著作権の非親告罪化やP2Pによる共有の違法化は誰が言い始めたのか?


著作権侵害について権利者以外の警察などによって逮捕して取り締まることができるようにするための「著作権の非親告罪化」や、P2Pソフトによるファイル共有は「私的複製ではない」として違法化しようという流れのそもそもの発端は何なのかを調べたところ、意外なところに行き着きました。

最近はかなり有名になりつつあるので知っている人も多いと思いますが、アメリカ政府が毎年日本政府に「年次改革要望書」というものを出しています。要するに「ここに書いてあることはちゃんとやっておけよ」というアメリカからの命令・指導・要望が書いてあるわけです。法科大学院の設置や郵政民営化、最近では三角合併などはこの年次改革要望書に書いてあったために実行しただけに過ぎません。ホワイトカラーエグゼンプションや労働者派遣法などについても書いてあります。

そしてこの年次改革要望書の最新版に著作権の非親告罪化やP2Pによる共有の違法化などについても書いてあるわけです。つまり元凶はアメリカからの圧力とそれに従わざるを得ない日本政府の弱さにあったわけです。

で、この年次改革要望書は別に秘密文書ではなく、ネット経由で誰でもダウンロードして読むことができます。どう読んでも内政干渉レベルではないか?と思えるほどに細かく書いてあります。

詳細は以下の通り。
年次改革要望書の最新版は以下の在日米国大使館のホームページ内にあり、PDFファイルになっています。ちゃんと和訳版があるのでとりあえずそれを読んでみましょう。

日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書=PDF (2006年12月5日)

著作権の非親告罪化については、以下の要望文面が根拠になっていると思われます。

20ページ目

II-A-3. 職権の付与 起訴する際に必要な権利保有者の同意要件を廃止し、警察や検察側が主導して著作権侵害事件を捜査・起訴することが可能となるよう、より広範な権限を警察や検察に付与する

P2Pソフトによるファイル共有行為を違法化するという要望も同じく以下の文面が根拠ではないかと思われます。

20ページ目

II-D. 私的利用に関する例外 私的利用の例外範囲を限定し、ピア・ツー・ピアのファイル共有といった家庭内利用の範囲を超えることを示唆する行為が、権利者の許諾なしには認められないことを明らかにする。

著作権の非親告罪化やP2Pソフトによる共有は私的利用の例外であるという要望は既に先日、早速こんな形で現れています。

「知財推進計画2007」正式決定、ファイル交換ソフトからの複製禁止など

この年次改革要望書が実行された最近の例では、こんなものも年次改革要望書に沿って行われています。

映画館での盗撮、懲役最高10年か罰金1000万円に--盗撮防止法成立 - CNET Japan

年次改革要望書の20ページ目を見るとこう書いてあります。

II-A-5. 映画の海賊版 海賊版DVD製造に利用される盗撮版の主要な供給源を断ち切るために、映画館内における撮影機器の使用を取り締まる効果的な盗撮禁止法を制定する。

ああ、こういう形でアメリカ政府の要望を実現していくわけですね……。今まで日本政府が自分で主導して行っていると思っていた数々の法案審議等々の大部分が実はアメリカ政府からの内政干渉じゃないのかと思えるような形での圧力によって実行されているとは……日本がアメリカの属国と言われるのも無理はないような気がします。

ちなみに、どうしてここまで年次改革要望書に書いてある内容が実行されまくるのかというカラクリはこんな感じらしい。

深夜のNews: 『年次改革要望書』というものがある

『年次改革要望書』とは、日本の各産業分野に対してアメリカ政府が機構改革や規制緩和などの要求事項を通達(「提出」でも、「要望」でもなく「通達」が正しい)する文章である。ただの外交文章ではない。ここでアメリカ政府から要求されたことは、日本の各省庁の各担当部門に割り振りられ実行されていく。そして、この要求が実行されたかどうか、日米の担当官が定期的に会合を持ち、チェックする仕組みになっているという。さらに、この文章を毎年、日本政府に通達するアメリカの通商代表部は、毎年アメリカ議会から勤務評定を受ける。つまり、通商代表部としては、日本政府が実行しないと自分たちの評価が下がるので、いかなる圧力をかけても日本政府に実行を求めなくてはならない。

なお、年次改革要望書が出されるよりもかなり前からある程度「こういう内容で次は行くから用意しておけよ」みたいな感じである程度は知ることができるらしいので、一見すると日本で著作権の非親告罪化についての話が出始めて、それから年次改革要望書が出されて強力に後押しし、実行される……というように見えているわけです。実際にはアメリカ政府からの要望が要望書以前から出されているという実態も見逃せません。

で、一応この年次改革要望書は日本からアメリカにも出してはいるのですが、その内容はアメリカが日本に突きつけている内容と比べるとちょっとどころかかなり劣っているような感じ。特にインターネット関連についてはアメリカ政府がこれだけ要望してきているのだから、日本からも山ほど要望すべきなのではないでしょうか。あるいは、日本からアメリカへの年次改革要望書の提出についての案を広く日本国民からパブリックコメントという形でもいいので大々的にテレビでCMでも放送しまくってあらゆる手段で募集してみてはどうでしょう?日本に住む国民の総意に基づいて提出すれば、かなりの説得力と圧力を持たせることができるはず。

日本からの要望書は以下の外務省の公式サイトからダウンロードできます。

外務省: 「日米規制改革及び競争政策イニシアティブ」の下の6年目の対話に向けた要望の交換について

アメリカ政府がこの年次改革要望書で要望していることは要するにアメリカ国内の企業にとって利益となるような動きを政府レベルで後押しして実現させようというもの。アメリカはかつてのロビー活動に代表されるように企業が政治をうまく利用するのが慣例となっており、経済のグローバル化を日本もともに推し進めようじゃないかと言っているものの、その実態はアメリカ企業が日本国内で経済活動をしやすくするための便宜を図る、あるいはその逆で日本企業が経済活動を行いにくくするというものがほとんどです。

つまり、著作権の非親告罪化やP2Pによる共有の違法化を覆そうとする場合、アメリカ政府が納得するだけの猛烈な反発や理由が必要になると言うわけです。日本人しか理解できないような理屈ではアメリカ政府は納得しないでしょう……。このあたりのことまでよく考えて行動する必要性がありそうです。

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in コラム, Posted by darkhorse