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ゾンビへの愛あふれる「デッドライジング2:CASE WEST」開発者にカプコンのゲームがどうして世界中のユーザーを夢中にさせることができるのか聞いてきました


「怖くないゾンビゲー」として独自の路線で人気を獲得した「デッドライジング2」のプロデューサーに、ゲーム開発の裏話やゾンビへのあふれる愛についてインタビューしてきました。

「デッドライジング2」は、世界総計出荷本数が200万本を突破。世界的に確固たる支持を集めるカプコンの人気タイトルですが、1作目は日本人チームのみで開発、2作目は海外の開発会社に委託して開発し、いずれも日本のみならず海外からの支持を得て成功を収めています。ほかにも「ストリートファイターIV」など、特に海外での人気が高いゲームをリリースしているカプコンですが、海外市場のニーズをとらえる秘密はどこにあるのでしょうか。

というわけで、カプコン「デッドライジング2」開発者インタビューは以下から。CAPCOM:デッドライジング 2 公式サイト
http://www.capcom.co.jp/deadrising/2/

◆目次
・デッドライジングってどんなゲーム?
・なぜ海外の会社で開発するのか
・「ゲームエンジン」ってどんなもの?
・カプコンの厳格な品質管理と海外展開の関係
・デッドライジング2の魅力:ブッ飛んだコンボ武器
・デッドライジング2の魅力:限りなく自由なプレイスタイル
・海外を意識したプロモーションの展開
・やっぱりゾンビが好き
・ゾンビを自動生成するプログラム
・「CASE WEST」発売:「生え際が後退してきた」フランク・ウェスト
・「CASE WEST」をプロデューサーと一緒にプレイ

今回のインタビュー会場、お台場にあるゲッチャ・コミュニケーションズ株式会社のあるお台場「The SOHO」。


映画の撮影に使われそうな、独特の形をした建物です。


今回のインタビューには、「デッドライジング2」のプロデューサー大原晋作さんに加え、ゲーム情報番組「ゲッチャ」レギュラーの菊地亜佐美さんと倉岡生夏さんが応援に駆けつけてくれました。


株式会社カプコン プロデューサー 大原晋作さん。


ゲーム情報番組「ゲッチャ」レギュラー 菊地亜佐美さん。かなりのゲーマーで「デッドライジング2」もオンラインで海外プレイヤーと協力プレイを楽しんでいるそうです。


ゲーム情報番組「ゲッチャ」レギュラー 倉岡生夏さん。デッドライジングにはまるで触れたことがない超初心者。


◆デッドライジングってどんなゲーム?

GIGAZINE(以下G):
まずはデッドライジングをまったく知らない人のために、簡単にゲームの紹介をお願いします。

大原晋也プロデューサー(以下大原):
デッドライジング2というゲームは、オジサンが主人公で、ある事件に巻き込まれ、娘と一緒にゾンビがたくさんいる街に閉じ込められてしまいます。ゲーム内での72時間という制限時間で、その間にどうやってそこから脱出するか、というゲームです。非常に自由度が高いゲームで、その辺にはゾンビがうじゃうじゃいるんですが、倒してもいいし倒さなくてもいい。

菊地亜佐美(以下菊地):
ゾンビ多すぎですよね。最初見たときびっくりしました(笑)

ゾンビに襲われる主人公のチャック・グリーン。デッドライジング2では、一度に大量のゾンビが出現し、倒しても次から次へと無限にわき出て襲いかかってくる。


大原:
そう、大量にゾンビがいるので、倒さなくてもいいんだけど、ある程度倒さないと進むのが大変。カプコンから発売されている代表的なゾンビの出るゲームにバイオハザードがありますが、あれは敵が強めでサバイバルしてゆくイメージ。デッドライジングのゾンビなら素手でも倒せる。大勢いると恐怖を感じるけど、基本的には恐れずガンガン行こう、という感じです。コメディ映画をプレイしているような感じですね。

菊地:
服装を変えられるのが楽しいですね。ショッピングエリアとか、その辺に服とかが置いてあって、着替えられるんですよ。ゾンビが後ろにいるのに、「あ、これいいんじゃない?」って着替えちゃうとか(笑)


大原:
自分の操作する主人公の靴を変えたり、帽子をかぶったり、カツラもあるしサングラスもあるし、女装させることもできる。そういう本筋とは関係がないことが周りにちりばめられていて、人によっていろんなプレイができるのが、デッドライジングの面白いところでもあります。

菊地:
自分のキャラクターに着せた格好がオンラインでも反映されるから、「面白い格好して友達を笑わせてやろう!」と思って、いろいろ試しました。

大原:
ありがとうございます(笑)


G:
最初にデッドライジングを作ろうというきっかけはどんなものだったんでしょうか?

