これからは大人の事情の戦略は通用しない、サンライズ宮河常務の語る今後のコンテンツ産業の新マーケティング
2月3日にデジタルハリウッド大学にて開催された「アニメ・ビジネス・フォーラム+2011」にて、株式会社サンライズの宮河恭夫プロデューサーが「機動戦士ガンダムUC」の革新的なウインド戦略(ウインドウ戦略)について講演を行いました。
従来の商習慣や常識を覆す野心的な戦略で、宮河プロデューサーの哲学や強い信念が垣間見える内容となっています。「中身が見えない状態で買ってもらう」形から「すべてを見せた上で買ってもらう」形への転換をポジティブにとらえた新たなマーケティングの形態は、アニメのみならず、今後のコンテンツ産業にとって重要な視点となるかもしれません。
一例として、PlayStationNetwork(PSN)で配信した機動戦士ガンダムUCはSD画質のものよりもHD画質の方が圧倒的に見られており、5万人以上の人が視聴したそうです。
◆都条例について
サンライズ 宮河恭夫常務取締役(以下、宮河):
サンライズの宮河でございます。今日は1時間、「ガンダムUCにおけるウインド戦略」ということについてお話させていただきます。東京都のことについては、エンタテイメントに関わる人間として、個人的にはつまんないことやってるなという感じはしますが、会社としてどうするということはありません。
◆ウインド戦略とは?
宮河:
まずウインド戦略とは何かということですが、今までは映画が出てから何ヶ月ウインドを開けてDVDを出しましょうとか、そういう期間を取ることをウインド戦略と言っていました。昔は映画を公開して6ヶ月してからDVDが出たりしていたんですが、その期間がだんだん短くなって、今では4ヶ月くらいでしょうか。洋画劇場なども今のウインド戦略の中ではDVD発売後です。これは法律で決まっていることではなく、まったく単なる大人の事情です。
例えば「ソーシャルネットワーク」を映画館で見て、これ面白いな、Blu-ray欲しいなと思うとします。それが3ヶ月後とか4ヶ月後、街を歩いてBlu-rayが売っていたとしても、ほとんど買わないんですよね。もう忘れてるから。入ってくる情報量がこれだけ多いと、3ヶ月とか4ヶ月後になったら、よっぽど欲しい物以外は忘れられてしまうと思うんですよ。
でも大人の事情を言う人たちは、映画と同時にDVDやBlu-rayを売った場合映画館に人が来なくなるんじゃないかと考えるようです。顕著な例で言えば、バンダイビジュアルで機動戦士ガンダムSEEDという番組をNTTフレッツで見られるようにしたんですが、テレビ局からは視聴率落ちたらどうするんだという話がありましたし、バンダイビジュアルの会社からはネットでやったらDVD売れなくなるでしょという話がありました。8年くらい前の話ですね。
これもみんなが各社の利益代表という顔をしながら、消費者のことをまったく考えてなかった結果だろうなと思います。僕はこれをおかしいなとずっと疑問に思っていて、どこかで変えていきたいという気持ちがすごくありました。
そういう中で、たまたまガンダムSEEDとか、その続編の機動戦士ガンダムSEED DESTINYとか、機動戦士ガンダム00をやってたんですが、SEEDとかDESTINYっていうのは、極端に言うと1stのファンを切り捨てたような作品で「ユニバーサルセンチュリー(宇宙世紀)に引きずられてる人は見なくていいよ」って感じで作りまして、かなり批判を浴びました。でも、新しいことをやったおかげで、新しいファン層ができて、新しいガンダムが築けたと思ってます。
◆ガンダムUCの誕生
宮河
ただ、30年間ガンダムを支えてくれた人たちに新しいものを提供しないっていうのはまずいなとはSEEDをやってたころからずっと思っていまして、映像をいきなり作るのはしんどいし、漫画ではなくって、小説から作ってみようかなという風に思いついたのがガンダムUCです。ユニバーサルセンチュリーのファンというのは30代~40代に多いので、漫画よりも文字からのほうが面白いかなと。
福井晴敏さんという小説家がいまして、「亡国のイージス」や「終戦のローレライ」を書いた人なんですが、非常にガンダムが好きで、ターンAガンダムの小説も彼が書いていて、非常に力のある人だなと思っていました。富野監督や安彦(良和)さんも、福井さんはユニバーサルセンチュリーのことをよく分かってるんで、続き物を書いてもいいんじゃないかっていう話が、2004年くらいからありました。それで、UCで新しいものを作りましょうよという話を福井さんとしました。
