ10ラック分(大きさは冷蔵庫10台分程度)、1秒間に80兆回の計算が可能というとんでもないスーパーコンピューター「WATSON」。
これと戦う史上最強のクイズ王ジェニングス氏は74回連続の優勝記録を誇り、稼いだ賞金総額は250万ドル以上。さらにもう1人のラター氏は325万5102ドルを獲得したというこれまた化け物じみた賞金王。いわば、「スーパーコンピューターvsクイズ王vs賞金王」という三大怪獣大決戦並みのとんでもない対決が昨日から3日間連続で行われることになっており、現時点の1日目終了時点では「同点」ということになっています。
そんなわけで、このIBM製スーパーコンピューター「WATSON」の実機写真や舞台裏は以下から。
IBM - Watson
http://www-943.ibm.com/innovation/us/watson/
クイズ番組でコンピューターが答えることが可能となると、「Googleで検索すれば終わりだろう」みたいな感じになってしまうため、Watsonはなんとオフラインで稼働しており、そのため山ほどのデータを記録しており、回答もちゃんと音声で行います。
以下がWatsonの実物の写真。
本体はこっち
接続中
IBMのロゴ
サーバ
Watsonは「DeepQA Project」という人工知能による自然言語処理・情報検索・機械学習・知識表現と推論の統合・自動的な問題解答技術などを目的とした研究の一環となっています。機械学習による推論がもとになっており、この点が類似の人工知能プロジェクトとの最大の差になります。
実際にWatsonが稼働している様子は以下のムービーで見ることが可能です。
YouTube - Jeopardy! (Season 27.23-1) - Ken, Watson, & Brad [Pt.1 of 2]
YouTube - IBM Watson: A System Designed for Answers
WatsonはIBMの初代社長であるトーマス・J・ワトソン氏から由来しており、「そもそも、ドクター・ワトソンを作りたいというのがわれわれの大きな目標だった......アフリカの医師が、クラウドを通して世界中の医療テキストにアクセスできる所を想像してほしい」という意味も込められているそうです。
今回戦うことになるクイズ番組「ジョパディ!」は1964年から1979年、さらに1984年から現在に至るまで放送されているアメリカの人気クイズ番組。ルールはこんな感じです。
毎回3人の解答者(うち1名は前回放送時のチャンピオン)による対戦。
問題は司会者アレックス・トレベックが発表した6つのジャンルから$200から$1000までの5枚(2000年までは$100から$500まで)、計30問の中から出題される。第1問は1番目の解答者が無作為で選び、第2問からは原則として正解した解答者が問題を選ぶ。得点が高い問題ほど、難しい問題となっている。
問題は全て早押し形式で、正解すればその問題の金額を加算。不正解および時間切れ(5秒以内に答えなかった)は、その問題の金額が引かれる。
また、30枚中1枚だけ「デイリーダブル」と呼ばれるボードが隠されている。これを引いた場合、その問題は引いた人にのみ解答権が与えられる。まず、持ち金の中から幾ら賭けるかを設定(持ち金に関係なく$500まで賭けられる)。その後問題に答えて正解なら賭け金分が加算され、不正解なら賭け金分減算される。
前半戦30問「ジョパディ・ラウンド」が終わると、後半戦30問「ダブル・ジョパディ・ラウンド」に移る。ダブル・ジョパディ・ラウンドでは金額が$400 - $2,000と倍になり、更にデイリーダブルも2枚隠されている。
ダブル・ジョパディ・ラウンドが終わると最終問題のファイナル・ジョパディに移るがラウンド終了までに賞金を$1も獲得できなかった解答者はその時点で失格となり、ファイナル・ジョパディに進むことができない。ただしセレブリティ・シリーズの場合は特例として、賞金が$1も無くても$1,000が支給されてファイナル・ジョパディに進むことができる。
つまり、単純な早押しクイズというわけではなく、掛け金の方法などの戦略も最終的な勝利を収めるには必要になってくると言う方式であり、事実、最終的な勝利者以外は何も獲得できないため、過去にはチャンピオンの自滅を狙ってひたすら1ドルずつ賭けるケースもあったそうです。
で、これが実際に放送された番組。
YouTube - Jeopardy! (Season 27.23-1) - Ken, Watson, & Brad [Pt.1 of 2]
YouTube - Jeopardy! (Season 27.23-1) - Ken, Watson, & Brad [Pt.2 of 2]
初日の結果自体についてはAFPBBが詳しく書いています。
人間とコンピューター、米人気クイズ番組で激突 写真2枚 国際ニュース : AFPBB News
2006年から米ニューヨーク(New York)にあるIBMの研究センターで開発が進められてきたワトソンは、インターネットに接続されておらず、複数の手順で高速に検索を行い、正答に近いと思われる順番に百分率で並べて、最も確度の高いものを回答する。
ワトソンは、他の2人が200ドル(約1万7000円)だけしか獲得できていなかった時点で一気に4000ドル(約33万円)まで積み上げたものの、その後調子が悪くなり始め、別の回答者が誤答だったのにそれと同じ回答をするなど、奇妙な行動を始めてしまった。
結果は、5000ドル(約42万円)を獲得したワトソンとラターさんが首位に並び、2000ドル(約17万円)を獲得したジェニングスさんが追う形で初日を終えた。
最終的にどうなるのか、要注目です。
・関連記事
スーパーコンピューターはこのままでいくと2025年には人間の脳をシミュレーションできるようになる - GIGAZINE
エヴァのスーパーコンピューター「MAGIシステム」は実在する - GIGAZINE
アメリカ空軍、軍用のスーパーコンピューターを作るためにPS3を2200台発注へ - GIGAZINE
ヨーロッパ最強のスーパーコンピュータは礼拝堂内に設置されている - GIGAZINE
・関連コンテンツ