大原:
前作の「デッドライジング」では、当時のプロデューサーがすごくゾンビが好きで、「もっと気軽に遊べるゾンビゲーを作ろうよ!」ということで作ったのがデッドライジングですね。

G:
当初はどんなユーザー層を想定していたんですか?

大原:
初代デッドライジングが発売されたのはもう5年前になるんですが、そのころは「箱庭アクション」と呼ばれるジャンルのゲームでした。英語だと「Sand Box」と言われています。とある場所にポンと置かれて、目的はあるけれど、目的地への行程はプレイヤーの好きなようにできるという、海外で人気が出始めていたジャンルですね。

G:
最初から海外ユーザーを視野に入れていたわけですね。

大原:
そうですね。日本人が作った海外でもウケるゲーム」というのを作りましょうというのがコンセプトでした。そういう意味ではうまくいきましたね。


G:
カプコンにはすでにゾンビゲームの超ビッグタイトル「バイオハザード」シリーズがある中で、新たにゾンビゲーを作るにあたって、バイオハザードと差別化した部分はどんなところでしょうか。

大原:
バイオハザードはA地点からB地点に行くためにはすごく考えなくちゃいけないんですね。ゾンビは強いし、弾も限りがあるから節約しなくちゃいけない。デッドライジングはそうじゃないんです。ゾンビは恐怖の対象じゃなくって、おもちゃみたいな存在。

車イスにゾンビを乗せて、ガラス張りのショーケースにガシャーンとぶつけたり、ゾンビもいちいちそれにリアクションをしてくれたりして、面白おかしく楽しめる。バイオが「恐」のゲームなのに対して、デッドラは「楽」というイメージで作りました。


◆なぜ海外の会社で開発するのか

G:
デッドライジング2は海外のスタジオでの開発となっていますが、海外の開発会社に委託した理由はどんなものだったんでしょうか。

大原:
1作目が海外のユーザーにも「これ本当に日本人だけで作ったの?」という感じで、違和感なくうまく受け入れてもらえたんですが、開発する側からするとまだ満足できていない部分があったんですね。それで、次回作は海外のチームが作ったらもっとブッ飛んだアイデアが出てくるんじゃないかってことで、海外で作ることになったんです。

海外でやったから良いゲームができるってわけではないんですが、ひとつの試みとして、海外のチームと信頼関係を築いて一緒にクオリティの高いゲームを作るというのはやってみたいことでもありました。

G:
海外のチームと連携するとなると、当然言語の壁が発生するわけですが、どのように対応されたのですか?

大原:
言葉に関しては、通訳を向こうに置いてもらっていました。コミュニケーションはかなり緊密に取っていて、テレビ会議は一週間に一回必ずやっていましたし、日本のスタッフが向こうに行ったり、向こうのスタッフに来てもらったり、何度も打ち合わせを重ねました。


G:
海外の制作会社とうまくやっていけている大手ゲーム会社というのは珍しい感じがします。海外のチームと協力してゲームを開発する上で、成功するための秘訣のようなものがあるのでしょうか?

大原:
上からじゃなく、対等の立場でお互い話せないと、いいものはできてこないですね。「これだけお金払ってるんだから、これだけのものを上げてくれよ」っていう、いわゆる外注、下請け的な態度で接していてはいけない。第一に相手を信頼することです。できるかわからないけど、まずは信じようよ、と。

期待していたものができてこなかったり、裏切られたりっていうのは当然あります。ただその時に「ここは使えない」というのではなく、まずその相手とうまくやることが大事なんだという姿勢でやることですね。それはひとつのステップであって、お互い乗り越えていかなくちゃいけない。それが相手を信頼するってことだと思います。