ガンダムエースで2006年の12月から連載して、それを徐々に単行本にしていこうと。この時に福井さんと話して、1500円とか2000円するハードカバーじゃなく、ジャンプコミックのような短い本で出したいという福井さんの希望があり、ガンダムエースで連載していたものをコミックエースという新しい装丁の本で出しました。そして今度は文庫になるときに、角川文庫とスニーカー文庫で出たんですが、角川文庫の「ユニコーンの日」という表題で出したものは、キャラクターの絵が一切入っていません。スニーカー文庫のほうには入っています。大人がちゃんと読めるようにしようよということですね。
大きな本で作ると、電車の中で読めないし値段は高いし、あまりいいことないんだろうなと思っていたんですが、小説家にはハードカバーこそ本なんだと考える人も多いそうで、そういう意味では福井さんは大したものだな、と。そういうのを全部捨てて、読みやすい物を作ろうよという提案をするっていう、これも新しいやり方なのかなと思います。
◆ガンダムUCを映像化する
宮河:
映像的にはSEEDとか00とかをやって、各巻十数万枚売れて、SEEDとDISTINYだけで300万枚以上売ってると思いますが、非常に記録的なヒットを出している中、昔のユニバーサルセンチュリーのファンは「サンライズは俺たちを無視しているのか」と怒っていたのが2006年のころですね。僕の中では、そうは言ってもちゃんとユニバーサルセンチュリーファンのためにユニコーンを作ってますよ、というのがあったんで、あまり批判は気になっていなかったんですが、映像化はずっと考えていました。
ただ、小説のほうがほぼ完成の状態に入ってから映像化をやろうと考えていて、福井さんには最初まったく映像化を考えずに自由に小説を書いていただきました。あの人は自由に書かせるとすごく長くなっちゃうので、思ったより長くなったかなというのが今の感想ですね。それで2009年4月にガンダムエースで映像化を発表しました。このときすでに僕の頭の中ではどういう映像にしようかなというのがありました。ちょうど「24 -TWENTY FOUR-」を代表とするアメリカのドラマが流行っていたころで、本編が45分程度の作品にみんな慣れていて、僕も45分くらいが一番見ていて心地よい結末を迎えられるテレビなのかなと思っていました。そういう意味で、だいたい30代のターゲットを考えていたので、地上波の30分テレビアニメではなく、45分のフィルムにしようと。
45分のフィルムというと、アニメ界の人はOVAとかを思い浮かべると思うんですが、OVAもちょっと違うなと。ウインド戦略を壊すためにどうやったらいいか、ということを考えて、映画館でやってるけどネットでも見ることができて、映画館に行ったらBlu-rayが置いてあるという、3つ一緒にできないかな、という風に考えてました。バンダイナムコグループとして映画館は持っていないですが、ほかの部分はグループ会社としてだいたい持っていて、DVD、Blu-rayを早く出すことで迷惑をかけるとしても同じグループ会社の中なんで、やってみようかなと。
そういうわけで、ガンダムUCのエピソード1では、イベント上映、有料配信、Blu-ray先行発売の3つを同時にやりました。ホントは45分でやりたかったんですが、45分じゃユニコーンの本体が出てこないっていうことで、60分になりました。テレビだと規制があって、40分以内に収めなきゃいけないといったような制約があります。制約の中でいかに番組を作っていくかということも重要なことなんですが、今回は「ユニコーンはどのくらいで出てくるの?」「60分くらいです」「じゃあ60分くらいでいこう」って感じで、わりと自由に尺を決められたのも面白いところですね。
◆新しいウインド戦略の波紋と結果
宮河
それで、まずやはり有料配信が物議を醸しまして、有料配信をしちゃうと映画館に人が来ないんじゃないかとずいぶん映画関係の人から言われました。でも僕は「関係無いよ」と。映画館というの大きな画面で見るわけだし、有料配信っていうのはネットで見るので限られたサイズの画面でしか見られないということで。ただ実は有料配信に関してもクオリティの高いものを見てもらいたいというのがありましたので、安定的なHDが見られる環境でPlayStation Network(PSN)が当時一番だったのと、ガンダムUCのターゲット層がPS3の購買層と合致したので、PSNと組んで最初はHDで独占配信しました。ちなみにここでも面白いデータが出て、HDとSDでのネット配信では、HDの購入数のほうが圧倒的に多かったです。
