インタビュー

「2ちゃんねる」の譲渡について、今後の裁判などに与える影響を顧問弁護士に尋ねてみました


新年早々、2ちゃんねるがひろゆき(西村博之)からシンガポールの会社「PACKET MONSTER INC.」に譲渡完了されたわけですが、この件についていくつか質問をGIGAZINE編集部の顧問弁護士に尋ねてみました。

今後、2ちゃんねるに何かを書かれて管理側に対して裁判を起こす場合、どのような手順を踏むことになるのか?適用される法律はどの国のものになるのか?逮捕されるリスクはどうなるのか?

そのあたりの詳細は以下から。
■質問1:今後、2ちゃんねるに何かを書かれて管理側に対して裁判を起こす場合、どのような手順を踏むことになるのか?
今までだと管理人である西村博之氏の住所に訴状を送付していましたが、今後は「PACKET MONSTER INC.」でなければダメということになるのか、あるいは実質的に西村博之氏が代表であることに変わりはないので、やはり西村博之氏の住所宛でよいのかどうか。

回答:
まず、管理者側に対して裁判を起こす場合(=名誉毀損等の不法行為による損害賠償もしくは、謝罪広告等の民事裁判を想定している場合)、通常は運営主体が外国法人である「PACKET MONSTER INC.」ですから、同法人に対して(即ち同法人を被告として)訴訟提起しなければならないと思われます。

この場合、日本の裁判所に訴訟提起できるのかどうかという点ですが(本来の普通裁判籍は被告の住所地ですから)、これは可能でしょう。


訴訟法第4条5項からしても日本に裁判管轄はあります。

そして、具体的な訴状の送達場所としては、民事訴訟法第4条5項により、上記外国法人の「日本における主たる事務所又は営業所」ということになります。

もし、日本国内に事務所、営業所がない場合は、「日本における代表者または主たる業務担当者の住所」ということになります。

従って、西村博之氏が、この「日本における代表者または主たる業務担当者」に該当すると言い得れば、同人の住所を被告の住所地として訴状を送達することが可能でしょう。

ただ、上記は、あくまでも被告は、「PACKET MONSTER INC.」という法人ということになるのですが、もし、不法行為の実行行為者が西村博之氏という個人だという主張で訴訟の理論構成をするならば、上記法人とともに、あるいは西村博之氏個人のみを被告として、不法行為による損害賠償請求として、日本人である西村博之氏個人の住所地へ訴状を送達することもできます。

■質問2:適用される法律について
現在は日本の法律が適用されているわけですが、運営主体が形式上はシンガポールに存在することになっているため、日本の法律は適用されなくなり、シンガポールの法律が適用されるのでしょうか?それとも、日本の法律もシンガポールの法律も、いずれも適用されるということなのでしょうか?

回答:
不法行為地が日本(裁判上、行為がどこで行われたかという点とは別に、日本国内で、損害が発生したら、その損害発生地も「不法行為地」とされています)であるので、シンガポールの法律のみならず、日本法も適用されることになります。

■質問3:逮捕されるリスクについて
2ちゃんねるはサーバがアメリカに、そして運営主体(最終責任者)がシンガポールの法人に形式上はなるわけですが、これによって、2ちゃんねるに書き込まれた内容の責任について、警察や検察などが西村博之氏を逮捕する理由はなくなったということでしょうか?

回答:
これは、前記質問1、質問2よりもっと論点(事実認定上の問題も含めて)の多い、難しい問題ですが、『サーバがアメリカで、運営主体がシンガポールであっても、実質的に西村博之氏が実行行為の主体である』との事実が確定できるとすれば、仮に、犯罪行為の行われた場所が外国だとしても、日本国民の国外犯罪として、刑法第3条12号(名誉毀損)の適用によって西村博之氏を日本国内で処罰することができますし、そもそも名誉毀損(並びにこれに関連する幇助等)が日本国内で発生しているという事実構成が可能ならば、行為者が外国人であっても日本人の西村博之氏であっても、日本国内で処罰することが可能です。

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in メモ,   インタビュー, Posted by darkhorse

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