G:
「デッドライジング」と「デッドライジング2」をプレイしてみて驚いたのは、日本人を中心に開発された前作から、続編は海外のスタジオとの共同開発なのに、その続編は「急に別のゲームになった」という感じがまったくしないということでした。海外のチームと作品の方向性やテイストを共有するのは大変なことだと思いますが、どんな方策をとっているのでしょうか。

大原:
デッドライジング2を海外のスタジオで作る上で、一番避けたかったのは「カプコンらしさを失ってしまうこと」だったんです。そこは海外のチームにも理解してもらって、納得してもらった上で作り始めました。ただ、「カプコンの味ってなに?」っていうのは、言葉にするのはすごく難しい。なので、デッドライジング2を作る上では、初代デッドライジングをかなりやりこんでもらって、研究してもらいました。

その上で「ここはなんでこういう仕様にしたのか?」というような質問にひとつひとつ答えていきました。例えば「なんで武器がすぐ壊れちゃうんだ? もっと頑丈にしてもいいんじゃないか?」ということ。これについてもちゃんと理由があって、いろんな武器を使ってもらいたいからなんですよ。

武器を使ったらすぐ壊れる。だからその辺にある武器を使う。アイテムを持てる数にも限界があって、どれを拾ってどれを捨てるか考えなくちゃいけない。そういうプレイスタイルを作りたかったから、そうしているんですよ、という風に答えていくわけですね。なんでこうなっているのか、必ず理由があるわけです。そうやってカプコンのロジックを理解してもらうというプロセスを踏みました。

菊地:
なるほど、確かに武器がすぐ壊れちゃうから、近くに落ちてる武器でなんとかしなくちゃ!ってなるんですよね。武器が壊れなかったら、強い武器とかお気に入りの武器ばっかり使っちゃうけど、デッドラはせっかく武器がいっぱいあるんだから、いろんな武器を使ったほうが楽しいですよね。


G:
海外のスタジオを使うというのは、コスト面の理由からじゃないかという憶測もあるのですが、そういった側面もあるんでしょうか?

大原:
北米やヨーロッパのスタジオでの共同開発の場合、日本でやるよりコストを抑えされるということはないと思います。例えば「デザインとコンセプトが決まっている武器のプログラムだけを作ってもらいましょう」ということで、海外の専門会社にそこだけ作ってもらうというような場合であれば安くなるかもしれませんが、そうすると品質のコントロールが大変になってきます。

今回「海外のスタジオでやる」と決まったところで特に注意した点として、1つのスタジオに絞ってすべて彼らに作ってもらったというところがあります。それがとても重要なところで、「全部自分たちが作ってるんだ」という意識がないと、その作品に対する愛情も出てこない。あんまり分業化してしまうと、ひとりひとりの関わり方が減っていってしまいます。「誇りをもって作ってほしい」ということで、1つのスタジオで全工程を担当してもらいました。


最終的には当初の予定よりも予算面やスケジュールの調整に苦労しましたが、結果的にはいいものができたと思っています。日本の会社と組むような、言語の壁、文化の壁が無い中でやった場合でもうまくいかないことがたくさんあります。そういう意味で、海外の会社と一緒にやることに抵抗はあんまり感じていません。

ただ一番重要なのはコミュニケーションの部分や信頼関係を築くということだったりするので、そこにはすごく時間を費やしました。その段階で、期待したものが上がってこなかったり、時間がすごくかかったりするっていうことに関しては、僕はストレスを感じていなかったですね。


◆「ゲームエンジン」ってどんなもの?

G:
「MT Framework」など、カプコンはエンジンの開発に非常に力を入れているイメージがありますが、開発側から見て、ゲームエンジンを自社開発することについてどう思われますか?

大原:
ゲームのエンジンって車のエンジンと一緒で、ゲームを走らせるものなんですね。車にたとえると、小型のスポーツカーが欲しいユーザーがいます。その一方でミニバンタイプのファミリーカーが欲しいというユーザーがいます。オフロードを走れる4駆の車が欲しいというユーザーもいます。そうした時、ひとつ汎用性の高いエンジンがあると全部の車に載せられますよね。ゲームの開発も同じで、汎用性のあるエンジンを作れると、効率がよくなるんですね。