結果的にイベント上映、有料配信、そしてBlu-rayがどういう効果をもたらしたかというと、おかげさまで成功だったと思います。エピソード2のときは、映画館用に5000枚用意したBlu-rayが1日で売り切れてしまいましたので、エピソード3では1万枚は用意しようと思っています。公開している映画館10館でそれだけ売れて、一般市場では20万枚を超えるヒット作と考えています。先ほど言ったPSNでも非常に高い数字が出ていますので、みんなが考えてる大人の事情のウインド戦略っていったいなんだったんだろうな、というのが今の感想ですね。
僕はいつも営業戦略を考えるとき、自分だったらどうかなってことしか考えてなくって、映画館で見たときはその場でBlu-rayが欲しい、忙しくて映画館に行けないときはネット配信で見たい、そういうユーザー目線に立って考えています。今までの収益構造とか習慣を考えてものごとを進めても、ものは売れないし、お客さんも喜ばないんだろうなと思います。
ちなみにイベント上映は2週間に絞りました。劇場が終わった翌日から一般のお店でBlu-rayが買えるという形。映画館に行って、映画館では定価でしか売っていないので、2週間我慢してAmazonで買えば安くなるんですよね。だから映画館では売れないんじゃないかな、と思っていた部分が正直に言うとありました。それで5000枚という数字だったんですが、エピソード2ではそのためにご迷惑をおかけしてしまいまして……多少安く買えることよりも2週間早く手に入れることを選ぶ人がたくさんいるんだな、ということがすごくよく分かりました。
お客様によっては人よりも早く買えることを、割引率よりも重視してくれる人がいると。ただそうは言っても同じ物を売るわけにはいかないんで、劇場で売る物はジャケットが違ったり、シナリオを付けたりしてます。
◆「ディスクが売れない」は言い訳
宮河:
これは営業戦略とは違うんですが、最近よく言われる「板(DVDやBlu-ray)が売れない」というのは言い訳で、知恵が足りないだけじゃないかと思っております。最近の傾向を見ていると、ガンダム00という作品、2月発売ということをバンダイビジュアルでは言っていたんですが、「何言ってるの、12月発売にしようよ」ということを言ってウインド期間をめちゃくちゃ短く設定しました。年が明けちゃえばみんな気持ちも入れ替わるし、売れるわけがないんですよ。やっぱり00のファンってだいたい高校生とか大学生なので、お年玉とか年末の時に売らないとしょうがないだろうなと。
これもまた売れたんですが、数を見ると9800円のBlu-ray限定BOXが圧倒的に売れて、普通のDVDはあんまり売れない。ちょっと前に「銀魂」の映画をやったんですが、やっぱり圧倒的に売れるのは限定版。限定版がすべてとは思わないけれど、やっぱり映像を買うというよりは、ちゃんとパッケージで売るべきだろうなという風に思っています。なのでガンダムUCでも、一般発売は普通の商品、劇場で買うとシナリオがついていたりする限定版にしました。それが2週間待って20%OFFのものと、定価でしか買えないものの差なのかなと思っています。
それで、地上波とかそういうのは最後に見てもらおうと思っています。劇場、配信、Blu-ray、最後に地上波という流れで、これは僕のウインド戦略です。そういう意味ではテレビ局に地上波で放送してくださいというよりは、地上波で放送したほうがお客さんが喜びますよ、という部分でやっていただいていると思っています。
エピソード3が来月5日に公開となって、本当は2週間後にBlu-rayを売るべきなんですが、前回品切れしてしまったので、十分な数量を用意するために今回は4週間のウインド期間を設けております。
◆これからの展開
宮河:
これからの展開なんですが、映画とかテレビとか、Blu-ray、DVDとか、会社の利益の関係を考えてバラバラ出すよりも、一緒に出すべきだろうというのを、もっと進めて行きたいと考えています。僕はSEEDが終わったころから、音楽と映像を絡めた大規模なライブをやっていて、去年の4月にバンダイナムコライブクリエイティブというライブの会社を立ち上げました。これは僕の中のウインド戦略の一環なんですが、これからはバンダイナムコグループとして映像、ライブをどうくっつけて展開していくのか、それとネットをどうするのか、それらをもっともっと近づけて行きたいなと思っています。