共通するエンジンが無いと、各ゲームに専用のエンジンを作るか、他社のエンジンを借りなくちゃいけない。そうするとあんまり効率がよくないし、自分たちのイメージ通りにいかないかもしれない。そういうことで、カプコンでは「MT Framework」というエンジンを独自に持っています。ただデッドライジング2のエンジンは「MT Framework」ではないですね。開発会社の独自エンジンでやっています。

デッドライジングの場合は「いっぱいゾンビを出したい!」「箱庭ゲームを作りたい!」という目的がまずあって、今回は海外の会社がこうした目的に合うエンジンを持っていたんです。今回の開発会社の選定の、ひとつの決め手でもあります。

G:
いろんなユーザーのニーズに効率よく応えていくために、カプコンとしては「MT Framework」を持っている。ただし、作りたいゲームの形によっては、そこに縛られることはない、ということですね。

大原:
そうですね。


◆カプコンの厳格な品質管理と海外展開の関係

G:
カプコンには300人からのメンバーを擁する巨大な品質管理部門を持っていますが、海外展開をにらんだデッドラインジングの場合、日本での品質管理と違う部分があったのでしょうか。

大原:
ユーザーが遊んでいて、不満が出ないある一定の基準というのがあります。それがカプコンの基準っていうのはかなり高いんですね。カプコンのゲームならバグが極めて少なくて快適にプレイできるし、難易度も適度に設定されていて、迷うことなくプレイできる。そういう信頼感がブランドの価値になっていくんだと思います。ただ、そういう要求の基準が海外のレベルは日本ほど高くない。

例えば、ハンバーガーは世界中で売られていますけど、たぶん日本のものが一番きれいな形で出てきます。アメリカに行くと、けっこうヘンテコな形のものもあったりしますが、彼らとしてはそこは味が一緒ならあまり気にならない、むしろファーストフードだから早く食べたいみたいな感覚があるようです。ゲームにしてもそれは同じで、デッドライジング2の場合はユーザーに大きな不満が出ない範囲を充分に検討したうえで、あえてラフさを残したところはあります。

バグのチェックや修正も、ユーザーからの「早く欲しい、早くプレイしたい」という気持ちや意見を受け止めて、例えば主人公の腕が壁にちょっとめり込んじゃったりしても、そんなのはあんまり気にしない……いや、直してますよ?(笑) でもまあ例えば、そういう部分をある程度大目に見ることで、早くみなさんにお届けしましょうという調整もしています。

品質管理っていうのはすごく大事ですよね。例えばデパートでバッグを買ったら、1日で穴が開くなんてことはまずない。仮にあったとしても、すぐに新しいものと交換してもらえる。そういう信頼感が、ブランドの価値になっていくんだと思います。カプコンでもそこは同じですよね。そうした意識を持ちつつ、各地域のニーズに合わせていくのも同時に必要だと思っています。

デッドライジングの場合は海外の品質管理チームで最終的なチェックを行いました。日本のほうで「こういう基準でチェックしてください」という内容を作って、チェックを海外のチームにやってもらうという形です。いろいろ大変なこともありましたが、結果的にはうまくやれたんじゃないかなと思います。


◆デッドライジング2の魅力:ブッ飛んだコンボ武器

G:
デッドライジングの面白さのひとつとして、武器やアイテムの多さがありますが、なにより武器それぞれに独自のコンボが設定されていて、コンボを決めると派手なアニメーションを見ることができるという点があると思います。大原プロデューサーのオススメの武器やコンボはありますか?

大原:
実はコンボ武器っていうのは、開発当初の段階ではメインの要素じゃなくって、もっと小さな、ちょっとしたオマケ的なものになる予定だったんです。それが開発のある段階で、ゲーム全体としてのまとまりをつけていくためにコンボ武器を主軸に据えていこうという話になって、今の形になったんですね。

武器を自分で組み合わせて作れるんですが、作ったら必ず良い武器っていうのも面白くないので、たまには変化球で、ゾンビを倒すにはあんまり役に立たないけど、見た目が面白いものっていうのを入れています。

例えばちょっとアホなもので言うと、ラジコンヘリっていうアイテムがあって、ラジコンのヘリコプターを飛ばせるんですが、それを飛ばすとピヨピヨって音が鳴って、音に反応してゾンビが集まってくる。普通に使う場合は、そうして集めたところに爆弾を投げて一気にゾンビを倒したりするんですが、「このラジコンにナイフくっつけたら、ゾンビ死ぬよね」っていうアイデアが出たんですね。こう、ラジコンヘリが飛んでるところにゾンビが寄ってきて、ブシャって刃が刺さる。その絵がすごいシュールで面白かったんで、ラジコンヘリに鉈(なた)を組み合わせた「ヘリブレード」って武器を作りました。

全部OKにしたわけじゃないですけど、けっこうそういうアホなアイデアもたくさん出てきて、そのビジュアルが面白いからOKっていうのもたくさん入ってます(笑)

ヘリブレード(ラジコンヘリ+鉈)。音でゾンビをおびき寄せ、プロペラについた刃で切り刻む。


菊地:
オンラインで海外の人とプレイしてた時、「Hey! これ乗りなよ!」とか言ってに車イスを持ってきてくれて、それに乗ったら車イスからマシンガンが出るんですよ。車イスに乗りながら銃を乱射して「何コレ超スゴイじゃん!」みたいな画期的なアイテムでした(笑)

あと、バケツとドリルを組み合わせて、それをゾンビにかぶせるとグリグリってドリルが勝手に攻撃してくれる。そうしてる内に、ほかの武器で周りのゾンビを攻撃するっていうのをやってましたね。


車イスマシンガン(電気イス+傭兵用アサルトライフル or マシンガン)。すさまじい攻撃力を持つ乗り物。これを作るためにはまず電気イス(車イス+バッテリー)を作る必要がある。


ドリルバケツ(バケツ+電気ドリル)。ゾンビにかぶせるとドリルが自動で頭を削る恐ろしい武器。


大原:
女性は手際がいいですよね(笑)

そういうバカな組み合わせっていうのは、日本人だとなかなかアイデアとして出てこないんですね。例えば大きなクマのぬいぐるみがあるんですが、これにマシンガンを持たせるっていう武器もあります。普通持てないじゃないですか。でも持たせて、そのぬいぐるみをポンと置くと、セントリー(哨兵)みたいな役割で、近くに来たゾンビをどんどん倒してくれる。そういうのはバイオハザードじゃできないですよね。でも、デッドライジングのアホな世界の中では正当化されるんですね。ありえないけど、アリみたいな。

フリーダムベア(L.M.G.+クマロボット)。ボス戦だろうがチャックがスロットを打っていようがおかまいなしに勝手に敵を撃ってくれるスゴイやつ。ちょっと触られただけで転んでしまうのが弱点。


◆デッドライジング2の魅力:限りなく自由なプレイスタイル

菊地:
メインのストーリーが進んでいる最中に、生存者から「助けてください!」みたいなイベントが入ることがあるんですけど、それは助けてもいいし、無視してストーリーを進めてもいいんですよね。オンラインでCO-OP(協力プレイ)をしてると、その人の性格が分かります。メインストーリーを進めるんだっていう人もいるし、いや助けたいっていう人もいる。いろんな人のプレイスタイルがあって、協力プレイも一緒にやる人によって全然変わってくるのが面白いですね。

大原:
主人公のチャックは2つの目的を持ってスタートするんですね。まず、デッドライジング2で起こるアウトブレイク(集団感染)を引き起こした犯人じゃないかと疑われていて、その嫌疑を晴らすために真相を暴かなきゃいけない。もうひとつは、娘がいるんですが、その娘がゾンビに嚙まれてしまったために、ゾンビ化を抑制する薬を24時間以内に一回ずつ投与しなくちゃいけない。

自分のための目的と、娘を救うための目的があって、周りにいる生存者たちも助けたいんですが、まず娘が大事。コメディタッチなんですが、そういうリアリティも持たせています。

菊地:
私は最初間違えて娘を助けられなかったんですよ……。人を助けるとかじゃなくて、まずはレベルを上げたい派なんで、時間制限を気にしないでゾンビを倒しまくっていたら、娘がゾンビ化しちゃって。なんというか「ああ、こうゆう演出もあるんだ」って驚きました。普通、ほかのゲームだとそういう場合、いくら放っておいても結局は助かったりするじゃないですか。それから時間配分とか、ルートとかを考えるようになって、さらに楽しみ方が広がりましたね。