例えば、もういろんな会社さんがやられているライブビューイング。これも去年国技館で銀魂のライブをやったんですが、映画館は全国で27スクリーンくらいライブビューイングに使いました。今度は4月にまた国技館で銀魂のライブをやるんですが、2回やってたぶん各1万人ずつ、合計2万人くらいの来場。ライブビューイングは50スクリーンくらいで1万人を超えるんじゃないかなと見ています。これからはライブ会場で1万人、ライブビューイングが2万人、計3万人がライブを見て、その上に板を売っていくという。
特典映像というと簡単なんですが、今度バンダイナムコゲームスでGジェネレーションというゲームが出るんですが、その特典として去年僕がやった「赤の肖像 ~シャア、そしてフロンタルへ~」という作品のDVDをつけました。3月発売ですが、おかげで受注状況が非常に良くなっています。冷静に考えるとPSPにDVDをくっつけるとか、変な商品なんですが、非常に好評です。
上映、Blu-ray、ネット配信、これらのものがどれだけ同じような時期に展開していくのか、今後のバンダイナムコグループとしてはそこを考えていくべきなのかなと思っています。そのためにいろんな会社を新しく立ち上げつつ、みんなで協力できるような形を整えていこうと。映画館を持とうということではないんですが、今うちのグループには映像を公開できるメディアが無いので、そこを持てば全体が同時に展開できていくのかなと。イベント上映というのも、通常の上映ではBlu-rayとかDVDを売っちゃいけないとか、いろんなしがらみがあったりするので、そういうものをいかに壊していくかっていうのが、ものすごく大切なことなのかな、と思っています。
それではなにかご質問があればどうぞ。
◆質疑応答
Q:
ガンダムUCの有料配信は全体の中でどのくらいの収益があるんですか?
宮河:
ネット配信だけで制作費くらいを出したいな、と思っていますが、まだそこまでは至っていません。ネット配信に関しては、ガンダムUCでは全世界同時にやってます。ネット配信するのは、例えばブラジルに住んでいる中国人の方がネットで作品を見て、中国語のガンダムUCをAmazonで買えるようにしたい、というのが僕の考え方です。Blu-rayには6言語くらい入っていて、6言語あると全世界の70%くらいの人が楽しめるんですね。収益については、PSNのHDで1000円という値段で5万人以上の人が見ています。3週間後にはネット配信を開放しているので、その数倍の人が見ていただいています。商売になりそうだな、という感じですね。
Q:
ネットの口コミはそれほど気にしないというお話でしたが、マーケティング面においてユーザーとのコミュニケーションについてはどのようにお考えですか?
宮河:
ネットは面白いなと思っていて、マーケティングの人間にはTwitterをちゃんとやらせるようにしています。我々がやるライブっていうのは非常に収益性が高いんですが、なぜかというと広告宣伝費をほとんど使っていないからだと思っています。来月もガンダムUCの先行上映会をやるんで何日か前にTwitterでポンと情報を流したんですが、チケットは非常に売れてます。Twitterだけじゃないんですが、いろんなコミュニケーションを会社としてやるようにしています。あとはもう、何を書かれてもかまわないんで、SNSはちゃんとやっていきたいなと思っています。
ことガンダムに関して言うと、日本だけじゃなく、アジア全域に同時にできるような展開をしていきたいと考えていて、ネットのコミュニケーションという部分で言うと、バンダイチャンネルを作った頃からノウハウが溜まってきているのと、プロモーションとして最近Twitterなどの非常に面白いツールが出てきたので。広報の人間とファンが直接やりとりができる時代になったんだな、という感じがします。
それ以外にもバンダイナムコライブクリエイティブではいろいろと面白いことをやっていて、ミュージシャンの浅倉大介という人のライブをやったりしてるんですが、そこでTwitterと連動したり、ニコ動と連動したりしていますので、ライブクリエイティブにはニコ動とかTwitterのノウハウが溜まってきています。今度はそれをどうサンライズとかバンダイビジュアルに生かしていくかというのが今後の展開ですね。
Q:
ガンダムというキラーコンテンツを持っていて、Webのチャネルも持っていて、なかなかほかの人には真似しづらいところもあると思うんですが、ガンダム以外でも新しいウインド戦略は有効だと考えますか?
宮河:
ガンダムってキラーコンテンツと言われますが、SEEDの前は相当落ち込んでいたんですね。SDガンダムで支えていたような時代が10年以上あったんですね。それを考えた上でウインドが無くなると言うことは、いい物を作らないと一瞬で見放されるということですね。昔OVAというのがあったと思うんですが、OVAっていうのは……言ってしまうとビニ本みたいなもので、「この人が作ってるから買う」というので中身が分からないまま買っているところがありました。これからは全部を見せて、その上で買っていただくというのが重要かなと思います。
僕がアメリカで過ごしていた時期、バーンズ&ノーブルという本屋さんに行って衝撃的だったのが、ソファーがあるんですね。今でこそ当たり前ですが、本屋でゆっくり本を読んで、それで買う。日本では立ち読みしてると「立ち読みしないで」って言われるイメージだったんですが、本ってちゃんとソファーに座って読んで、納得して買うんだという、それを展開したのがバーンズ&ノーブルだったと思います。それと同じことが、映像にも起こってるんじゃないかな、と。
そういう意味ではBlu-rayを映画館に同時に置くっていうのはどういうリスクを持ってるかというと、つまんない映画だとまったく売れなくなるわけですね。しかもそれが「つまんなかった」ってネットに書かれると、2週間後のBlu-rayも売れなくなる。ウインドが短くなればなるほど、作り手がお客さんの欲しい物を作らなくちゃいけなくなってくる。
サンライズの作品で「コードギアス 反逆のルルーシュ」というのがありますが、当初原作はそこまで知名度の高い作品ではなかった。それをどう料理していくかというのは、会社の大小とはあまり関係がないし、それ以上にサンライズというブランドが作品に対して負に働いてはいけないと思っています。サンライズだから映画を見るなんてことは無いんですね。「ソーシャルネットワーク」だから見に行くんであって、ソニーピクチャーズの映画だから見に行くんじゃないですよね。そういうことを会社って誤解することがあって、「ウチのブランドだから見るだろう」とか、それよりはタイトルをどう大切にしていくのかということが重要だと思いますね。
Q:
オリジナルで今回のようなウインド戦略を展開する予定はありますか?
宮河:
オリジナルではもっと過激なことをやる予定です。4月から「TIGER&BUNNY(タイガー&バニー)」という番組をやるんですが、キャラクターの背中にロゴを背負わせます、ということで企業広告を募集したところ、非常に多く応募がありました。F1みたいに企業ロゴをキャラに背負わせるんですね。「今日の犯人はどこどこの提供です」みたいな。ウインド戦略とはちょっと違いますが、初めて世に出すものこそ、そういう新しいことをどんどんやっていかないといけないと思いますね。
Q:
ライブに力を入れていく理由はどんなものですか?
宮河:
テレビはテレビで王道だし、非常に重要な物だとは思っていますが、もっともっと限定感が必要になってくるんじゃないかと思ってるんですね。音楽市場を見ても、CDの売上げは落ちてるけどライブの売上げはむしろ伸びてる。それを音楽市場だけでなく映像とくっつけていくことで作品の認知を上げるということですね。もっと言っちゃうと、お祭りをちゃんと作ってあげるのが必要なのかなと。ニコ動なんかもニコ生にシフトしているように、テレビではできないライブ感を出したい。そういう意味ではバンダイナムコライブクリエイティブは限定感を出していくための会社ですね。
Q:
ガンダムのウインド戦略というのは、従来のウインド期間をすべてすっとばして自在に作ったらかなりうまくいったという話ですが、かつて実写の「DEATH NOTE」のほうでは業界からかなりのバッシングがあったようです。ガンダムUCでは業界からの声はどうなんでしょうか?
宮河:
皮肉でもなんでもないんですが、実写映画とアニメとでは予算規模もかなり違っているので、DEATH NOTEほど社会的な影響はなくって、規模としてもわりと小さいところで目立たずにやってるんで、そこまでの圧力みたいなのはないですね。映画関係の人に僕が「こんなことやりたいんだ」っていうと「勘弁してくださいよ」っていうのはありますが、業界からの圧力みたいなものまではないです。
Q:
このウインド手法を他の会社が真似することもあるかと思いますが。
宮河:
手法というよりは、お客さんのことをどう考えるかだけだと思ってるんです。1800円払って映画を見る前に500円くらいで面白かったら映画に行こうとか、そういうのはすごくユーザーフレンドリーだし、それをいろんな会社がやることで、アニメってすごく親切じゃないか、ユーザーのことを分かってるよね、って思ってもらえるようにすれば業界全体で上がっていけるんじゃないかな。どしどし今までの社界のあり方を壊しながら、お客さんのことを考えてもらえればいいなと思っています。
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