大原:
ゲームオーバーになっても、レベルはそのままで最初からやり直せるのもポイントですね。最初はどこに何があるのか、どんな人が生き残っているのかも分からないので、ほとんど助けられなかったりするんですが、何度もやり直して、どこにどんなアイテムがあるのかを把握していくことで、プレイスタイルが広がっていく。

G:
Twitterでも「デッドライジング2、何週目終わったよ!」というつぶやきがあったり、本当に何度もプレイできるゲームなんだなって感じがしますね。そういう意味でもすごく自由度の高いゲームですが、ニコニコ動画などでも「エプロンをつけてほかのサバイバーに料理を振る舞う動画」なんていうプレイ動画があったりしますが、そういうものについて、開発者の側からはどう思われますか?

大原:
僕もたまに見ますけども、それこそ本当に「ありがとうございます」って感じですね。ゲームをクリアすることだけが目的じゃなくて、自由に楽しんでもらえるっていうのがこのゲームの醍醐味でもあるんで、内輪で盛り上がってもらうのもいいし、「こんな面白い動画ができたよ、みんな見て!」っていうのもアリだと思ってます。そういう風に遊べるように、コスチュームを変えたらムービーでもそのままの状態で出てくるようにしています。

菊地:
相方のコスチュームもそのままで出てくるのがいいですよね。協力プレイで、メインのホストのところに遊びに行っても、自分のコスチュームが自分でアレンジした状態で相手に見えるっていう。

大原:
そうですね、そういうところにもこだわって作り込んでます。


◆海外を意識したプロモーションの展開

G:
ちょっとゲームの内容と離れるかもしれないですが、現在公式ページではオリジナルアニメが公開されていますが、これはどういった経緯で制作されたんでしょうか?

大原:
デッドライジングっていうものを、間口を広くみんなに知ってもらおうってことで、動画をオフィシャルで作りたいっていうことがあって、そう考えたときに海外のユーザーと日本のユーザー、両方をターゲットにするとアニメっていうのが一番優秀だろうってことになったんですね。そんな中で「装甲騎兵ボトムズ」の塩山紀生監督がたまたまデッドライジングという題材に興味を持ってくれたので、ぜひということになったんですね。

デッドライジング自体の世界観がだいぶ自由で、これっていう決まり事がないので、アニメーションのほうも塩山監督には好きなものをやってもらおうってことで、作ってもらったら、戦国時代でデッドライジングっていう変わったものができたんですね。「なぜサムライで?」っていうことで話題にもなったんで、話題作りとしてアニメを選んだということですね。

G:
プロモーションも海外ユーザーを意識したものになっているんですね。

大原:
開発だけじゃなく、デッドライジングのプロジェクト自体がそうなっているんです。

今回デッドライジングのプロモーションで、「tape it or die」というサイトを立ち上げたんですね。「テープを使わないと死にますよ」っていう名前の意味なんですが、クチコミで広がるようなサイトを作りましょうということで、欧州と北米ではそういう展開をしています。

刺さるコンテンツというのは地域によって差があるので、日本は日本で独自に展開しつつ、日本で使えるコンテンツがあればシェアしましょう、日本で作ったコンテンツで彼らが使えるものがあればそれをシェアしましょう、というので3地域、ヨーロッパとアメリカと日本で、サイトの見え方はだいぶ違うんですが、同じコンセプトのサイトを作りました。

今までの、デッドライジング以外のタイトルでは、日本が主体になって、日本で作ったコンテンツを海外で使っていたんですが、今回はそれぞれの地域のチームで考えてもらって、日本からは提案してもらったものに意見を出したりして、お互い使えるものはシェアしたりする体勢を作っています。


◆やっぱりゾンビが好き

G:
日本では俳優の高嶋政伸さんがデッドライジングをプレイしている動画が公開されていますが、これはどんな経緯で作られたのでしょうか?

大原:
高嶋政伸さんご自身がゾンビやホラーもの大好きということで、「デッドライジング2」にもとても興味を示していただいて、それならばぜひ! ということでお願いしました。撮影現場でもとても熱心にプレイされていたのが印象的でしたね。

G:
高嶋政伸さんはジョージ・A・ロメロ監督の「ゾンビ」の大ファンということですが、大原プロデューサーもゾンビ映画が好きだったりするんでしょうか?

大原:
そうですね、嫌いじゃないです。

菊地:
そこは普通に大好きって言っておきましょうよ(笑)

大原:
大好きです(笑)


G:
オススメのゾンビ映画はありますか?

大原:
そうですね……。デッドライジングのゾンビは走らないんですが、最近のゾンビ映画では走るんですよね。ゾンビ好きの人からすると、これは許せなかったりすると思うんですが、走るゾンビ映画の中で唯一好きな映画が「28日後...」ですね。あれはちょっと好きです。

G:
初めてゾンビを走らせたとも言われる映画ですね。デッドライジングでもゾンビは走らないし、弱いゾンビにこだわりがあるのかなと思っていたので、ちょっと予想しなかった意見です。

大原:
走るゾンビが好きっていう人は、ゾンビ好きの中にはあまりいないと思うんですが、「28日後...」は低予算で作られたのに良くできていると思います。ロンドンに誰もいなくなっている状況とか。CGの処理で地道に一人一人消していったらしいですけど(笑) あの映画の誰もいない状況だから、ゾンビが走るのも良かったのかもしれないですね。


G:
ゾンビ映画を見ていて「こんなシーンを使ってみたい」とか、「こんなシチュエーションやってみたい」というのはありますか?

大原:
デッドライジングの中にもけっこう入っていますが、かなりやり尽くしてしまった感じがしますね、お決まりのエレベーターもやっちゃったし……(笑)よくゾンビ映画である「仲間だと思っていた人間が、自分が助かるために仲間を見捨てる」みたいなパターンもやっちゃったし。これからは自分で作っていかなきゃいけないですね。難しいです。もう宇宙に持っていかなきゃダメかもしれないですね(笑)

G:
「ゾンビゲー」という言い方がされたりしますが、ユーザーとしてゾンビ好きの市場っていうのはあるんでしょうか?

大原:
ありますね。確実にあります。ヨーロッパ、特にイギリスはゾンビが好きですね。あとドイツ人も好きです。向こうでは毎年、ゾンビの格好をして街に繰り出してマーチをしたりする「ゾンビジャック」とかっていうイベントがあったりして、みんな気合いを入れてメイクしたりするので、ゾンビ自体が話題にのぼることが多いんですね。

G:
ゲームを作る上ではそういうゾンビ好きの人たちを意識して作る部分があるんでしょうか。

大原:
まあ、ゾンビ好きの人にとってのゾンビは、やっぱり「走らない」ですよね。ただゲームに関してはちょっと別と考えてるのか、「Left 4 Dead」なんかもゾンビは走りますが受け入れられてる感じがしますね。ゲームとして成り立っていれば許せるのかもしれません。映画は違うみたいですね。映画では許せないけど、ゲームならアリ、という部分があるのかもしれません。


◆ゾンビを自動生成するプログラム

G:
デッドライジングのゾンビを作っていく上で、こだわった部分というのはどんなところですか?

大原:
デッドライジングを作る上では、なるべく「一般の人がゾンビになったんだな」って思わせるような、服装だとか体型だとかにこだわりました。ちょっと食べ過ぎだなって感じのゾンビもいれば、ヲタクっぽい格好をしたゾンビもいます。舞台もラスベガスなんで、短パンはいて観光に来ましたって感じのゾンビもいます。

菊地:
おじいちゃんのゾンビとかもいるんですか?

大原:
年齢層はなるべく広く取っていて、子供は倫理的に出せないんですが、20代から50代くらいまでの幅はあります。なるべくいろんなパターンのゾンビを作りたかったので、プログラムを組んでゾンビを自動生成するようになっています。

G:
「ゾンビを自動生成するプログラム」ですか。

大原:
ええ。ある一定の組み合わせがあって、そこからランダムに何千体ってゾンビを一度に出現させてるんですね。たまに隣に同じ格好をしたゾンビがいることがあるんですが、まあそこはご愛嬌(あいきょう)ということで、大目に見てください(笑)


◆「CASE WEST」発売:「生え際が後退してきた」フランク・ウェスト

G:
追加シナリオで「CASE WEST」が発売されたということですが、今回の見どころはどんなところでしょうか?

大原:
初代デッドライジングの主人公であるフランク・ウェストが登場するってとこですね。2が出たときにも、ユーザーさんから「なんでフランクじゃないんだ!」って声が寄せられたりしてたんですけど、「CASE WEST」でフランクが出ました。

フランクは特徴のあるキャラクターで、けっこう人気のある主人公だったんですが、2ではフランクでは語れないストーリーを出したかったので、あえて違う主人公を持ってきたんですね。それがここにきて奇跡的にふたりが出会うという、ありえない感じのストーリーになっています。

このふたりのコンビがけっこうデコボコで、掛け合いなんかが意外と面白いんですよ。性格も違うし、目的も違うんですが、協力しないとお互いの目的が達成できないので協力するんですが、チャック節だったりフランク節だったりが炸裂するので、そこはぜひ見てもらいたいなと思います。

あとは、2ではサブ的な要素になっていたカメラもしっかり出てくるんで、初代からのユーザーさんで「カメラが使いたかった」って人にも楽しんでもらえると思います。

ちなみに「CASE WEST」では、オンラインで誰かが遊んでいるゲームにゲストとして入れば、フランクを自分で操作することができます。基本的にホスト側のユーザーが操作するのはチャックなのですが、どうしてもフランクが使いたいという人は、オンラインの協力プレイをやってみてください。フレンドと「今日はオレ、フランクやらせてくれない?」みたいに相談してみてください(笑) もちろん1人でやる場合もついてきてくれて、助けてくれます。けっこう頼もしい存在ですよ。

あと、初代からだいぶ時間がたっている設定なので、フランクの髪もだいぶ後退してきてたりとか、歳月の移り変わりも表現してます。他のタイトルだと、こういうことはなかなかできないんじゃないでしょうか(笑)

菊地:
確かに難しいでしょうね(笑)

G:
最後の質問になりますが、これからもデッドライジングの続編は続いていくのでしょうか?

大原:
続けたいですね。続編を作るのに十分なノウハウもスタッフも揃っています。デッドライジングは個人的にも思い入れのあるタイトルだし、もっと髪が薄くなったフランクも見たいですしね(笑)

G:
ありがとうございました。引き続き、大原プロデューサーと菊地さん、倉岡さんには、実際に「CASE WEST」をプレイしていただきたいと思います。


◆「CASE WEST」をプロデューサーと一緒にプレイ

まずは大原プロデューサーと菊地さんがプレイ。


オープニングムービー。画面をふたつ並べて、チャック視点(左:大原)とフランク視点(右:菊地)でプレイ。


チャックはイケメンという菊地さんの言葉に首をかしげる大原プロデューサー。


オープニングムービーに見入る3人を襲う突然の衝撃。


大原プロデューサーがスナイパーライフルで援護……のはずが、絶妙のタイミングで菊地さんの後頭部にヘッドショット。


だんだん前のめりに。


ここでプレイ交代。倉岡さんに操作方法を教える大原プロデューサー。


交代した途端に菊地さんを銃撃する倉岡さん。ふらつきながらもゾンビの攻撃を回避するも、閃光弾を受けてパニックに。


車を手に入れご満悦の倉岡さん。


武器を持った敵に襲われさっそく倉岡さんがピンチに。


強力な敵の攻撃を切り抜けるべく大原プロデューサーに再び交代。


菊地さんは念願のドリルバケツ作成。


今度は菊地さんがピンチ。


ゾンビに倒されてしまった菊地さん。復活させるには大原プロデューサーが回復アイテムを持ってくるしかないが、手元にはない。


制限時間までに回復アイテムを入手して戻らないと、フランク(菊地)が死んでしまう!


大原プロデューサーは無事に回復アイテムをゲットして菊地さんを救えるのか!?


今回のプレイはここまで。お疲れ様でした。

取材が終わったころには既にとっぷりと日が暮れていました。すごく幻想的なマンションです。


世界で通用するゲームを作るために必要なことというのは、相手を信頼して仕事をするということだと大原プロデューサーは言います。日本人同士ですら難しいコミュニケーションですが、海外のチームと本当の信頼関係を築くことができたなら、海外ユーザーのニーズをとらえることができるのも、むしろ自然なことなのかもしれません。

撮影協力「the SOHO」

CAPCOM:デッドライジング 2 公式サイト
http://www.capcom.co.jp/deadrising/2/

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